牢獄
「クロウか、いい名じゃ」
エリーゼはしみじみとつぶやいた。
「エリーゼはどのくらいこの監獄にいるんだ?」
古株というぐらいだし、かなり長い時間いるんだろう。そんな奴が右隣の牢獄に捕らわれているとは運がいい。
「100年はここにいるの。」
「そうか100年かー、だいぶ長くいるんだなー。」
うそだろぉぉぉおお!、100年だと?ふざけてんのか?中二病というやつか。こりゃ話を合わせるの大変だな。それともこの薄暗い牢獄に住んでいると精神が狂ってしまうのだろうか・・
というか、さっきからトイレが臭すぎる鼻が曲がりそうだ。この何もない牢獄にトイレの存在感がすごい。
「臭すぎて鼻が曲がりそうだ」
「そのうち慣れるから気にするでない。そもそも100年前まではトイレすらなくてそこらに垂れ流し、死んだ死体は糞まみれじゃった。あんまりひどいからワシが文句言ったらなんとかツボはつけてもらえての」
こいつ文句言ったら意見が通るって、この牢獄内では結構権力をもってるのか?
頭がおかしくなりそうだ。正面の牢獄の人は死んでるし、隣の女は頭おかしいし。誰でもいいから助けてくれよ・・・
「神様・・・なんでこんなことするんだよ。」
なんでこんなことになったんだ。マジで歩き食いのせいなのか。
「クロウよ、知らぬでここに来たわけではあるまい。」
エリーゼは先ほっどまでと声色を変え、感情のこもらぬ声で語った。
「ここに神などおらぬ。あるのは深い闇と絶望だけ。島を覆う瘴気は神話の時代に邪神が万の人間をこの牢獄で拷問にかけ、その憎悪と苦痛から造り出した絶対の結界。たとえどのような神の加護を持とうと、この結界の中では無意味となってしまう」
エリーゼは淡々とした声でそう告げた。それが当然であるかのように。
神話の時代?邪神に神の加護?拷問だと?冗談はこの牢獄だけにしてくれよ。俺は檻から離れ、壁に背を預けて、これまで起きたことを考えた。だが考えれば考えるほどわからない。
「エリーゼ、疲れたから寝るわ。お休み。」
色々起こったので体が疲れていたのか、かなりの眠い。
「ん?寝るじゃと?」
「フッフッ、なかなか面白い冗談じゃな。久々に笑えたぞ」
「クロウ?お主、悪睡の邪法を知らぬわけではあるまい」
「寝ていかん!!!死ぬぞ!クロウ・・・クロウ・・・・ロウ・・・ク・・ウ」
まだまだ喋り足りなかったか、エリーゼが小さな声で名前を呼んでいる。かなり焦っているようだ。だが眠気には勝てず。
そのささやき声を子守歌に俺はいつしか眠りについていた。