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霊色の兄妹   作者: 樹木
色と霊と性欲と
1/9

変人兄妹の生活1-①

 春の夜風が雲一つ無い夜空を歩いている静かな夜に8畳1Kのアパートの半開きのままのカーテンから月明かりが差し込んでいた。月明かりのおかげで窓際だけ薄く見え、そこ以外はボンヤリと何かテーブルのような物と小さな棚が視認出来る。棚の中身までは薄暗いせいで何が置いているのかわからない。この薄暗さだと部屋の主か勝手を知っている者以外何がどこに置いてるかわからず手探りで動くか、すぐに明かりを付ける程の暗さだ。だが部屋の主は電気をつける気が無いようで力無くボンヤリとテーブルの前に座っていた。そしてテーブルの上に置いてあった工作用の小さめのカッターを持つと、刃を2cm程出しそのまま薄く光るカッターの刃はゆっくりと青年の右腕の皮膚を10センチ程切り裂いた。切り終えると表面が裂け皮膚の内側に隠されている暗いピンク色の肉から遅れて暗いピンク色から赤に色を変えていく。赤色は肉を隠すように広がり続けて肉が見えなくなっても広がる事は止めず赤く塗りつぶしていくと、赤色は遂に皮膚と同じ高さまで上り詰めてくるがまだ止まる気配はない。そしてついに皮膚を追い越し尚も溢れ続ける赤色は重力に逆らうことなく切り裂いた傷口から指先の方へ落ちていった。腕には赤色が不規則に指先の方へに伝っていく感触はあったようだが傷口から痛みはもう感じていない様で痛がる素振りが見えない。というよりももうこの痛みに慣れているせいですでに痛いとは感じない。なんて事無いただ自傷しただけでカッターで腕を切って血が出た、ただそれだけの事としか思っていない。僕にとって自傷は他の人がストレス発散に歌ったり体を動かすのと同じ事でそれをやっただけだ。それに何も考えないで流れ落ちる赤色を見つめると落ち着くし僕の中にある何かが一緒に出てきてくれる感覚が好きだ。だから無意識に切っていたりする。

「あ、また切っちゃった。でも腕の表面だし言い訳はいくらでも作れるからいいか。」

 自傷しているのに他人事に聞こえるかもしれないがその通りで僕にとっては自分の事は他人事にも等しい。そう思えるようになったのはいつからだろうか、気がついたらそうなっていたのだからよくわからないしそんな事はどうでもいいから考えるだけ意味が無い。僕は人の心や感情がよくわからないが、僕が見えているモノ感じているモノが他人と一緒なのかも知らない。よく見える物や感じ方は十人十色と言い個性だと理由を付けて人を否定しないようにしている。実際に十人十色なのは合っていると思うけど結局は多数が見ている同色が正解で、正しいと認められるが他の色はハズレのように扱われ色物のように見られる羽目になる。言葉や響きだけよくして核心の部分に触れない理解していない。ただ正しいと思うこと思いやりがあることどんな人でも理解して受け入れてあげること、そんなお節介とも言える他人を利用した自己満足に酔っているだけだ。その自己満足に付き合わされる側の色を見ていない、いいや見ようともしていない。なぜなら見る意味が無いからだ。自分の色が正解で正しいと信じている人が他の色を正解と思えるのか?思えないだろうし思う気も無いだろう。中には理解しようとこちらの色に触れてくるがもともと持っている色に混ざって完璧にこちらの色になるのは無理だ。本やネットで表面だけ読んで少しわかったのと同じくらいの理解だと思う。そんなことを考えていたら自傷した右腕から赤色が思いの外溢れ出てきた。そこまで強く切ったつもりは無かったが場所が悪かったのかもしれない。

