第8話 何しに行ったんだか
俺が目を開けると心配そうに俺を見ているミズキがいた。
「ん……。ミズキ……」
俺はゆっくりと起き上がる。
まぁ風邪がすぐに治るわけないからだるい。
「クロ……。大丈夫?」
「まぁ、大丈夫ってわけじゃねぇかな。ゴホッ。それよりここは……」
「知り合いの宿屋だ」
俺の疑問に答えたのは聞き覚えのある懐かしい声……。
俺の兄貴、シロの声だった。
「兄貴! ゴホッゴホッ! って今までどこ行ってたんだ!?」
「まぁまぁそう怒鳴んなって。ちょっと自分探しの旅に出てただけだからよ」
いやいやちょっとじゃねぇだろ。
何年前に出ていったと思ってんだよ。
しかも出ていった理由が自分探しの旅かよ。
何か兄貴のこと聞いたら安心して眠くなってきたな。
そう思っていたらいつの間にか眠りについていた。
俺が起きたのはどうやら深夜のようだ。
一度寝たためか、体がだいぶ楽になっていた。
部屋を見渡すと隣のベッドにミズキが眠っていた。
こう見るとやっぱミズキって美人だな。
「何にやけてんだ?」
兄貴の声に俺は焦りながら振り返る。
兄貴はソファーに座りながら笑っていた。
「何焦ってんだよ」
「べ、別に焦ってねぇよ。それよりいつから戻ってたんだよ」
「あー……。一年前ぐらいかな」
「ゴホッ。何で帰ってこなかったんだよ」
「もう四、五年も経ってるのに帰れるわけないだろ?」
別に兄貴が突然消えたことを俺は気にしてないのに。
でもそういうことを考える兄貴は変わんねぇな。
いつも先読みして心配して犠牲になって……。
「そういえば何でクロはひ……じゃなくて逃げてんだ?」
「何か成り行きで助けることになったんだ」
「ふーん。まぁ助けるんならちゃんと助けろよ」
「ああ。ゴホッ。そういえばここまで連れてきてくれたのは兄貴か?」
「決まってんだろ? まぁあの子に会わなきゃ連れてくることもなかったけどな」
「そういえばミズキと何で一緒にいるんだ?」
「その子がクロを捜してたからだよ」
意外というかよく考えれば普通だ。
はぐれればミズキも俺を捜す。
そんなの当たり前の答えだ。
「そんで大まかな事情は聞いといた。その子と逃げてんだろ?」
「ゴホッゴホッ! ああ。そういえばここに泊まってても大丈夫なのか?」
「その点は心配するな。ここは俺の知り合いの宿屋だ。しかも俺はここで手伝いしてるから誰かが来てもクロ達のことは黙っててくれるからよ。だから安心して寝ろ。まだ風邪も治ってないだろ?」
「確かに治ってないけど……」
「そんじゃあさっさと寝て治せよ」
兄貴は明かりを消すとソファーで横になった。
俺も寝ようと思ったがその前にトイレに行きたくなり暗闇の中を壁にぶつかったりしながらトイレに行った。
トイレを済ますとまた暗闇の中を今度はぶつからないようにゆっくりと歩いた。
手が何かに当たる。
この感触は……ベッドだ。
俺はベッドに潜り込むと急に眠気が襲ってきた。
そして明日のことを考えながら眠りについた。
読んでいただいたこと感謝します。
出さないと思っていたシロを出してみました。
自分探しの旅って何を得るのでしょうかね。
感想と評価お待ちしています。
それでは失礼します。