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雪の涙は葉に落ちて  作者: 大塚 博瞬
第1章 メリコイル
9/30

1-8 ここにいる理由4

 肌寒い風が頬を撫でる。

 雲1つない星空が頭上には広がっているが、これを美しいと思う感性をオレは持ち合わせていない。そんな自分に嫌気がさす前に、そっと下を向いた。

 ここに人気はなく、オレの周りにはスノウもブラウンさんもいない。アタッシュケースを持ち、大きく腕を振りながら歩く探偵が隣にいるだけだ。

 メリコイル・北区・商業区画。

 囮作戦の現場となる場所の、少し外れの細道を歩いていた。

「この辺りは暗いな。宿屋の前と比べても街灯が少ない」

「うん。今日シンボルで副局長さんに確認したんだけど、この辺りは治安維持局の人が攫われた場所らしいんだ。同時に、一般人が最も攫われていて、犯人にとっても一番自信のある場所ってわけ。作戦決行にはうってつけの場所だと思わない?」

「その作戦の内容について、そろそろ教えて欲しいんだけどな。一体、オレは何をすればいい?」

 朝からお預けをくらっているので、少し食い気味に言葉を発する。

「率直に言うと、君の役割は網だ」

「あみ?」

「そう、網。君にはブラウンさんと協力して、餌に食い付いた獲物を逃がさないようにして欲しい。そういうのは得意だろ?」

 作戦を釣りに例え、ルーネはオレの役割を説明する。


 オレが持っているのは魔獣を殺すための武器と、それを扱う技術くらい。囮役が務まるほど器用じゃないのは自分でも分かる。

 だが、この流れでいくと囮役はルーネかスノウだ。

「確かに得意だが、オレが囮役をやらなくても大丈夫なのか? もしも犯人が凶器の類いを持っていた場合、1番対処しやすいのはオレだと思うんだが」

「だからこそだよ。……犯人は必ずしも1人って決まった訳じゃない。だからこの作戦で1番危惧すべき事は、予期せぬ第3者の介入なんだ。もちろん君に囮役をやって貰うって手もなくはないけれど、不測の事態への対処は君とブラウンさんが適任だと判断したんだ」

 確かに、第3者の介入が有るにしろ、無いにしろ、周囲を見張る人間は必要だ。とりわけ、オレとブラウンさんは未開の地でその手の訓練を積んでいる。


 未開の地。そこは魔獣が蔓延る外の世界。定石などという言葉は存在せず、場合によっては武器を扱う腕よりも、瞬間的な判断力を持つ者が優秀とされる世界だ。

 スノウはそもそもハンターではないし、ルーネは捜査専ハンターなので未開の地に行った経験が無い。

 ならば、未開の地経験者であるオレは餌よりも網の方が適任なわけだ。

「分かった。その役目、真っ当しよう」

 そう言って、1つの疑問が頭に浮かぶ。

「ただ、1つだけ質問がある」

「どうぞ」

「思ったんだが、この囮作戦は、囮が囮とバレていない状況下で初めて機能する訳だろ? なら、周囲を見張るオレやブラウンさんが犯人に見つかって、囮作戦が機能しなくなる可能性もあるんじゃないのか?」

 そう言うと、ルーネは自身満々に答える。

「ふっふっふ。そこはちゃんと考えてあるんだな」

 ルーネは一旦しゃがみ込み、手に持っていたアタッシュケースの中から指輪を1つ取り出した。オレやスノウが付けている物とは違い、赤い宝石で装飾された派手な指輪だった。

「はいこれ。君にはこれを付けてもらいます」

 そう言うと、ルーネはその指輪をオレに手渡す。刻まれた紋章を観察するが、オレの記憶にはない紋章だった。

「これは? 随分と高そうだが」

「『隠匿の指輪』ーー付けると姿を視認されなくなる紋章の指輪さ。昔は未開の地の探索に使われていたんだけど、人形が台頭してきてからは埃を被る事になってね。基本的にはシンボルが管理してたみたいだけど、個人で持っているハンターも多かったみたいで、それが質に流れてたんだ。今じゃ規制が厳しいから、集めるのも一苦労だったよ」