「うわ…結構垂れてきた。はぁ…他の物に血が付く前に拭き取ろう。」

 僕が赤色を見つめている間溢れるのが止まらず予想以上に垂れてきたのでティッシュで赤色の軌跡を辿るように拭いていった。1枚じゃ足りず白色がすぐに赤色に変わってしまったため傷口には3枚ほど四つ折りにした物を重ね傷口を上から反対の手で押しつけ圧迫止血をした。その間にテーブルの上に置いてある筈の絆創膏を探すが暗い部屋の中、明かりは窓からの月明かり位しかなくテーブルに置いてあるはずの絆創膏を探すのに一苦労だった。それでも大体の位置を覚えていたため幸いにも圧迫止血してるティッシュが赤色に染まる前に見つける事が出来た。絆創膏を開き傷口に覆い被せ上から押してしっかりついてるか確認するとズレなく真ん中の所から赤く染み出る位だったため何も問題は無かった。自傷のケガの手当を終わらせ一息ついたのと同じくらいにインターホンが鳴った。今は20時を過ぎ郵便や宅急便など来るかもしれないが僕はそんなのた頼むことはないためこの時間に来る人など一人しか思い浮かばなかった。そいつを相手にするのも面倒だしこの時間に来るということは何かしら面倒事がありそうなので居留守をしようとしたが、無情にも玄関のドアが開く音が部屋に響き勝手に入ってきた人物が我が物顔で自分の部屋にやってきた。

「相変わらず暗い部屋ね、電気つけていい?」

「眩しいからキライなんだ。できたらこのままがいい。」

「相変わらずだね…、その腕の絆創膏また切ったんだ。」

「よく気付いたね、うん気付いたら切ってたんだ。場所的に言い訳出来るから問題ないけど。」

「私は兄さんが自傷するのが問題だと思うけどね。」

「安心するしストレス解消にもなる最高の行為だよ。」

「はぁ…何を言っても無駄ね。兄さんどうせ絆創膏だけで対象してるんでしょ。消毒とかするから腕見せて。」

「面倒だしいいだろう。」

「いいから見せて!」

 そう言うと部屋に入ってきた彼女は僕の右腕の自傷を治療するため慣れた手つきでこの薄暗い中救急箱を棚から持ってくると右手を掴んで離さなかった。彼女は何度か部屋に来ているためどこに何があるか全部把握しているようですんなり暗闇の中でも救急箱を持ってきていた。もしかしたら僕よりも詳しいかもしれない、それ位彼女は僕の部屋へ来ている証拠だ。切ってしまった右腕の治療中ヒマだから今来た彼女について軽く説明をしていこうと思う。彼女は「桜庭 未夕」、僕「桜庭 透」の2つ下の高校2年生の妹でありスゴい頻度で僕のアパートにやってくる。最近は髪を肩にかかる程度まで伸ばしているようでオシャレなんだろうが、未夕は悪戯に僕が好きな髪型や黒髪をしてくる。僕としては嬉しいし、未夕は身内贔屓無しにもかわいいと思う。身長も高2の割に145cmと小柄で中学生に間違われることも多いし、顔も一見易しそうで柔らかな表情をしているから男女問わず守ってあげたくなるような小動物の可愛さをもっている。それで僕好みの髪型や黒髪でいる。僕は妹に興奮はしないかもしれないから何とも言えない状態になってしまうのを未夕は楽しんでいる。今度本当に襲ってみたらどういう表情をするか気になるしやってみよう。あと未夕はよく僕のアパートに連絡無しでやってくることが多い、前になんで来るのか尋ねたら本人は生存確認という名目で来ているようだ。僕は動物園の動物じゃないと反論しようとしたが家族には色々と迷惑をかけているから妹の想いを無下に出来なかった。それに恐らく本当の目的は僕の自傷痕の手当てや自傷してないかの確認だろうと思っている。未夕は僕の自傷痕の治療をしてくれたりしてくれているため簡単な医療面の知識と実技が上がっている。だけどこれは僕のせいで身についてしまったいらないスキルで、傍から見たら医術が出来ると聞くといいように聞こえるかもしれないがこれに関して僕はいい顔をすることが出来ない。妹に兄の自傷痕を治させるなんておかしな風景が僕ら兄妹では当たり前の風景になっているなんてどう見てもオカシイ。そんな風に考えていたら自傷痕の治療も終わりそうで未夕が最後にガーゼを当て、テープで止めると気分的な問題だが少し痛みは和らいだ。まあ痛みは初めから感じてなどいなかったけど。未夕は治療を終わらせ救急箱をためらいなくテーブルの上へ置いた。

