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元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
【第二部】

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【第三部】第15話.黒イ影

桟橋へと続く細い通路を二人が駆け抜ける。背後では、ウナが敵の注意を引くためか大声をあげているのが聞こえた。恐怖からではない、覚悟の叫び声だ。


「……!」


振り向きそうな明継に、トリィが言った。


「明継、前を向いて!」

「……っくそ!」


気を抜くと立ち止まってしまいそうになる足を気力で動かして二人は走る。恐ろしいものが、胸の奥を掴む。見知った道はもうない、まるで違う景色に変わってしまった。飛び交う銃声と、怒鳴り声。波立つ水面は、立ち上る炎を映してゆらめいている。


「大丈夫!もう少し……!」


トリィはそう言いながら明継の手を引いて、一気に桟橋に飛び出した。視界が開ける。湖面の風が、熱風と瓦礫の匂いを吹き飛ばして彼らの横を抜けていった。係留された飛行艇は昼間と同じ姿を見せている。トリィが明継の方へ視線をやる、その時。


「まって!トリィ!」


明継が力いっぱい彼女の手を引いた、と同時に乾いた破裂音が響いた。木製の桟橋に小さな穴が穿たれて、破片が四方に散った。いつの間にか男が二人、飛行艇のそばに立っていた。ぐっしょりと濡れた黒い服の男達だった。自動式拳銃、その銃口を二人に向けてはいるが、二度目の発砲は無かった。トリィは明継を後ろに隠すように一歩前に出た。


「子供……?」

「おい、こいつが例の……」

「だとしたら、運が向いて来たってことだな」


男達は銃口を二人に向けたまま、いくつか短い言葉を交わす。互いに頷いたかと思うと、そのままゆっくり近づいてきた。


「動くな、そこにいろ」


低く、地底から這い出たような声にトリィは息を呑んだ。背中に感じる明継の腕が微かに震えている。それでも彼女は半歩も引かなかった。心臓が握りつぶされるような恐怖と戦いながら、真っ直ぐに男達を見据える。男達は左右に分かれながら、距離を詰める。


「女だけで良い。ガキは殺すか」


どこまでも冷たい声。明継に銃口が向く。


「……!」


明継の背筋が凍った。ウナから託された拳銃の冷たい重みが胸元で主張する。だが、それを抜き放つ勇気は、まだ彼には無かった。


「待って!殺さないで!」


トリィが庇うように叫ぶ。片方の男が舌打ちをする。


「どけ」


そう言いながら、男は引き金をゆっくり引き絞った。

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