第21話 前哨戦
「さて、それでは昨日の技について説明しましょうか。」
ティム達は、慈愛神教徒を縛ったまま、ユリウスの馬車で王都への帰路についていた。
昨日の怪物退治の後、タドリの宿、大岩亭に戻った時には、すっかり夜も更けており、食事もままならずに疲れを癒すために深い眠りに入った。
疲労がたたって深い眠りについた四人は、昼過ぎになってようやく、活動を再開したのだ。
余談だが、今回は時間帯もあってか、宿の前に置き土産はなかった。
そんなこんなで、馬車に乗り込んだティム達だったが、今は怪物を仕留めた技についてユリウスに説明を求めているのだった。
ユリウスは馬番をしながら、こちらを振り返りもせずに話し始める。
「その話、こいつらに聞かれてもいいのかよ。」
ティムは、同乗している教徒達の方を見ている。
教徒達は縛って、手足の自由は聞かなくしてあるものの、目や耳を塞いではおらず、聞かれてまずい話であれば、こんな所でして欲しくはなかったのだ。
「それは構いません。私が使った技は、昔からあるものでして、私ぐらいの歳の人ならば大抵の者が知っています。
いまさら、慈愛神教徒の皆さんが知ったところで変わりません。」
「それじゃ、あんな技を使える人がたくさんいるってことですか?」
感じた疑問を素直に口にするリオン。
怪物退治の時は宿の主に預けて行かれたため、寂しかったのか、今日はリオンの耳を噛んだり、舐めまわしたり、周りを駆け巡ったりと甘えている。
「それも違います。遥かな昔はどうだったのかまではわかりませんが、少なくとも、私が戦線にいた時代に、この技を使える者は、十人もいませんでした。
数少ない者、私やゴメス、それにベロトワ王ですね、が使える技です。
もちろん、魔物討伐に有効なこの技を広める努力はしましたが、ほとんどの者は扱うことすら出来ませんでした。」
「親方さんって、見た目よりずいぶんと強かったってことなのね。」
「評価は他人がすることですから、私からどうのとは言いませんが、あの英雄ガルドもこの技を使うことが出来たと思いますよ。」
「ガルドがっ!!」
ティムは憧れの英雄の名に敏感に反応する。ガルドが使っていた技ならば、自分でも使ってみたいティムは、話を聞く態勢を改めて、続きを促す。
その瞳は期待で満ち溢れていた。
ただいまのローザはリオンの服の中に潜り込んでいたところを、尻尾を引っ張られてリオンに吊るされている所だ。
「はい。皆さんは、英雄ガルドが炎を斬った、という話をご存知でしょうか。」
「もちんだぜっ!」
「はい。」
「ティムから聞いたわ。確か持っている剣が魔法を帯びた剣だったのよね。」
「今ではそう思っている人が多いようですが、そうではありません。あの技を使っていたのです。
ガルドは魔物との戦いの間、ずっと体が金色に輝いていたと言われていまし、事実、私も何回かに一度は炎を切ることも出来ます。賭けのような確率ですから、さすがに実践で使ったことはありませんがね。」
「なんだよっ、そうなのかよっ。いつかガルドの魔法の大剣を俺が見つけてやろうと思ってたのに、最悪だぜっ。」
「ティムは大剣が扱えるように大きな剣ばっかり使ってたもんね。」
「いいじゃない、魔法がかかってなくても、英雄の大剣ってだけで、凄そうよ。それなら何でも斬れちゃうかもしれないわ。」
「そうかっ!
ガルドの大剣だもんな。そうだな。
きっとそうだ!!」
ティムが魔法の装備に強い関心があるのはこの為だった。英雄ガルドへの憧れが、それに過剰な魅力を加えたのだ。
それが作り話と知って落ち込むティムだったが、ガルドの大剣はそれだけで価値がある。ミオの意見はティムの心に元気を取り戻した。
ただいまのローザは、構ってくれないリオンに拗ねて、鞄の中からコンペートを加えて出てきたところを、リオンに叱られている。
「話を続けますが、あの技は【氣】というものを使った技です。
氣は、動植物の隔たり無く、生物全てに最初から体内の深層に備わっている物で、その力を体の表層まで引っ張り出してくることで、その効果を発揮します。」
「じゃぁ、俺にも使えるんだな!!」
「僕にも?」
「それはわかりませんが、全ての人間が有していることに変わりはないので、可能性はあります。」
「絶対使えるようになってやるぜ。」
「いいから、続きを聞きなさいよ。」
「氣の扱いは難しく、表層まで引っ張り出すことすら困難で、八割以上の方たちはこの段階で断念します。
次に、表出させた状態を維持することが、さらに困難を極める為、使える人間が限られてしまうのです。
私は、表出させるのに時間がかかりますし、維持するのも数分しか持ちません。ゴメスやベロトワも似たようなものでした。
一説には、ガルドは一時間以上も氣をまとったまま戦っていたとありますので、歴史上、類をみない才能の持ち主だったのでしょうね。」
「やっぱりガルドだよ!
