その2 敵を確認しました
走っている限り危険予知魔法は反応しない。
そんな訳でひたすら常磐道を北へと走る。
中郷サービスエリアを通り過ぎたすこし先だった。
「あっ」
シェラが小さく声を立てる。
「どうした」
「大丈夫です」
『このまま走り続けて下さい。敵がわかりました』
『敵って何だ』
『元の世界から私とアミュを追ってきた敵です。でも車の速度に反応出来なかったようです。既に大分後ろになりました』
『追いかけてくる心配は?』
『まずあり得ないと思います。この車の速度に追いつける魔法はおそらくありません。移動魔法でもこの世界を熟知していない以上、使用は困難でしょう』
なるほど。
『私達の捕捉に失敗した以上、一度元の世界に引き上げるでしょう。勝手がわからないこの世界に長居して私を追い続ける可能性は低いと思います。世界を越える魔法移動をする以上、連続で魔法移動をかけて追ってくるのも魔力的に無理だと思います』
『今日はこの先1時間くらい走った処にある街のホテルに泊まるつもりだ。それで大丈夫だと思うか?』
『大丈夫だと思います。念の為この先で一度そう思い浮かべて危険察知魔法を使ってみて下さい』
ならこの先、二つか三つ行ったところのパーキングエリアで一度停まって、そこで危険予知魔法を使ってみればいいだろう。
それに二時間ぶっ続けて走ったからそろそろトイレ休憩も必要だ。
◇◇◇
仙台市内の比較的高級なホテルに宿泊した。
単に駐車場付きでスマホで今日の予約が取れるところが他に無かったのだ。
部屋もツインベッドでそこそこ高級な御部屋。
普段はこんな場所絶対停まらない。
でもシェラとアミュがいるからまあいいか。
それに高級なホテルの方が色々安心だし。
「王城よりも豪華な建物でした」
「まあこの世界、建築関係は進んでいるからさ」
今はシェラと二人で部屋のソファに座っている。
なおアミュはお弁当一式を食べたらベッドの上で寝てしまった。
今日は色々あったので疲れたようだ。
「さて、それでは私とアミュが何故追われているか、何故この世界に来たか、それを最初から説明しましょう」
「もし言いたくない事があれば言わなくていいぞ。これくらいなら私でも何とかなるからさ」
「いえ、そうでなくてもお父さんには色々していただき過ぎなんです。たまたま出会っただけなのに、ご飯を食べさせて貰って、服も買って貰って、こんなに良くして貰っている。本当に申し訳無い位です」
「別に私がそうしたいからそうしているだけだぞ。見た通り、私もこの国も余裕があるからさ」
「それでも何も説明しないでこれ以上色々していただくのは申し訳ありません」
シェラはそう言って頭を下げ、そして話し始める。
「私の出身のアトラスティアは王国で、国王と議会で国政を司っています。現在の国王はアルダシール四世で、私はその第三王女、アミュは第六王女になります。アトラスティアは男女関係無く出生順に王位継承順位が定まるので、私とアミュの王位継承順位は第五、第八位となります」
王女だったか。
「でもその割に質素な色の服装をしていたな」
「王位継承順位が低いのと、母の出身が子爵家とそこまで高くないもので。それに私とアミュは王宮ではなく王立学園の寄宿舎で暮らしていましたから。勿論部屋は王族という事でそこそこ広さはありましたが、生活そのものは他の学生や生徒、研究員と同じ程度です」
なるほどな。
身なりとか教養とか今までの疑問点がこれで解決した。
「ここからは推測になるのですが、おそらく王宮の方で政変かそれに近い事態が起きたのだと思われます。アトラスティアは北方の国アマルティアと仲が悪く、隣国のラステオと同盟して対抗していました。でも議会内に工作等により親アマルティア派が増えていて、最近は議会が紛糾して王権により決定を下す事が多い状況でした。ですので何が起きてもおかしくは無い状況にあったのです」
「それではこの世界に来た理由は?」
「寄宿舎の私の部屋には王宮移動用の魔法陣がありました。あの日私とアミュは久しぶりに王宮に呼び出しを受け、移動するために魔法陣に乗ったのです、ですがそこで何らかの障害が発生しました。おそらく王宮側の出口に当たる移動魔法陣が消されたり書き換えられたりしていたのではないかと思われます。
結果、王宮へ移動することが出来ず、この世界の、あの児童公園の隅に飛ばされてしまった訳です」
「それで追手というのは」
「王宮の方がどうなっているのかわからないので状況は不明です。ですが先程の場所で空間魔法の気配を感じました。更に空間走査魔法で私にとっての敵の存在反応を確認したのです。ですので追手に間違いないと判断しました。
なお走査魔法は現在も継続して使用中です。この付近20km圏内には敵はいないので安心して下さい」