 スノウの指輪と同じように、国が規制し取り締まっている指輪って訳か。俗に言うレア物だ。

 ここで、もう1つの疑問が頭に浮かんだ。

「なあ、ルーネ。犯人の姿を見たやつがいない以上、指輪を使っている可能性が高いわけだろ? じゃあそれこそ、この指輪が今回の事件に使われてたりしないのか?」

「うーん、その可能性は低いんじゃないのかな。姿を隠す、あるいは人の目を欺くだけなら、他にも方法はあるわけだし。1番身近な例で言ったら、スノウちゃんの付けてる『支配の指輪・原典』がそう。『今、見たものを忘れろ』って言えば、命令された人は綺麗さっぱり忘れちゃうわけだからね。そういう指輪を絞り込もうと思っても、キリが無いのさ」

 幾ら紋章の指輪が過去の遺物と言えど、その種類は星の数ほど存在する。たった1つの条件だけで、犯人が使っている指輪の種類を判別できる程甘くはなかった。

「それは残念だよ、指輪コレクターさん」

 そう言うと、ルーネは頬を膨らませる。

「へぇ……君がスノウちゃんの真似事か。名探偵は聞いてて気持ちが良いから良しとして、指輪コレクターって呼ばれるのは嫌だな。貴族じゃないんだし。そんなこと言うなら、今度から君のことを愚か者って呼ぶぞ?」

「別に構わないぞ。オレが愚か者なのは事実だからな」

「うわ、そういうこと言うんだ……」

 ……軽く引かれた。自虐ネタでもそこまで言うなって顔だ。けどなあ、オレは事実を言っただけだ。オレが愚か者だという、生まれてから今日に至るまで何も変わらない事実を。

 今日、改めてそれを実感した。

 拒絶されて、疑問を投げかけられて、母さんの声を聴いて。

 ザアザアと、木々の揺れる音がした。心の擦れる音がした。

 聞き慣れた音の響きが、永遠とざわめいているような気分だった。

「ねえ。今日、何かあった?」

 気が付くと、ルーネがオレの顔を覗き込んでいた。

「なんだよ、突然」

「いやぁさ。元気がないなって思って」

 オレの心を見抜くように、ルーネは言葉を発する。

 こいつはヌワラ・グリレッジと同じように、何か特殊な能力を持っているのだろうか? そこまで考えて、すぐさま否定する。

 人は無意識のうちにサインを発している。こいつはそれを読み取る技能を持っているのだ。決して特殊な能力ではない。

 それが出来るからこそ、この名探偵は『捜査専ハンター』なのだ。なら、隠し事は無意味だ。

「殴られたんだ」

 精神的に。

「え、どこ殴られたの!? 顔? お腹?」

「あー、違うんだ。そうじゃなくてだな……」

 例えを真に受けられる。今日はとことん意思の疎通が出来ない。

「言われたんだ。お前は何でここにいるんだって。……オレはジェノの1件で、少しは誰かのために生きることが出来たと思ってた。その意味を、少しは理解出来たと思ってたんだ。けど、オレを忌み嫌う人達にとってそんな事は関係なかった。オレが何をしようと、彼らのためにはならなかったんだって思った。……そんな事を考えていたら、オレが何でここに居るのか分からなくなったんだ」

