その4 友人勧誘中
「良かった。無事だったか」
「ごめんね。急にいなくなって」
「いいや、何か理由があるんだろう、どうせ」
この黒髪の女の子がジーナちゃんだな。
短い黒髪と言葉遣いがちょっと男の子っぽい。
顔も整っているけれど中性的な感じだ。
「ええ。王室内で現在もめ事が起こっているんです。それで申し訳無いですが、2人に色々お願いしたい事がありまして」
「何でもいいぞ。シェラの言う事なら」
あっさりとジーナちゃんは言う。
「マリエラと違って無理な事とか私欲絡みの事とかは言わないだろうしな」
「ひっどーい。まるで私が強欲みたいじゃない」
これは最初にこの部屋にいた子、マリエラちゃんだ、
「違うのか」
「商人として適切な利益を計算するだけよ」
勿論本気で言っている訳じゃないだろう。
仲がいい3人内でのじゃれ合いといった感じだ。
「確かにシェラだけの頼みなら利益とか手間賃を計算するかもしれないけれどね。アミュの為でもあるんなら特別に無料で聞いてあげる」
「おいおい」
ジーナちゃんがツッコミを入れるところまで、きっといつもの調子なのだろう。
「でも今回はちょっと大変な事です。最短で3日位はかかります。そして内容は、警備兵と魔術師の守っている場所から国王陛下以下9名を救出する事です」
マリエラちゃんはちょっと驚いた感じ。
ジーナちゃんはニヤリという感じの表情だ。
「そんなの、無理だよね」
「でも僕とマリエラがいれば無理じゃない、そうシェラは判断したんだろ」
「でも」
「無理な事はシェラは言わない。違ったかな、マリエラ」
「でも……」
「取り敢えず詳細を聞いてみようじゃないか。たった3日程度なら学校はどうにでもなるしさ。それにシェラにはお互い色々借りもあるだろ」
「でも…………」
「シェラだってその気になれば親衛騎士くらい動かせるだろ。それをわざわざ私達に頼むなんてのはそれなりの理由と作戦があるんだろう。まずは話を聞いてからだ。それに僕の勘だけれど、きっとマリエラにも僕にも危険な分、見返りはあると思う」
「聞いてみる」
おいおいと突っ込みたくなるが、この辺も多分に様式美という奴だろう。
「それでシェラ、取り敢えず話せる範囲の事情と作戦について教えてくれないか。そうしないとシェラの考えの妥当性を検証出来ない。無論結果的に手伝うのが無理だとなっても聞いた事は誰にも言わない。何なら忘却魔法をかけてもいい」
「わかりました」
シェラは頷いて、そして話し始める。
「まず王宮の状況です。現在国王陛下以下王妃殿下、皇太子殿下、他王子王女はアミュと私以外、ある場所に幽閉されています。首謀者は王弟殿下で、どうやらその背後に親アマルテアの一派がいる模様です。
私とアミュは王宮へ呼び出され、魔法陣で移動しようとしたところ、転送事故でミーラクとは別の世界に飛ばされてしまいました。でも向こうの世界で親切な方に出会って助かり、そして今まで以上の魔法も手に入れました。そしてその魔法をマリエラとジーナにも使って貰って、私ともう1人の4人で幽閉中の国王陛下以下を救おうと思っています」
「ちょっと待った! 他の世界だって!」
ジーナちゃんがシェラの方を見る。
「他の世界に行ったのか! それはどんな処だ! 社会体制は! 魔法や技術の進み具合は!」
「それは一度、向こうの世界に行って確かめて貰おうと思っています」
「行けるのか」
「勿論です」
「よしのった!」
あっさりジーナちゃんがそう宣言する。
「ジーナ、随分簡単に話にのるんだね」
「だってアトラスティアでもラステオでもアマルティアでもない、全く別の世界なんだろう。そんなの行かない手はない。それこそ社会構造とか国家体制とか国民意識とか色々調べるべき情報満載だ」
「ジーナ、でもこれはシェラを助けて国王陛下以下を救出する話でしょ」
「他の世界へ行けるなんてのは、相当な高等魔法を使えるという事でもある。それだけの魔法を使えるのなら充分勝算もあるだろう」
ジーナちゃん、興奮しているようでそれなりに冷静でもあるようだ。




