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早いメリークリスマス
冬休みだというのに、駅前の人通りは多かった。
祐一はスマホを取り出し、時間を確認した。
9時50分、待ち合わせ時刻の10分前。
特に早く着き過ぎたというわけでもない、彼は軽く頷き、スマホをポケットにしまい、代わりに本をバッグから取り出した。
改めて彼は駅前を見渡した。彼と同じように、若い人がそこらにいるのがわかった。
去年までの彼なら、わざわざ冬休みの寒い日に外に出ようなんてしなかっただろう、そんな自分自身の変化にふと笑みが漏れた。
「祐一君、メリークリスマス。」
亜希の声に気がつき、祐一は振り返った。
派手な格好ではないが、おしゃれを意識した女子高生の姿。自分と同じように、いつもより背伸びした彼女がいた。
「メリークリスマス、亜希ちゃん。早かったね。」
「祐一君こそ。」
二人してふふっと笑い合う。
祐一の緊張はそれだけでほぐれてしまった。
「それじゃ、いこっか。」
亜希の言葉に促され、駅の中へと向かった。
楽しいデートの始まりは、待ち合わせ時刻よりも早かった。