 痛覚はとっくの昔に死んでいるはずだった。なのに頭に疑問が浮かんだ瞬間、確かにそこには痛みがあった。

 お前は永久に母の言葉の意味は分からないのだと、胸の内を鈍器で殴られているようだった。

 痛みは生きてる証拠だとよく言われるが、こんな不快さが伴うのなら必要は無いのでは、と思ってしまう。

「……ふふ。は……はははっ……」

 そんなオレの悩みを隣で笑うやつが1人。堪えようとしている所が、無性に腹が立つ。

「……なんだよ。何も笑うことはないだろ」

「いやぁ、ごめんごめん。何だか君らしい悩みだなって思ってさ。君が何でここにいるのか? そんなの決まってるじゃないか。スノウちゃんの力になるため、だろ」

「いや、そういうのを聞きたかった訳じゃなかったと思うんだ。こう、何と言うか、オレの根底の部分をだな」

 上手く言葉で言えないが、もっと心に迫るような問いだった気がする。

 オレがそう言うと、ルーネは深く肩を落とす。

「ハァ……私にどうこう言っといて、君が1番深読みするんだもんなあ。君はあれだね、もっと肩の力を抜くべきだ。じゃないと息が詰まってしまう」

「息が詰まったっていいさ。本当に母さんの言葉の意味が分かるなら」

「またそういう事言う」

 また、ハァ、と彼女がため息をつく。今度は少し短く、少し軽く。

「自分の悩みは自分にしか解けない。それが分かっているから、君はきっと苦しい。自分が何でここにいるのか、そんな事すら分からなくなってしまうんだろうね」

 そこまで言うと、ルーネは小走りでオレの先を行く。細道を抜け、月明かりに照らされた道に出てる。

 それでもまだ街灯はなく、彼女がこっちに振り向いたと分かる程度の明るさだった。

「でも、そんなに気を張ることないんじゃないかな? 正真正銘、君はスノウちゃんを救った。確かにその手で、他の誰かを救ったんだ。それを忘れなければ、君はまた先へ進めるさ」

 どこまで行っても道は暗く、迷路のように入り組んでいる。まるで旧人類の残した迷宮のようだと思った。

 迷宮。行く当てのない砂漠じゃない。心が擦り切れようとも、ちゃんと先がある事を実感できる。ジェノで燻っていた頃とは違う景色が、確かに目の前には広がっていた。

「ああ。だと良いんだけどな」

 クスッと、自分でも気づかぬうちに笑う。

 ああ、笑えるくらいの些細な変化だ。ちゃんと進む価値があると思えた、本当に些細な。

 

 



 

 生暖かい風が頬を撫でる。

 雲1つない綺麗な星空が頭上に広がっているが、それを見ようと夜に出歩く人間はいない。精々やせ細った野良猫が、怯えながら道の隅を歩く程度だ。

 まあ、お前のせいで外に出られないんだ、なんて言われればそれまでなんですがね。それでも夜に出歩く人はいるわけで、攫う人間が尽きる様子は全然ない。

 未開の地の開拓が進むにつれて人間の危機管理能力が落ちてる、って話は案外本当なんだな。なんて、事がこうもうまく運ぶと、根拠のない俗説すら信じてしまいそうになる。

 そういえば、奥方と初めて会ったのもこんな夜でしたっけねえ。



 10年前、隣国『パクタン』で起こった大災害ーー『魔女の嵐』。その元凶である魔女の一族への報復ーー『魔女狩り』は、時間が経つにつれて国全体から汚物を排除する動きへとシフトしていった。

 この災害が起きたのは自分が他人を信頼したせいだ。

 犯罪者は罰せよ。疑わしきも罰せよ。

 そんな意識が汚物への攻撃性を高め、1年と経たない内に『魔女狩り』は『犯罪者狩り』に発展した。

 当時、オレはパクタンで違法な紋章技術が使われたバイザーを売買していた。半径5メートル以内の携帯端末をスキャンし、セキュリティ解除無しに中のデータをコピー出来る代物。そんな物を売ってるもんだから、当然、犯罪者狩りのターゲットになった。

