【第二部】第94話.世界ノ行方
大征二年
所属不明機により、世界で初めての空爆が行われた。ホッカイドウ庁の北部、ニタイ自治区から日の丸が描かれた航空機によるルシア領への爆弾投下であった。ルシアの報告によると爆弾による被害は甚大で、多数の民間人に死傷者が出たということである。
ルシアは激しく日本を非難。これに対し日本側は軍の関与を否定、調査のため所属不明機の引き渡しを要求するも、ルシアは応じず。
両国の関係性は悪化したが、司馬伟が望んだ武力衝突にまでは発展しなかった。同時期にニタイ自治区で、派閥争いによる首長が負傷した事件が起こった。空爆事件との関連性を疑われたものの、それも時間と共に人々の記憶から消えていった。こうして後にニタイ自治区事件と呼ばれる一連の騒動は終わった。
一部の情報では清国の関与があったと噂されていたが、真相は闇の中である。また同時期に日本軍の将校が一人、家族との休暇中にニタイ自治区で行方不明となったとされている。しばらくの間は各新聞社がそれぞれの憶測を書き連ねていたものの、それもまた一過性のものに過ぎなかった。
だが後の歴史から見れば、これが大きな渦の始まりであったのだ。世界を捻る大きな螺旋の起こり。ほんの些細なさざなみ。そしてこの時まで、人間は考えていた。争いは、戦争はコントロールできると。その認識が間違っていることも知らず。
そして時は流れた。
……
一度ここで第二部完結、とさせてください!
第三部、世界大戦編(仮)ですがこのまま続けると長くなりすぎるので一旦閉めます。




