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元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
【第二部】

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【第三部】第12話.異変

トリィが機体を寄せると、整備士の一人がロープを引いた。息を吐く間もなく、彼女の近くに仲間たちが集まってくる。工具を腰にぶら下げて騒がしくしている整備士たちが、トリィの一言を受けて声を止めた。


「北の空に煙を見ました」


整備主任が、いつになく厳しい表情で聞き返した。


「北で?」

「はい、煙です。何本か。それからチカチカと何か光っているのを見ました」


何人かの整備士達が、それを聞いてざわつく。主任が彼らを一睨みすると、口を閉ざした。


「光の方角は?」

「煙のもっと向こう側、北側です」


整備主任が髭に手を添えて、しばらく沈黙する。その視線は湖面の向こう、薄く霞む山々を超えてさらに向こう側だ。


「おい、お前らここ頼むぞ。俺はちょっとウナさんに連絡してくる」


そう言って整備主任は足早に桟橋を離れて、整備棟の奥へ走っていった。重い扉が軋む音が静かな湖面に響く。


その音が合図だったか、整備士達が慌ただしく機体に群がっていく。燃料の残量、翼の付け根に負荷がかかっていないか、プロペラの状態まで。全ての部品を、念入りに確認している。湖の上を走る風がひとつ、トリィは背筋を伸ばした。


「トリィ」


声を聞いて振り返ると、明継が立っていた。彼は周囲を気にしながら声をかけてきた。


「なぁ、どうかしたのか?なんだか、皆緊張してる」

「うん……」


どう説明していいものか。少し間を空けた後、彼女は続ける。


「飛んだ時、北の空で煙を見たの」

「煙?なんの」

「わからない。わからないけど、良くない事が起こっている気がする」

「……そっか」


明継はそれ以上は聞かなかった。彼も軍人の息子だ、何かを感じたのだろう。明継が黙り込むと、湖沿いの空気はより静かになった。原動機の熱が、まだ機体に残っている。


「ウナさんは?」

「暗い時間から出ていったらしいけど、役場の方なんじゃないかな」


明継がそう返した。湖面を見ると白い霧が山並みに吸い込まれている。しばらくすると、整備主任が急ぎ足で戻ってきた。


「ウナの旦那と連絡が取れねえ。役場の方にも居ないらしい。いつも通りなら夕方には戻ると思うが……」


皆の前で主任がそう言った。煙草を取り出したその指が、いつもより頼りなく見えた。

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