その5 反逆の王女と理性崩し
ちょっと言えないような想像までしてしまって軽く混乱する。
「どういう事か説明が欲しいな」
何とか煩悩混乱その他を沈めて私は2人にそう告げる。
「シェラとアミュは王女だが今となっては後ろ盾が無くて、邪魔者扱いされている。だからこの先は精々何処かの王家の国政に影響ないあたりのボンボンと政略結婚させられるか、さもなきゃこのまま学校や研究所にでも入れて飼い殺し状態になるかだ」
「特にシェラは私達のせいで古い貴族からも睨まれている状態なんです。だからおじさんが2人を貰ってやって、幸せにしてください」
「どういう事だ」
再びそう言うのがやっとだ。
何せ貰ってやってというのは、ああいう意味だろう。
煩悩さんが団体で私の脳裏を駆け抜けていく。
「学校の研究課程に入って私とマリエラが最初に研究課題にしたのは、国の政治・経済体制だった。考えられる国の政治・経済体制を提起した上で、様々な面から効率やコスト等を計算して、最適と思われる体制や現在の体制の問題点について考察してみた訳だ」
「その結果ね、今の君主制と議会制の併存体制はそこそこ有効だと判断したんだけれど、絶対世襲の貴族議員が無駄かつ弊害のある要因だという結果になったの。それを実例を挙げてレポート形式にしたら、酷い事になっちゃってね」
なるほど。その話の筋は読めた。
「害虫扱いされた古い貴族が一斉に反発した訳か。一介の学生のレポート相手に」
「一介の学生のレポートと言っても、査読されて訂正を受けた後、王室図書館を含め各地の学校や研究機関に配られるからね。指導した先生やその上司まで槍玉に挙げられて、国家反逆の恐れがあるとまで糾弾されてさ」
「その時に助けてくれたのがシェラなの。貴族どもが勝手に罪を作り上げて私達を投獄しそうな時にね、学会総長を兼任している皇太子を査問会に連れてきてくれてね。正規の判定会を開いて貰った上で、シェラ自ら私達の弁護をしてくれたの」
「それまではシェラ、同じ学年でも物静かで目立たない印象だったけれどさ。あの判定会でもあくまで物静かかつ淡々とだけれど、反発する貴族どもを一歩一歩追い詰めていってね。後ろ盾が無くとも王女だし、皇太子の御前だから貴族どもも無茶できなくてさ。結局私達の研究を全く否定する事無く、これはあくまで研究であり有害思想でも犯罪でも無いと」
なるほど。
「しかしあのシェラがそんな事をしたんだな」
「あの時のシェラ、味方だったけれど正直言って怖かったくらいよ。『それは●●という事でしょうか』と静かな口調ながら貴族どもを押していってさ。『研究をねじ曲げてまで我欲を通したい旧弊』にされそうになった連中が一方的に白旗を振って逃げた。あの場の誰の目にもそう見えたと思う」
「ただそれで旧いけれど力のある貴族どもからもそっぽを向かれちゃってさ。裏では”反逆の王女”なんて呼ばれている始末だ。学校もそれ以来、シェラを腫れ物扱いしている感じだしさ」
そう言えば反逆の王女というフレーズ、王弟からも聞いたな。
そういう背景があった訳だ。
「でも私が貰ってやって、というのは無いな。実際歳の差も結構あるしさ。精々親代わりに引き取って、いい人に出会うまで面倒を見る位だな」
「政略結婚なら三倍程度の歳の差婚も普通にあります」
マリエラがとんでも無い事を言う。
そしてついに結婚という単語が出てしまった。
「それに時間の流れの違いを考慮しても、実は絶対的年齢の差はそこまで無いような気がするな」
ジーナも私の自制心を崩しにかかるような台詞を口にする。
「まあ抵抗があるならお父さんでもいいけれどさ。多分シェラもアミュもおじさんは結婚相手として抵抗無いと思うな」
「アトラスティアなら妻が複数いるのはよくあることだしね」
2人ともこれ以上私の良識を崩すのはやめてくれ!
「まあそんな訳で、シェラとアミュを幸せにしてやって下さい。お願いします」
マリエラのその台詞で2人とももう一度頭を下げる。
「わかった。結婚はともかく、何とか2人とも幸せにするよう善処する」
私はそう言うのがやっとだ。
ただ2人ともシェラ達の事を本気で考えているのはよくわかった。
だから私も出来るだけその意に沿うようにしたいと思う。
実際シェラ達が幸せになって貰いたいのは私も同じだしさ。