「いい加減電気つけよう。暗いし陰湿な感じでイヤなんだけど。」

「明るいから嫌だ、月明かりで十分だろう。」

「この根暗球根類。」

「なんて事を言うんだ。それで何でこんな時間に来たんだよ。」

「それはお兄ちゃんに会えなくて寂しかったk…」

「さっさと本題に入れ。」

「最後まで聞けよ、妹がかわいく寂しそうにしてんだぞ聞くだろフツー。ああーもうヤダヤダ、あの家に居たくなかったの。だから友人の家に泊まってくるって言ってきたの。」

「家…か、そうだったのかごめんな僕のせいで未夕にまで迷惑をかけて。」

 未夕は何も言わないまま電気を付けるのを諦め月明かりがさす部屋で僕の隣に座った。未夕の目線はこの部屋のどこを見ているのかわからないが、未夕が夜に部屋にくる時は大抵何かイヤなことがあった時か寂しいことがあったときだ。僕にはそれをすぐに確認する方法はあるが僕はそんなことしたくなかったしするつもりも無い。本人が話してくれるまで待っているつもりだったのだが未夕はそんな僕の考えを読んでいたようで、僕がしたくなかった、やりたくない事を笑顔で平気で聞いてきた。

「ねえ兄さん、私は今『何色』に見える?」

「…そんなことを聞きにきたなら帰れ。僕は『これ』がキライなんだ。」

「私のこと前は青空みたいな青空色って言ったよね。青空ってさ雲に隠れたり大雨大雪雷暴風全部の気象を受け止める、人に例えたら喜怒哀楽を全部受け入れてくれる色。私はそう思ってる。」

 未夕は突然何の迷いも恥じらいもなく自分の『色』を話し始めた。正直僕はこの話は嫌いだが未夕の様子も気になったため仕方なく聞いた。未夕は自分の『色』をすでに受け入れており更に受け止めて自分なりの解釈をしていた。未夕は僕の現状の一番の理解者であり、僕自身それを嫌っているのがわかっているはずだ。それなのにその話をしてくるというのはきっと未夕が精神的に辛い状態か、今の自分がどう変わってしまっているのか不安なのかもしれない。まさかと思うが学校で未夕が酷いことをされてしまっているのか、それとも悪い男につきまとわれているのか、母と父と上手くいかなくなったのか、頭はドンドン悪い方へ流されていく。隣に座っている未夕は答えを聞くためか真っ直ぐと僕の顔を見て逃がさないと言いたげなようだ。未夕が何故僕にこんな事を聞き僕がずっといい顔をしないか…それはこの『僕の目』のせいだ。

 僕の目には昔から人からでている色が見える。これだけ聞くならオーラとか雰囲気がある人とかが出す様なやつとか霊感などと一緒にされてしまう事が多い。僕自身もまだ完全にこの目を理解していないから説明するのも難しいが、現状言えることはとにかく人の周り輪郭や心臓部から色が見えるのだ。見えるだけなら別に問題は無いのだが、その色に意味があるようでその人の本質は心臓部の色、今の状態や気分のようなものの色は輪郭からモヤっと影のようなものがぼやける様に広がって見える。だから簡単に嘘なのか本当なのかどういう気持ちで相手をしているのかイヤでも全部わかってしまう。プライバシーも友人関係も恋人とのステップアップも女性社会や学生ならではのノリや馬鹿な行動をも全部色が教えてくれるおかげで考えるのが簡単ですぐに何があったか予想が立てられる。僕は自身のこの目に対して眼科に行ったりもするが幻覚やそういう年頃だろうとまともに相手にされなかったので、他にも同じ話を聞いたことが無いため大学は色に関する授業がある大学を受験した。正直将来を見据えての入学じゃないため卒業したらどうするかは決めていない。それにもしかそたらいずれ同じ様な人と合うかもしれないのと、僕の研究にもなると思った。高校から家族と離れ一人暮らしをしていたため大学に入学してからも一人暮らしをしている。だが未夕は自称カウンセリングといいほぼ毎日のようにくる。正直さっき言った未夕の言葉だが、本音でいえばどんな答えや色をも全部受け入れる未夕もどこかおかしいのかもしれない。全部受け入れるなぞそれは白のキャンパスにいたずらにカラーボールをぶつけグチャグチャな色になるのと一緒だと考えてる。もしそうなったら未夕はもう僕と関わるのを止めるか一人落ち着ける場所を探し長期休暇が必要なほど深刻な状態になる。

