【第二部】第76話.合流ノ友
【第二部】第76話.合流ノ友
「ウナ、無事だったか」
「……タカ!?どうした、なんでここに。いや、もう良いのか?」
ウナの前に出て声をかけると、彼は立ち上がって私に歩み寄ってそう言った。
「万事もう良い。という訳ではないが、せがれはこの通りだ」
「なら、あの手紙は解決なのか」
「ああ話せば長くなるが。そうだな、こいつは誘拐されていた。清国の男にな」
ウナが「そうか」と言いながらニッと笑顔を作った。かと思うと、直後に眉毛が歪んだ、どうやら負傷は良くないらしい。
「っ……」
「無理をするな」
「今無理をしないでいつするんだよ」
「ふっ、はは。そうか、そうかもな」
「ああ」
椅子にかけさせて、私は隣に立った。
「クンネはどうなった。決闘は見ていないが上手くいったようだな」
「うん。クンネには一騎打ちで勝った。俺は首長の器を示したんだ、ニタイには勝負の結果を反故にするやつはいないさ」
「そうか。引き続きウナ首長ということか」
「うん」
収まるべきところに収まったか。それはそれでいいだろう。
「クンネも俺の言うことを聞くってさ。仲良く病院送りで、仲直りさ」
「あれほどまでに反目していたのにか。クンネに付き従う者もいるだろう」
「クンネもニタイだ、掟は守る」
「そんなものか」
「そんなものだよ」
私にはわからないが、決闘の儀式というのはそれほどまでに影響力のあることらしい。トップ同士で殴り合って一致団結するなら、そんな平和的な解決法もないだろう。
「今の問題はこれだよ。役所が燃えた。次から次へと問題だらけだ。これはクンネは知らないって言ってるけど……」
「そう言うなら、そうなんだろうな。放火の実行犯は知っている。例の清国の男、司馬伟だ」
「司馬伟?昔見たね、目玉を食べるんだっけ。そんなやつがなんで」
「さあな、目玉を食うのかはしらんが」
そういえば5年前にウナと蛇男は面識があったな。
「やつが建物から出るのを見たからな。現行犯だ。それを追跡して、今はこのざまだ」
山で汚れた上下を見せる。つま先から頭の先まで泥だらけだ。擦りむいて破れている部分まである。
「ずいぶん汚したね」
「これくらいで済んで良かったと思うべきだろうがな」
「ははっ」
ウナが笑う。
「ところで、この辺りは航空機は飛んでいなかったか」
「航空機?」
「飛行艇、ああ。空飛ぶ機械だ」
「来た。来たよ、知ってるのか?鳥の化け物みたいなのが、大きな音を立てて北の方に飛んでった」
「ふん。そうか」
区役所を狙っているのかとも考えたが、通過したという。アレらがどこへ向かっているのか、それが問題だ。
「ところでクンネとは話せるのか」
「話せるけど」
「連れてきてくれないか。司馬伟とつるんでいた男だ。きっちり話をつける必要がある。航空機のことも含めてな」
……
明継はトリィらのいるウナの屋敷に送り込んだ。あそこには金剛もいる。まずこの街で一番安全な場所だろう。
そして私とウナ、クンネが一つの天幕の下、膝をつきあわせて座っている。この男、どこまで蛇男と関係を持っていたのか。場合によっては、ウナの身内とはいえ考えねばならないだろう。




