最終話 何があっても
そして今に至る。
俺が朝食を作っているとミズキが目を覚ました。
「おはようクロ……」
「まだ寝惚けてるのか? そんなだらしない王女がどこにいんだよ」
「うるさいな……」
まぁこれは朝の挨拶のようなものだ。
すぐに朝食を作ると二人で食べる。
ミズキと同棲してそんなに日は経っていないがお互いのことをかなり知ることができた。
たまに兄貴が俺達の様子を見に来る。
その度に変なことを言うから一発拳を入れて追い返す。
変なこと言う前に自分も彼女を見つけろって話だ。
そういえばもう少ししたら国王の結婚式があるらしい。
国王の結婚相手は兄貴の知り合いらしい。
偶然国王が兄貴を訪ねたときに知り合ったらしく、国王もその人も一目惚れしたらしい。
それで国王と兄貴の友情が深まったらしい。
今でも兄貴と国王の関係は不思議に思う。
「ねぇクロ」
「ん? 何だ?」
「もうお互いのことを知って少し経つけど……私のことどう思う?」
突然訊かれたが俺は思ったことをそのまま言った。
「予想通りって感じかな。美人で少しわがままで家事はあんまりできなくて、でも国王と同じで国民のことを考える優しい性格を持ってる」
ミズキも少しは慣れたらしくあまり顔を赤くしなくなった。
「改めてミズキのことが好きだな」
少しは慣れたミズキでもストレートに好きと言われるのにはまだ慣れてないらしい。
顔を真っ赤にして黙った。
「あ、いや、もうそろそろ慣れたと思ったんだけどな。悪い」
「い、いや……。私もクロのことが……好きだから」
俺達はどちらも黙ってしまった。
そしてミズキが顔を近づけてくる。
俺は何も考えずミズキと同じように顔を近づけた。
そして俺達の唇が重なる手前で物音が聞こえた。
俺達は口付けを交わすことをやめると一点に目を向ける。
そこには扉の影から俺達の様子を見ている兄貴とおっさんがいた。
「な、何やってんだよ!?」
「気にするな。温かく見守ってやるから」
「そうだぞ少年。続けて構わない」
あれからこの二人は仲良くなり、面白がって俺達を見ている。
「お前らなー……」 「お兄様もレイも……」
「「ふざけるな!!!」」
俺達は兄貴とおっさんを追いかけ始めた。
兄貴とおっさんは簡単に逃げていく。
それを俺達は笑いながら追っていく。
何だか楽しい。
俺は普通の日常を取り戻すことはできなかった。
しかし違う日常を手に入れることができた。
前よりもいい日常を。
あの逃亡があったからこそ今のこの日常がある。
本当にミズキに会えてよかった。
これからどんなことがあるかなんて俺にはわからない。
どんなことがあろうとも二人なら乗り越えられる、そんな気がする。
何があっても一緒に生きていこう。
〜お姫様と逃亡者 END〜
読んでいただいたこと感謝します。
ようやく『お姫様と逃亡者』も終わりを迎えました。
最初は終わるかどうか不安でしたが、何とか終えることができました。
これも皆様のおかげです。
よく考えるとこの小説はクロ、ミズキ、レイ、シロ、ライクの五人しか名前を出してませんね。
登場人物少ないな。
感想と評価お待ちしています。
それでは失礼します。