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【第二部】第49話.六発ノ弾丸

【第二部】第49話.六発ノ弾丸



どこの誰が、このような脅迫状を送ってきたのか。そして何を目的としているのか。息子(あきつぐ)の存在を匂わせて、それを盾に退去だけを指示する。私がこの場所に居ると、困る人間がいるということだろう。トリィの存在もそうだが、ウナの周りもキナ臭い。


クンネという男か?

ウナと対立しているという男が下手人だろうか。だとすれば検問を通したのは何故だ、私をウナに引き合わせたくないなら、そこで止めれば良いのではないか。

とすれば、やはり蛇男か。

あの男が息子(あきつぐ)を拐った上、この地まで追いかけてきたのか。だが要求がこの地を去れというのはなんだ。トリィの周りから私を遠ざけるのが目的か……?

なんにせよ推測に過ぎないな。


情報を集めなければ。早とちりで動いてしまえば、取り返しのつかないことになりかねない。


「私は、ひとまず区役所に行くが。吉野、お前は今日この屋敷から引き上げることはできるか?」

「そりゃ、帰ることはできるけどやな」

「わかった。ひとまず引き上げの準備だけしておいて貰えるか」

「その通りに札幌に引き上げるってことかいな」

「場合によっては、な」

「ふうん、まぁええ準備だけしとくわ。婆や、ちょっと協力してや。」


吉野が婆やを引っ張って行く。穂高も続いて部屋を出ようとすると、トリィが声をかけてきた。


「わ、わたしはどうしたら」

「トリィ、君はここで生きるんだ。私達にはついて来なくて良いし、関与すべきでない」

「でも、明継くんにはお世話になりましたから、わたしも何かできることがあれば協力したいです」

「いや、協力出来ることはないな」

「そんな……」

「君が、ルシヤや清国から……いや皇国からも利用されずに生きていこうと思うのであれば、今までのつながりは切って生きろ。私にこれ以上深く関わるのはリスクでしかない」


穂高がそう言うと、トリィは静かに俯いた。数秒の間を空けて、再び顔を上げると彼女は口を開いた。


「穂高大尉。ありがとうございました」


トリィが、いやベアがそう言った。


「ああ、あとは上手くやってくれよ」


ベアにそう返した。上手くやれ。そうだトリィのことはベアに任せておけば間違いはないだろう。

ふっと椅子に体重を預けて座ったまま、腕を組んでいる金剛に目線を向ける。


「金剛さん」

「うん?」

「出会ったばかりのあなたにこんなことを頼むのはどうかと思うのだが。どうかこの屋敷にいる間は、彼女らを守ってやってくれないだろうか」


彼の力は身に染みている。何が来ても彼ならばどうにでも出来るだろう。金剛は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに表情を戻した。


「ああ良いよ。俺がここにいる間は守ってやる。約束するよ」


どうかと思ったが、彼はなんの抵抗もなく穂高の願いを受け入れた。


「ありがとう」

「くく、喧嘩をした仲だしよ」


彼はニッと笑って見せる。ありがとう、もう一度礼をする。そこへみすずが寄ってきた。


「進一」

「姉さん」


昨日出会ったばかりで、今日はもうこのざまだ。我々に兄弟運はないらしい。


「ありがとうね、またどこかで」

「ああ、また会おう。盆と正月ぐらいには家族揃ってな」


そう言った。今この屋敷を出れば、戻ってくるという保証はない。そうなっても良いように、覚悟を決めているのだ。


「では行くか」


懐から回転式拳銃を取り出した。赤石校長から預かったものである。六発の弾薬を確認するとレンコンのような形をした弾倉に全て装填した。

そうしたあと皆に別れを告げて扉から飛び出した。ウナがいる区役所へ。何かが起こっているのは確かだ。そこで決める、私がどう動くべきかを。

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