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人事も尽くしてないのに他人の心が分かるワケがない




「……そんなヤツ。埋めちゃうかも」


 僕は俯いたまま、小太郎の顔を見ることが出来ないままで、そう呟いた。


「う、埋めるのはマズイ! 犯罪は止そう! 悪かった、ごめん! この話、やめよう!」


 僕の言葉に、本当にやりかねない危うさを感じ取ったのか、小太郎が慌てて話を打ち切って謝ってきた。


 ここまで僕が浮き沈みする姿……弱みを見せるとは思わなかったのだろう。


 ……でも、本当にそうだよ。


 僕はまんま小太郎が言ったことをハナにしたんだよな?


『今は同性の友達が欲しいんだ』って、ハナじゃ力になれないことを宣言した上で、都合のいい愚痴だけは聞かせて。


『彼女が出来た!』って浮かれた顔でそれを報告した。


 …………。


 ハナは、一瞬驚いた顔をして、そのあとに……笑ってた。


 ニヤニヤしながら「へー良かったじゃん。今度からテンちゃんにムカついたら彼女に昔の恥ずかしい秘密をチクればいいんだねー」とか意地悪なことを言って僕をからかった。


 …………。


 今、僕の頭に、二つの答えがぐるぐると浮かんでいる。


「アマツくん? ごめんて、怒らないで!」


 僕だったら、間違いなく、彼氏が出来たと言ってきたハナに「誰?」と不機嫌に聞いたあと「本当に付き合うの?」と聞き、最後には「やめときなよ。ハナはアホだし騙されやすいから危ないよ」って言う。


 昔も。


 今でも。


 間違いなく。


「おーい! 帰ってきて!」


 でもあの時のハナは、僕にそんなことは言わなかった。『テンちゃんは自分でも思ってるより子供だし傷つきやすいからやめておけば?』とは言ってこなかった。


 ……事実、僕は子供だったし、その後、実際に傷つけられることになった。僕のトラウマだ。


 ……今では勝手に傷ついただけだ、なんてどうにか強がれるようになったけど、未だに彼女のことを思い出すのは辛い。


 あのときの、あの泣き顔は……僕のしでかしたことの軽率さと罪深さを象徴するように、今も胸に刺さっている。


 まぁ、それは今はいい。


 今僕が考えている二つの可能性。


 僕だったらどうにかケチをつけて止めるであろう、恋人が出来たという報告を、ハナは笑って「良かったじゃん」と流した。


 それは何故だ?


 考えられる可能性は二つ。


 一つ目は……いきなり浮かれた顔で浮ついた報告をする僕の喜びように、水を差すことが出来なかった。そしてその後、傷ついた僕を目の当たりにして、何故止めなかったんだろう、とハナは後悔した。


 コレは結構普通に有り得るだろう。むしろ僕は無意識の内にそうだと思っていた。


 二つ目は……考えたくないけど……ハナは、僕がどこの誰と付き合おうが興味が無かった……のか?


 考えると酷く胸がざわついた。


 だったら、どうしてあのとき──。


「…………」


 今すぐにでもハナと会って、話したくなった。


 僕は分かってるつもりでいただけで、彼女のことなんか何も分かっていないんじゃないか?


 どうして……会う時間が減ったんだっけ?


 あぁ、そうだ。部活だ。


 まだ慣れない環境に疲れているハナに、そんな余裕がないんだ。


 ……僕だったら、そんな疲れているときこそ、ハナの顔が見たくなると思うのだが。


 あぁ……! もう止そう。


 会えば分かる。会って話せば分かる。


 週末の食事会が待ち遠しい。


 早く、ハナに会いたい。





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