「色々考えてるみたいだけどそれを踏まえて私の色は何色?」

「はぁ…心臓部の色は変わってないキレイな青空色。ただ、グレー…雲かな?が大量に胸の周りを蹲っている。あと…」

「あと…何?それに兄さんの目細かいところまで見えるんだね…。なんか兄さんのそれパワーアップしてない?」

「今までは色と発光するか位も違いだったけど最近その人の色ともう一色潜んでいるのが見えたり見えなかったりする。日常生活の支障はないから良いかなって。」

「ふ~ん、それであと…に続く言葉が聞きたいわ。」

 僕は未夕を見て胸の辺りに別の色が隠れているのを見つけ告げるべきか悩んだが、ここで止めたら未夕は言うまで迫ってくるのは目に見えてわかっているためなるべく未夕を傷つけない言葉を選び伝えることにした。

「…後悔するなよ。未夕の青色の周りにグレーが集まって…どんどん雨雲みたいになってる。それに雨が降りそう。」

「……半信半疑なところがあったけどやっぱり兄さんのその『色の目』は本物みたいね。」

「最悪だよこんなの…使い道を間違ったら人を自分のいいような色に変えるよう誘導してその人の心を壊す。そんな事も出来るんだから。」

 未夕に伝えたが未夕は自分のモヤモヤの原因は知っていて僕の目を試しただけのようだった。妹を想って傷つけないようにと慎重にしたが思いっ切りドストレートで言葉を言ってよかった後悔した。未夕は僕の話を聞き終わると座ったまま背を仰け反らせて天井を仰いだ。そんなことすると胸が強調されると想ったがそんなに大きくないため問題は無かった。

「はぁぁ~~兄は色を見れ、妹は霊感強く霊をみるか……。最悪だね。」

「常々平和に生きたいと思う。」

 さらっと言っていたが未夕は元々霊感が強すぎて霊を認知できるのだ。悪霊や怨念を除霊する事はないしそういうのは他でしているようだ。未夕は常に霊と生きてる人間を見て生活しているのだ。人と霊は見分けがつき辛く電車やデパートなどでこれは霊だなと直感で感じる霊がいると基本見ないふりをするが、急に道を尋ねられたり明らかに生気を感じない人からお話をかけられると霊だとわかったとたん全力で逃げることにしている。

「ところでどうして僕にあんな質問をしたんだ?」

「……まあちょっと自分の色を気になったの。」

「嘘だな。心臓部の青空色が揺らいでる。嘘をついたり騙すときは心臓部の色が揺らぐんだよ。それで本当に何があった?」

「くっ…ウソが通用しないとか最悪…。あんまりいい話じゃないよ。あたし、学校でいじめにあってんの。」

 思っていた以上の重たい話に思わずきかなかった事にできないか考えたが、言わせたのは自分のため未夕のペースで話してくれるのを待っていた。もしかして今日少しテンション高いときがあったのはこれを隠すためか?

「実はね私みんなカッコいいっていってる先輩から告白されたの。んで興味ないから振ったのよ。そしたらその先輩のファンの子に目付られて…って感じ。」

「うん。未夕が悪い要素がないと思うけど。なんで目をつけられたんだ?」

「嫉妬よ嫉妬、長く見てたのにポッと出のよくわかんない美少女が来たんだものそりゃ妬むよ。」

「自分で美少女って言えるのはすごいが、僕に出来ることは未夕をいじめた犯人とその先輩を殺すか廃人にさせて解決だね。未夕に『あんな色』をさせたんだ。相手にはそれ以上の『色』を見せないとね。それで今度合うのはいつ?少し遠いなら明日か明後日にでもそのいじめた子を殺しに行くよ。」

