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元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
第3章 明而陸軍士官時代

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第90話.襲来

第90話.襲来



その日は騒々しい物音で目覚めた。まだ薄暗い時間であるのにも関わらず、兵らの声と足音がいくつも響いている。

ウナが「どうした?」というような顔をしてこちらを見た。大きな目に、目やにが付いている。


「おい、目糞」


指摘されて服の袖で顔を拭った。手ぬぐいがわりに使うものだから、彼の袖はいつもヨレヨレである。


「なぁタカ、なんだろう?」

「さて、な。しかし良い状況ではなさそうだ。敵かそれとも」


不慮の事態に備えるために軍刀を佩いた。


「敵ってルシヤ人かな?ルシヤ人が俺の里を奪ったんだよな」

「少なくとも黄色の雲をばら撒いたのは奴らだ。ルシヤの軍人だな」


その時、扉が叩かれた。

どういうつもりか、何者かがノックと同時に、許可も取らずに扉を開けた。

その瞬間、見えた人影を部屋に引き込んで、地面に倒した。腕を捻って身動きを取れなくする。同時にウナが扉を閉める。

男はくぐもった悲鳴をあげながら弁明する。


「穂高中尉!私です」


日本語を喋り、明而陸軍の制服を着ているがスパイかもしれない。士官の部屋に許可なく入る者を私は知らないからな。

腕を捻る力は緩めないまま誰何した。


「誰だ」


そう言いつつ、返事を待たずに軍帽を剥いで顔を確認する。この観測所の部隊長、谷川少尉であった。すぐに拘束を解き、真っ直ぐに立たせる。軍帽をかぶせてやったところで謝罪した。


「谷川少尉か、すまんな。大丈夫か?」

「は、はい。いきなり踏み込んで申し訳ありません」


捻った右腕の手首を抑えながらも慌てた風に少尉は口を開いた。


「いや!それどころではないのです、緊急事態です」

「何があった」

「備蓄の食料を獣にやられました。今、それを漁って逃げた熊を見たという者が報告に来たのです。中尉は無事であったようですね」


この通りだ。と言いながら腕を広げてみせる。


「それはいつの話だ」

「つい今しがたです。見つけた者が声をかけると、一にらみした後、立ち上がって逃げたそうです」

「そうか、ならばまだ近くにいるかもしれんな」


そう言いながら小銃の用意をする。一度人間の食い物を知った熊は、味をしめて再び姿を現わす可能性がある。特に普段なら冬眠している季節である、腹が減っているのだろう。


「ルシヤのあの雲に追われて、獣が四方に逃げましたから。その手合いでしょうか」

「どうだろうな。仮にそうであるとしたら、あまり良い気分では無いが」

「中尉は元マタギと聞きました」

「うん」

「我々は素人ですから、指示があれば従います」

「私は追跡するが、ついてこれぬだろうから他の者は来なくて良い。外には歩哨を立たせて警戒はしていた方が良いだろう」

「了解しました」


出発の為に装備をチェックしていると、再び谷川少尉が口を開いた。


雪兎(おおきいの)は使わんのですか」

「あんなもので熊が撃てるかね。毛皮も肉も巻き混んで吹き飛んでしまう」

「肉……って食べるんですか。熊を?」

「とれたらそうするが」

「いえ、そういう習慣が無かったもので。失礼しました」


彼と話をしていると、ドアの近くでぶらぶらしていたウナがおもむろに近づいて来た。


「あいつあんな年で、まだ狩に出たこともないらしい。大丈夫なのか?」


他に聞こえぬ声量でウナが私に耳打ちした。目線は谷川少尉へ向けたまま、憐れんだような目で見ている。


「そんなものさ。行ってくるからお前はここで待っていろ。戸締りだけはしっかりしておけ」

「いや俺も行くぞ」

「羆だろうが、危険だぞ」

「しってる。俺も何度も狩りについてったことがある。つれてけ。この辺りの山はタカより俺の方がくわしい」

「駄目だ」

「いくって」


じっと目を見る。彼の瞳には決意の火があった。子供と思っていたが、一人前の男の目だ。


「死んでも知らんぞ。好きにしろ」

「狩で死ぬならいい。森の神さまが呼んでる証拠だから」



……



探し熊は拍子抜けするほど、簡単に見つかった。そんなに大きくも無い個体だ。

片方の目が開いていないが、怪我でもしているのだろうか。そのおかげかは分からないが、向こうはまだこちらに気がついていないようである。


「わかい雄だ」

「わかるのか」


小銃に弾を込めて、銃口を標的に向ける。


「そりゃわかるよ」


そうかと心の中で返事をしながら、引き金を引いた。


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