 まあ、運良くパクタンとインフェカ最北の街ーーメリコイルを繋ぐ1本目の街道が出来たばかりで、オレはなんとか商人に紛れて雲隠れすることが出来た。

 治安維持局に捕まった同業者を何人も見た。ひどい奴なんかは一般市民にリンチにされた。それを思えば、あの地獄から逃げ出すことが出来たオレは生きていられただけ運が良かった。


 新天地での家探しはそんなに難しくはなかった。元より家の外装に拘りを持つタイプでもなかったし、ベッドがあって雨風を凌げれば何でも良かった。もちろん戸籍は偽造しなくちゃならない訳だが、それを含めても半月程度で新居は見つかった。端的に言って、ボロいアパート。オレにはお似合いだった。

 初めて新居の扉を開けた時、オレは備え付けのベッドに倒れ込んだ。自分でボロいだ何だと言っておいて、『犯罪者狩り』が始まって以来初めて心を休めれたのがこの家だった。

 その時の安心感は今でも忘れられない。細やかな幸福ってのはこういうことを言うんだって実感したもんだ。

 しばらくはなりを潜め、静かで穏やかな暮らしをしていこう。その時は確かにそう思っていた。


 さて、寝床の問題が片づいた次は、金の問題をどうにかしなきゃならなくなった。メリコイルに来る時に大金を失い、新居探しで貯金をだいぶ絞られた。それでもしばらくは持っただろうが、長く続かないことは目に見えていた。

 隣国で、とは言えオレは追われ者。金のことを考えた時に、表だっての商売は出来なかった。だから唯一手元に残ったこのバイザーを役立て、1つ裏の仕事を始めた。


 何でも屋ーーパクタンにいた頃、オレの商品を良く買っていた奴がしていた商売だった。このバイザーがあれば、セキュリティを突破して一般市民の個人情報から治安維持局の捜査資料まで調べられる。違法性とはイコールで、度を超えた利便性なのだ。

 もちろん、リスキーな依頼からパシリまで何でも御座れって訳じゃあない。静かに、穏やかに、身に危険が及ばない範囲で依頼をこなす。同業者にも治安維持局にも睨まれる事のない平穏な立ち回りを心がけた。

 そのおかげか、稼ぎは少ないが生活が安定する程度には仕事を軌道に乗せることが出来た。


 まるで、神様がオレに味方しているようだった。だってそうでしょう? 

 やること成すことトントン拍子で良いように転がっていく。大きな幸せはないが、慎ましい生活が出来るようになった事は、まさに天の恵みのように思えた。

 ただ何故か、オレの心にはポッカリと大きな穴が空いていた。

 地獄から生き延びたあの日から、常に何かを求めていた。

 何を求めているのか、自分でも分からなかった。ただ、その何かを探して気づけば7年も経っていた。


 そして、あの夜。星を眺めるには絶好の夜の日の事。

 その日の依頼主は、人気のない路地を説明の待ち合わせ場所に指定してきた。なんでも、裏の人間と関わるとまずい立場だとか。

 何となく危ないってのは予想がついた。いや、自分で言うのも何ですがね、裏の仕事をしながらここまで平穏にやってこれたのは自分の危機察知能力が高いから、という自負があった。危険な匂いを察知して、危ない依頼は受けない。そうでもしなきゃ7年もこの仕事が続いた訳がない。

 避けるべき相手だってのは頭で理解できた。そう、理解できた筈なのに、オレの足は待ち合わせ場所に向いていた。

 何故かって? それはオレにもよく分からなかった。

 ただ、強いて言うならば、勘だった。

 この胸の穴を埋めてくれる何かが起こるんじゃないのか?

 求めていたモノが見つかるんじゃないのか?

