表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
【第二部】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

251/252

【第三部】第14話.受ケ継グ

整備棟の裏手から何かが倒れる音がした。金属が擦れたような、悲鳴にも似た大きな音だ。熱風に乗って誰かが争う声がする。まだ敵の影は見えないが、誰かがすでに反撃を始めたようだ。


「狙いはなんだ……?」


辺りを確認しながら、ウナが呟く。首長の首か、飛行艇か、それとも彼女らか。どちらにせよ、車の影に隠れて亀になっているようでは事態は好転しない。


次の瞬間、彼の鼻先を銃弾が掠めた。火花を散らして車の外装に穴を開ける。明継とトリィの腕を引き、姿勢を変えて着弾した位置から離れた。


「明継、トリィ、走るぞ!」

「は、はい!」


炎の光に照らされて、橙色に塗られた地面を蹴って走る。整備棟に入れるか。そう考えて視線を送ると、その建物の二階部分のガラスが割れて、地面に降り注いできた。鋭い物が周囲に突き刺さる。


「どうやら満員らしいな。トリィ!飛行艇は。すぐに飛べる状態か?」

「はっはっはっ……」


声をかけられた彼女だが、浅い呼吸を繰り返すだけでどうにも返事が上手くできない。真っ青な顔で何かを伝えようとしていると、ウナがその震える肩を掴んだ。


「落ち着け。大丈夫、だろ?」

「はーっはーっ、はい。大丈夫、です」


物陰に転がり込んだ先で、しゃがみ込んでトリィの返事を待った。ひとつ息を整えると、彼女は答えた。


「飛べます。桟橋に係留してます。燃料も入ったまま……」

「よし、飛べ。明継を連れて、ひとまず空へ出ろ」

「でも、ウナさんは!」

「良いから行け!」


ウナの気迫に圧倒されて、トリィは黙って頷いた。明継は隣で黙ったまま、棒のように立ちすくんでいた。


「明継」

「あ……はい」

「父上を見つけてやれなくて、すまなかったな」

「そんな……!」


明継の父親、穂高進一。彼が行方不明になってから、その捜索を継続させてこれたのはウナの働きかけがあったからだ。ウナが胸元から、一丁の回転式拳銃を取り出した。それを明継に押し付ける。


「お前の父が持っていた物だ。お前が持っていけ」

「ウナさん……!」


ウナが立ち上がる。


「俺はニタイの長だ。ここを守る責任がある」

「……」

「行け!走れ!!」


ウナが怒鳴った。怒りではない、覚悟があった。トリィと明継は何か言おうとして、何も言えなかった。男達の声が近づいてくる。


「早く!!」


もう一度ウナが叫んだ、二人は息を吸って走り出した。桟橋の方へ、飛行艇のある場所へ。ウナは一人、その背中を見ながら呟いた。


「……なぁタカ。俺って、大人やれてたかなぁ」


そして、そのまま戦火の中へ飛び込んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