表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
【第二部】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

225/256

【第二部】第82話.登山

【第二部】第82話.登山



「穂高、おい。穂高、少し」

「どうした」


私は振り返って吾妻を見た。急斜面の山道、露に濡れる草葉を踏み分けて吾妻以下十二名の男たちが、玉のような汗を額に浮かべながら一列になって連なっている。


「少し休憩せんか、落伍者が出る」

「うん」


近くの木の枝を掴んで足を止める。吾妻の言うように、隊列の後ろの者たちの間隔が広い。諜報部隊かなにか知らんが、練度が足りんのじゃないか。


「こんな場所で休憩はできんから、もう少し開けた場所に出るまで待て。少しペースは落とそう

「はぁ、ふぅ。わかった」


息を切らせながら、吾妻はそう返答した。


「穂高は汗もかかんのか、もはや化け物だな」

「馬鹿にするな、汗くらいかくぞ。見える場所にないだけだ」

「そうか。ずいぶん、涼しい顔をしているので人間を辞めたのかと思ったよ」

「はは。無駄口に使える体力があるなら、もう少し踏ん張ってくれ。五年前から体力が落ちたんじゃあないか」

「山歩きなんぞそれ以来だからな」


そういうと、少しペースを落として歩き始めた。後ろの者を気遣えなかったのは失敗だな。私らしくもない、どうしたものか。


「緊張してるのかネェ、穂高さん」


気がつけば隣まで登ってきていた金剛辰巳がそう言った。そう。この十二名の追撃隊に、もう一人名乗りを上げた物好きがいたのだ。ただの喧嘩好き、万年空手馬鹿の金剛辰巳である。


「緊張。私が緊張しているというのか」

「違うかい?筋肉が強張っているみたいだけどな」

「そうか、そうかな」


頭で気にしているつもりはない。しかしあの蛇男を追うという事に、身体が特別な圧迫感を感じているのだろうか。


「喧嘩するときぁ、もっと気楽にいかねェと。頭は冷やしても良いが身体は熱くねぇといけねぇ」

「喧嘩か、喧嘩。なるほどな。そうか」


歩きながら、金剛の顔を見る。ずいぶん明るい顔だ。全部説明したわけではないが、分の悪い殺し合いになるというのは理解しているはずだ。


「しかし本当に良かったのか。戦場になるぞ。なんの義理もないあなたが、こんなところで命を賭ける必要はないが」

「良いじゃねぇか。義理がねェのが良いんだよ。なんの遠慮もなく人間を壊して良いって瞬間は何度もねェからな」

「殺されるぞ」

「それが良いんだ。俺ぁそれが好きでやってるんだから、穂高さんらは気にせず俺を使ってくれりゃあ良いんだよ」


金剛は曇りのない笑顔を見せる。識者を含めて、いろんな人間を見てきたが、この男は圧倒的に世間様とはズレている。殺し合いが好きなんだと、本心で言っているのだ。

私はどうだろう。この男が異常だと断じるだけの常識は持っているつもりだが、ずいぶん長い間戦いの中にいたのだ、真っ当な神経を保っているという保証はない。


「いや常識など、そもそも普遍的なものではないのか」

「クク、そのとおりさァ。物差しはここにある」


そう言って、金剛は自分自身の胸を親指で突いて見せた。そうして我々はしばらく歩いて平坦な場所に出ると、小休止を取る事にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「喧嘩するときぁ、もっと気楽にいかねェと。頭は冷やしても良いが身体は熱く ねぇといけねぇ」 へんなところで改行が入っています。 PCでみるとわかんないけど、スマホでみるとこんな感じ。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