「落ち着けバカ兄、殺すだけで問題を解決しようとすんな逆に悪化するわ。まあこっちも手は打ってるから大丈夫。ただやっぱりいじめってさ構えてても精神的に結構来るね…。」

「そうか…、暗い話はこれぐらいにして未夕風呂に入ってきな、僕はもうすんだからゆっくりして休もう。」

 あまり話したくないような話題だったのですぐに切り上げることにした。僕の案も悪くいと思ったが未夕は納得してくれなかった。事案の元を消す、そうすれば問題は無くなる簡単な事だと思うが今回は却下だった。この暗く重い空気をリフレッシュするため未夕にお風呂をすすめると待ってたといわんばかりに鞄から水色の下着と猫さん柄の寝間着を取り出し、風呂場へ向かう時に部屋を出る直前僕の顔を見て悪戯に笑いだした。

「覗かないでね兄さん♪」

「冷水ぶっかけるぞ。覗くんならもうちょっと胸がある子を覗く。」

「はあぁ!?言っとくけど私着痩せするタイプなの!Bはあるんだからね!この身長でBよ!小ぶりで綺麗で美し胸よ!」

「わかったから入ってきな。僕は巨乳よりかは貧乳の方が好きだから良いと思うよ。」

「ほう私は貧乳以下の無乳だってが?成長するために揉んでって頼んだのに揉んでくれなかった兄さんが悪い!」

「妹の胸を揉むとかイヤじゃないけど…ちょっとな…。それに未夕揉めるほどの大きさ無いだろう。」

 昔未夕は胸が小さいのを気にして僕に何回も大きくなるよう揉めと強要してきた時がある。揉んで大きくなるのは迷信だと断っても揉めよと一点張りで仕方なく触れる程度に揉んだ事はある。まあ結果は察しの通り効果は無く今はBカップで落ち着いてるようだ。

「よし今日既成事実作って兄さんの人生ぶっ壊してやる。」

「それだけは止めろ!本当に洒落にならない!っていうか未夕はいいのか?!」

「私は別に、兄さんの子を孕んでもイヤじゃないよ。まあ他の人の場合はもっと慎重に考えるけどね。」

「他人より近親相姦にもっと慎重に考えてくれ。」

 未夕からこれ以上無い脅しをされてしまった。正直未夕の身長や胸の大きさ腰の細さ艶のあるセミロングの黒髪と童顔のロリっ子の見た目は僕好みのであり兄妹でなかったら彼女にしたいほどだ。そんな子に迫られたら断る自信が無い、というより断る理由が無い受け入れよう。なんて頭が混乱していると未夕は悪戯が成功した子供の様に笑い軽やかにお風呂場へ行ってしまった。何だか未夕に弄ばれた気分で腑に落ちない、覗かないで一緒に入ってやろうか。一緒に入れなくは無い、僕の体は痩せすぎて骨と皮だけで未夕より少し大きい小柄で貧弱な体だからこのアパートの小さいシャワールームなら入れる。まあそんなことをしたらもう後には戻れないからしない。

「未夕がイジメか…。イジメた奴らを黒系の色に染めてやろうかな。」

 未夕が風呂に入っている間イジメについて考えていた。僕の目は色が見える、それは感情の変化やその人の本質がみえることができるという意味だ。なら相手にとって何をしたら一番精神を抉れるか色の変化でわかる。僕は常に相手の弱点を見えていると言ってもいい、ただ色々と試しながら色の変化を見ながらになるからあまり要領は良くない。ここまではあくまで色を『見る』だけの話だ。未夕にも言ってないが僕は条件を満たせば相手の本質の色を変える事ができる。いや、正確に言えば変えるじゃない僕の色に染められる。だが僕はこれはしたくない、これは相手の価値観や倫理性など人生で積み上げた物を全て壊すのだ。それはその人が死ぬのと一緒だ。だからこそ僕はしたくないのだ。

