表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
【第二部】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

256/258

【第三部】第19話.希望ノ光

明継は拳銃の重みを確かめるように胸元に手を添えた。風の音が渦を巻いて身体を包む。自分だけが違う世界に取り残されたような感覚。


「父上は……父様はきっと生きてる」


明継の言葉を、トリィは黙って聞いた。


「俺は、これは父様に返そうと思う。これはきっと、そのために……」


彼の言葉は空の風に流されて掻き消える。だが、その思いは消えない。敵を追跡中に消えたという父親。その痕跡を追って、上流も下流も、幾度となく捜索が行われた。だが結局のところ何も見つからなかった。敵も、明継の父、穂高進一も共に。


それでも、明継には父は生きていると言う確信があった。あの人が死ぬはずがないのだ。彼は、心の内に決心を固めた。いつかきっと、父を見つけ出すと。しばらくして、ふと明継が頭を上げる。


「それでトリィ、今はどこに向かってるの」


舵を取っているのはトリィだ。飛行艇は規則的な鼓動で、真っ直ぐにある方向へ進んでいた。その軌跡に迷いはない。


「行った事はないんだけど……」


トリィが計器を見ながら応えた。


「何かあったらココを頼れって。ウナさんがそう言っていた場所があるんだ。だからきっと、そこに行けば助けてくれるはず」

「ウナさん……みんな無事かな」

「大丈夫、大丈夫だよ。きっと、なんとかなる」


太陽は西に消えて、空にゆっくりと夜が訪れていく。飛行艇は月明かりを受けて、冷たい風を切り裂いて飛ぶ。二人はしばらく無言で、操縦桿だけが細かに震えている。トリィは冷たい指先でそれをしっかりと握っていた。


地上の木々が小さくなり、やがて潮の匂いが風に混ざりはじめた。まだうっすらとしたものだったが、空気に広がる湿り気は確かに海のものだ。


「海に出るの?」

「うん」


視界の奥、波の向こうに港の灯りがチラチラと光っている。それは夜の海に浮かぶ、小さな希望の光だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