第11話 おっさん達と兵士
兄貴が戻ってきたのはミズキと仲直りしてから少ししてからのことだった。
兄貴は息を荒くして戻ってきた。
そして最初に言った言葉は……。
「ここから逃げろ」
突然のことで驚き、そして焦った。
ここは兄貴の知り合いの店だから俺達がここにいることはわかんねぇのにどうして……。
俺の心の声が聞こえたのか、兄貴がその疑問に答えた。
「どうやらここの宿を借りてた人がお前達を見たらしく、それを追っ手に喋っちまったらしい」
「でも何ですぐにここに来ないんだ? 喋ったならもう来てもいいんじゃないか?」
「それはここのオーナーがそいつらを何とか引き止めてくれてるからだ。そういうことだから早く裏口から逃げろ」
俺達は頷くとすぐに準備をして裏口へ向かった。
裏口へ向かう途中、何人もの足音が聞こえた。
そして裏口から出る一歩手前で後ろから声が聞こえた。
「いたぞ!」
おっさんの仲間だ!
どうやらオーナーを振り切って来たらしい。
俺とミズキは裏口から出たが、兄貴だけは出なかった。
「お前達だけで逃げろ。ここは俺が何とかしとくから」
「兄貴!?」
「ちゃんと逃げろよ」
兄貴がそう言うと、裏口の扉が閉じた。
俺はミズキの手を取ってその場から離れながら思っていた。
兄貴は昔と何も変わんねぇ……。
からかって馬鹿にして、でもいつも自分を犠牲にして守ってくれて……。
俺達が宿屋を離れるとおっさんの仲間が追いかけてきた。
どうやら宿屋の外にも仲間がいたらしい。
まだ風邪は治っていないが今は気にしてらんねぇ。
だるい頭を無視してただ走り続けた。
すると前から兵士の集団が迫っていた。
兵士は国を守るためにいる。
だからこれだけの騒動が起きていれば仲裁に入るはずだ。
いつもは嫌いな兵士だが、このときばかりは少し安心していた。
そして俺が兵士に向かって行こうとすると、ミズキが思い切り手を引っ張って脇道に逸れた。
「何で兵士のところに行かねぇんだよ!?」
「じゃあ振り返ってみろ!」
俺は言われた通り振り返る。
俺が目にしたのはおっさんの仲間と一緒に俺達を追いかけている兵士だった!
「何で兵士まで追ってくるんだよ!!?」
疑問に思って声に出したが、そんなことを考えている余裕は今の俺にはなかった。
そして俺達はおっさんの仲間と兵士を振り切るために必死になって走り続けた。
読んでいただいたこと感謝します。
できれば昔のシロのことも書きたかったんですが無理でした。
後でできればやりたいと思います。
感想と評価お待ちしています。
それでは失礼します。