「ダメだ…人の精神、人間性を壊すのはマズいしな…。まあ未夕も手は打ってあるって言ってたし大丈夫かな?でももしもの準備だけはしとくか。」

 未夕は手を打ってあると言っていたがいざという時何出来ないのはもう二度とイヤだから僕は準備だけすることにした。



「はあぁ~シャワーきもちぃ…。それに兄さんの匂いもするし幸せ~。」

 私は兄さんのアパートにある小さい浴室でシャワーだけ浴びていた。お風呂に浸かろうと思ったけど今から溜めるのも面倒臭いし、本当は既に実家でお風呂には入っていた。それなのになんでシャワーを浴びてるかって、それは兄さんの匂いと髪を堪能するためよ。だって兄さんに会える機会も少ないし本当は毎日会いたいし同棲したい。でも親は兄さんのとこへ行こうとすると大抵いい顔をしない。私はそれが一番大っ嫌いだ。高校生になって一人暮らしをすると言い出した時ウソだと思った。何かの聞き間違いかと思ったが兄さんは部屋のことや生活費の話をして計画を前からたてて貯金していたんだ。この時私は兄さんと一緒に入れなくなると悲しみと孤独感と虚無感に支配され笑えなかった。兄さんがいなくなる、それは私にとって半身を亡くすのと同じで生きている心地が一切無い。それなのに母と父は止めずサポートすると笑顔で兄さんの要請に承諾した。笑って腫れ物が無くなるのが嬉しいように、憑きものがとれたと安心してどんどん話を進めていった。途中事務的に何時でも帰ってきていいとか待ってるからとか親らしいことを言っていたが、そんなの心にも思ってない事を知ってる私はそいつらを許せないしクズだと思った。もっと言えば最低のゴミクズの汚物に見えて親に対しての感情は憎しみしか生まれなかった。それから兄さんが一人暮らしを初めて家は少しもの寂しくなったがあいつらにとってはさぞや居心地のいい場所になっただろう。私にとってはあいつらと一緒にいるだけで地獄なのに兄さんの所へ行こうとすると渋い顔をする。きっと実家でも自傷してたり昔から色々としていた兄さんにあまり会って欲しくないんだろう。『普通』の子供になって欲しかったんだと思うが、私から見るその『普通』の子は親にとって都合のいい子供だ。そんなのにはさらさらなる気はない私は親の渋い顔を無視し兄さんのアパートに結構な頻度で来ている。というよりは速く同棲して既成事実を作り上げ一生側にいたい。

「ふうぅ…サッパリする~。あーあ、あいつらどうしようっかな。殺すのが一番手っ取り早いけど…。まあ幽霊さんと相談して驚かすぐらいでいいか。」

 シャワーを浴び終わった未夕はイジメっ子に対する制裁を考えていた。未夕は霊感が強く幽霊とも話ができる。それを使い今回の制裁は幽霊ドッキリでいいやと投げやりだったがそれにきめた。それで止まらなかったら…。

「そうだ裸で出てみようっと。兄さん好みの女の子目指してるし手だしてくれるかも!私は兄さんとスルのいいのに兄さん頭固いから籠絡すんの大変だろうな…。まあそれでも行きますけどね。」

 そう決めると私はバスタオルで水滴が滴る美しい体を拭きワザとバスタオル1枚でギリギリ胸と花園は見えないように隠すと兄さんが待っているリビングへニヒル笑いをしながら戻った。この姿だったら照れながらチラチラと胸や太ももを見て興奮を抑えつつも、側に近付くと女性と意識し男性の部分が反応してくれてそのまま本能のままベッドインをする。そんな事を考えていたが現実は非情で、そんなことが起こる筈無く兄さんは布団を2組み敷いて寝ていた。さらに丁寧に部屋干し用の物干しの仕切りまで用意し私の荷物もキレイに纏められている。

「先手を打たれた…!しかもご丁寧に仕切りまでして…!」

 近親相姦の妄想から一気に現実に戻され賢者タイムに入ってしまった私は兄さんに夜這いを仕掛けるのを諦め水色のパンツとブラを付けパジャマは着るのが面倒だったので下着だけで寝ることにした。

