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元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
第3章 明而陸軍士官時代

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第94話.新設部隊

第94話.新設部隊



その日は唐突に訪れた。

私の仮住まいに、懐かしきあの丸刈りが現れたのだ。


「吾妻じゃないか!達者だったか?」

「ああ、なんとかな。そっちはどうだ、いくらか噂は聞いてるぞ。出世したって」


軽く互いの手のひらを打ち合わせた。大きな彼の手に、遠慮なく手を打ち付ける。乾いた音が短く鳴った。

吾妻勝。北部方面総合学校(ほくそう)の同期の、あの吾妻だ。甘いものに目がなくて、お涙頂戴に弱いあの吾妻だ。暫く合わなかっただけで、大きな懐かしさを感じた。


「変わってないな、丸刈りもそのままだ。まだ学生気分が抜けないのか?」

「ははは、これが良いんだよ。穂高は相変わらずだな」

「それで、なぜお前が?」

「それは……」


言い終わる前に、もう一人部屋に入ってきた。「入るぞ」という声に、聞き覚えがあるその声に直立する。私と吾妻が同時に、入り口の方へばっと敬礼をした。全く同じタイミングで敬礼が揃ったのは、あの学校生活があったからだろう。現れたのは浅間中将であった。


「浅間中将閣下!」

「うん」


どこまでも無理をするお方だ。動き回っては治る負傷も治らぬと言うのに、どこの世界に腹に鉛弾を食らってウロウロする将軍がいるか。


「お身体に障ります、なぜこんな場所へ」

(どくがす)が薄くなって来ているだろう、会戦だ」

「いつですか」

(ルシヤ)の都合もあるからな、戦争は一人ではできん。いつとは言えんが、明日とも明後日とも知らぬ、目前だ。それに穂高君に頼まねばならん事もある」


腰を据えて話を聞く事になった。

阿蘇(あそう)大将率いる軍が正面、及び右翼に展開しており。浅間中将率いる軍が左翼及び、正面部隊の予備隊を担当する計算であるという事である。

机の上に温かい珈琲が三つ、湯気を立てている。


「おおよそ緊迫している事はわかりました。それで私は何を?」

「狙撃隊を結成する」

「狙撃隊?」

「うん、三名ないし四名の選抜した優秀な者たちで一組。それをいくらか作った。穂高君にもその一つとなって動いてもらう」

「はい」


中将が言う狙撃隊とやらの任務はこうだ。

隠密行動によって気づかれぬように敵部隊へ接近、観察する。そして脅威度の高いもの、即ち敵機関銃や高級将校の位置をつぶさに味方へ報告する。また可能であれば長距離からの狙撃により、これを排除する。

我が軍の歩兵に先んじて、これを行うことにより後発の味方突撃の成功率が上がるというものだ。

確かに。上手く事が運べば、敵を錯乱せしめる。もしくは突出させることができるかもしれない。それも限りなく少ない兵数でだ。


「非常に危険な任務だ、君を失いたくはないが……穂高君であれば戦果を上げられるのは見えている。行って貰いたい」

「買いかぶりすぎです中将閣下。しかし、やらせて下さい。この戦、少々無理をしなければ勝ち目は無い」


一つ息を吐くと、中将は小さく呟くように「だろうな」と口にした。


「それでだ。その狙撃銃を使うのは穂高君だとしても、この吾妻を護衛に連れて行ってくれたまえ」

「はい、了解しました。それで吾妻が」

「ああ」


吾妻ならば気心もしれているし、腕が立つというのもわかる。安心して後ろを任せられるだろう。


「吾妻君は優秀だ。射撃も格闘も人より抜けている、体格も良い。敵と接近戦に陥った場合に役に立つだろう」


それに、と続ける。


「彼は君を識者だと知っている一人だ」

「吾妻がですか?」


ぱっと彼の顔を見ると、静かに頷いた。


「ああ。知ったのは最近、中将閣下に伺ってからだがな。驚いたよ」


どうやら彼も浅間中将とはなんらかの繋がりがあったらしい。世間は狭い。


「穂高君が射手。吾妻君が護衛。そうだな後一人、観測する者が要るな。誰かあるか。目がいい者が良い、それにこの辺りの地理を知っている者が」

「そうですね」


そう言いながら珈琲を口に含んだ。

その瞬間、大きな音を立てて盛大に扉が開いた。音に驚きつつも、私と吾妻が同時に立ち上がって、中将の前に出る。

何者だ、話を聞かれていたか?中将がここにいると知っての事か?瞬間的に頭の中でいくつもの疑問が浮かんだ。しかし、それらは一瞬で消えた。


「俺が行くぞ!タカ、俺を連れて行け!」


そこにはウナが居たからだ。


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