 そんな疑念が頭に浮かんでしまった。

 夜空の星の煌めきが、オレを愚かと笑っているように見えた。心臓の高鳴りが、引き返せと訴えていた。

 そして、

「ーー貴方、何でも屋のチェインよね?」

 女が月光の元に姿を晒した。鋭く放たれた捕食者の眼光が、オレを捕らえて放さなかった。

 逃げろ、逃げろ、逃げろ。

 心臓の高鳴りが頂点に達する。体中に危険信号を送っている。

 引き返せ。引き返せ。引き返せ。

 そんな理性からの警告を、心が握りつぶした。

「ーーやって貰いたいことがあるのだけれど」

 命の危機を肌で感じながら、あろう事かオレはそれを喜んでいた。

 疑念が、確信に変わった。

 何てことはなかったんだ。オレが求めて止まなかったもの。それは、あのパクタンの『地獄』だったのだ。

 ほら、よく聞くでしょう?

 薬物中毒者が、どんなに我慢しても薬物との依存を絶てない哀れな話を。未開の地を開拓したハンターが、平和な時代になっても武器を担いで血を求める惨劇を。

 オレは、あの地獄に魅せられたんだ! 平和からは最も遠い、狂気と混沌のあの光景に!

 静かで穏やかに暮らす? そりゃあ、あの光景から一番遠いものだ。だとすれば、その願いは土台無理な話だった訳だ。

「ーー依頼、受けて下さらない?」

「ええ、是非」

 もう戻る気は更々なかった。



 あれから3年。

 依頼通り、人を攫っては奥方に届けてきた。人を攫った現場には意図的に証拠を残し、同一犯による誘拐だとアピールした。


『恐怖を煽るの。この地には既に安全な場所など無いのだと、平和呆けした盗人達に分からせるのよ』


 3年前に聞いた奥方の声が頭の中で再生される。

 ええ、分かってますよ。これは計画に必要なことだ。痕跡は残そうとも、尻尾の一本だって掴まれはしませんとも。

 ただ、不安要素はあった。ここ最近のハンター達の動きが妙に冴えているのだ。3年経ってやっと対応し始めたってところですかね。

 東区の女ハンターは、聴覚、嗅覚に優れたコイルに乗り巡回を行っている。そいつはオレ1人に狙いを絞るのではなく、夜間に出歩いている人間全員を把握して、誰が攫われても対応出来るように動いている。治安維持局ともうまく連携が取れており、良いハンターだ。


 西区の兄弟ハンターは、東区の女ハンターとは違い局所的に動いている。視野が狭いのかと問われればそうではなく、こちらの動きを読むように先回りしている。魔獣狩りの経験が豊富なハンターは狩る側の心理がよく分かる、と言った所ですかね。


 経験豊富と言うのであれば、南区の鎧を纏ったハンターと、緑のマントを着た女ハンター。東区と西区のハンターも優秀と言えば優秀だが、ヤバさで言ったら南区の奴らが1番ヤバい。守備範囲の広さ、読みの精度は群を抜き、オレの鼻先を掠め始めている。加えて、手の内は不明だが、指輪を使ったオレの姿を何度か目で捕らえた節がある。どんな手段を用いたのかは知らないが、奴らが現れてから随分とやりにくくなった。

 悪者が正義の味方に捕まるのは、いつだって世の習わしだ。

 しかし、どんなに正義の味方がいても、悪人がいなくならないのもまた事実。

 人はどんなに視覚が優れていようとも透明な物体を捕らえるに能わず、どんなに嗅覚が優れていようとも無臭を嗅ぎ付ける事はない。

 それに例えオレを、目で、鼻で捕らえる事が出来たとしても既に遅い。

 目的はもう、達成されるのだから。

「はっ……はははっ! くはははははっ!!」

 こんなドブみたいな人間が生き延びて!子供のように夢を見て!挙げ句の果てに、その願望が叶おうとしている!

 なんて腐った世の中!

 なんてひどい運命!!

 これを笑わずして、何を笑うというのか!!

「………ははっ!」

 空虚じゃない。退屈しない。心に活力が満ちていく。


 勢いよく走り出した絨毯はもう止まらない。目的地に辿り着くか、何かに衝突するまでは。

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