「失敗したか、まあそっちの方が兄さんらしいか。おやすみ兄さん、大好きよ。」

 聞こえているかわからないが寝る前にボソリと呟き私はまぶたを閉じ兄さんと同じように眠りについた。兄さんの匂いを嗅いでいると安心できるから今日はゆっくりいい夢が見れそうだ。…夢の中でなら兄さんと一つになってもいいかも。



 隣から寝息を聞こえるのを確認すると僕は起き上がり仕切りの隙間から本当に未夕が寝ているか確認した。さっき思いっ切り恥ずかしいセリフを言っていたが僕も未夕が好きだから問題ないだろう。口に出すか出さないかの違いだ。僕は口下手だから未夕のように言葉を言ったりはしない。未夕の確認だがしっかり寝ているようで僕は透明の長方形型の薬ケースに入っている薬を3種類1錠ずつ飲み込み、薬ケースと一緒にしまっている天然水を取り出し薬を流し込んだ。薬は咽頭に引っかかる事無く流れるように僕の体に入ってきた。どうして隠れる様に呑んでいるのか入眠剤を3錠飲んだだけだが、入眠剤の後は少し意識が朦朧とするため未夕の不意打ちややらかしを対処できなくなる。これは未夕に主導権を握られ何をされるか怖いため未夕が泊まりに来たらなるべく未夕が寝た後呑むようにしている。

「はあ…未夕の想いは本物だ…。本気で僕を一人の男性として意識している。僕と話しているときの未夕の心臓部の色、まっさらな青から赤みががった夕暮れになっているんだよね。このままだとどっちかが理性崩壊して親近相姦が起ってしまう。」

 僕は薬が回り始めるまで頭の中で未夕との関係をどう接していくか考えたが、未夕はさっきも言ったが僕好みの女の子にしている。ふざけて坊主が好きっていったら未夕は間違いなく坊主にしてくるだろう。そんな兄のためなら何でもしてくれる妹が兄を求めてきて何が問題であろうか。僕はウェルカムだ周りの目や家族からの視線なんて僕の世界に入っていない。未夕が本気で望むのなら僕はそれに答えよう、そして永遠を誓い未夕に纏わり付く厄介な物を全部壊して守る。この目を使えば相手が「人間」ならば用意だ。大事な家族をこれ以上失いたくない、もはや家族と呼べるのは未夕しかいない。その未夕に危害があれば僕はそいつを許さないし生かしておかない、この時ばかりはこの『色の目』には感謝いている。今は追いとくが前にこの目で僕は人を殺している。だがそれは事故として扱われ僕は今のうのうと生きている。あまり昔のことを思い出したくないのか薬が回ってきたようで、僕も…重くなった瞼を閉じ…夢の中へと墜ちていった。



 桜庭兄妹が眠りについたあとはアパートの外に人影がこちらを覗いていた。色の目をもつ兄、霊感の強い妹、とてもおもしろい組み合わせね。妹の方は霊とお話ししたり幽霊と一緒に驚かすぐらいで可愛い使い方ね。でも、悪霊や怨霊は避けて身を守っているみたいで頭も切れて安全策を立てていい具合にバランスをとっているわね。

 それで兄は、人の心臓部の色と輪郭方出る色の2種類見えていると。しかも心臓部の揺らぎで相手の審議を伺える。輪郭からのはその時の気分が色で出る位だから抑えることが出来たら問題は無いでしょう。ただ、心臓部の色の認識能力が上がってるわね。さっき1色でなく2色見れるようになっているって言ってたわね。まあ『見る』だけならこのままでもいいんだけど…。

 もし相手の色を『染める』としたら相手はどうなるか楽しみね。どんな手で染め上げるんだろう?今回の件でそれがみれれば儲けで、もし出なければ面倒だが他の策を作るか…。これから起こる事を予測しながらどちらに転ぶか微笑んでいる女は桜庭兄妹の情報を一方的に集めて何かを企んでいた。今はその二人に何かを期待しながら…。二人が寝ているアパートを外から覗いてどうやったのかわからないが会話まで聞こえていたようだ。貰える分の情報は集まったため興味を失い腰まで長い黒髪を翻し女は夜の住宅街へと消えていった。

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