そうこなくっちゃ。」
「氣をまとうことによって、それだけで、身体機能が上昇します。体は金属の様に硬くなり力強く、それなのに素早く動くことが出来るようになります。」
「それでガルドは、たった一人でもあのドラゴンを退治することが出来たんだな!
納得だ!!」
「ティム、いちいち突っ込まなくていいから、少しは黙って話を聞きなよ。」
「そうよ。話の邪魔だわ。」
「わりぃ。」
英雄の謎が解けていくことで、ティムの心は躍っている。これで黙っていろという方が難しいのであるが、何度も話を遮られる方としては堪ったものではない。
ただいまのローザは、リオンが構ってくれないと知って、動けない慈愛神教徒達の上を飛んだり走ったりと、運動中である。
教徒達はとてつもなく迷惑そうな顔をしている。
「ははは。まぁ、気持ちは良くわかりますよ。私もガルドの話には心が躍ったものです。」
「親方もガルドの話を聞いて育ったのか!!?」
「ティムっ!
いいかげんにしなさいよっ!」
「いや、わりぃ。」
「でも、僕も気になるよ。ローレン国内の英雄の話をなんで、砂漠の民である親方が知っていたんですか。」
「そういえば、そうね。」
心躍らせるような少年時代に、ユリウスがガルドの話を聞いていた。確かにそれは気になると、ミオも答をせがみ始める。
「それはですね、ガルドが砂漠の出だからですよ。」
「あんっ!!?
俺はギブリス出身だって聞いてるぞ。」
「僕も。」
「ええ。ガルドが出生したのは、鉱山都市ギブリスだと言われています。しかし、育ったのは私と同じ、砂漠の国なんですよ。
戦争の為か、その話はいつの間にか消え去ってしまいましたが、私はそう聞いて育ちました。」
目からうろこな話に、ティムやリオン、幼い頃からガルドの話を聞いて育った二人はいまいち実感がわかない。なぜ、故郷を離れたのか、どうしてそれが敵国である砂漠の国であったのか。
がルドの謎が解明されてきていたのに、余計に新たに謎が出て来てしまった。
悩むリオンを真似して、頭を捻っているローザを見ている者は誰もいない。
「わっかんねぇ~なぁ。それが本当なら、なんで砂漠の国に行ったんだ?」
「そうだよね、僕もいまいち理解が出来ないな。」
「まぁ、私が生まれる前の話ですから、細かいことまではわかりませんし、本当に事実かどうかもわかりませんね。
それでは、話を戻しますが、私が使ったオーラブレード、あれは、武器を氣でまとい、それを斬撃と一緒に放出するという技です。
そのため、武器が触れずとも、そこから放たれた氣によって敵を切り裂くのです。
あの技の説明はこれでお終いですが、何か質問とかはありますか。」
今この場で知ったばかりの知識である。わからないことだらけで、何から質問していいかすらわからない。ティム達は必死に頭を悩ませている。
ローザはあくび中。眠たくなってきたのかな、疲れたのかな。
「あの、親方さんは、エーテルって知らないかしら?」
最初に質問したのは、以外にもミオだった。しかも、いつも一緒にいるティム達も聞いたことのない単語が出て来て、何が言いたいのかが気になって、ユリウスの返答を待つ。
「エーテル、ですか?
すいません、私は初耳です。
どういったものですか。」
「それが、私も最近知ったばかりだから、あんまり詳しくはないんだけれど、氣と同じように生物が体内に有していて、霊力や魔力の源になるらしいのよ。」
「霊力ですか、そうなると私には専門外の話ですので、お役に立てるかは自信がありませんね。
ちなみに、その話は誰から聞かれたのですか。」
「それはちょっと...ここでは。」
ミオはちらりと慈愛神教徒達を横目で見る。
リオンは内心、どこからの情報なのか見当はついていたが、ティムは、意味の分からない会話に興味を無くしたのか、ガルドの名前を呟きながら、妄想に浸ってニヤニヤ笑っている。
ティムのニヤニヤ顔を覗き込むローザ。
「そうですか。
それでは私に言えることは一つだけです
双方を知ればおのずと答えは見えてくるはずですよ。」
「なるほど、そうよね。やっぱりそうするしか方法がないわよね。
うんわかったわ。」
ミオは何かに納得したのか、憑き物が落ちたかのような、明るい笑顔を見せていた。
なんだかわからないけど、ローザもなんだか嬉しそう。
「それでよっ、教えてくれるんだろ。氣って奴。」
「ええ。そのつもりで話しました。ここでも簡単なことなら出来ますが、今から始めますか。」
「「「はいっ!!」」」
三人は、そろって返事をする。若者はいつも強さに貪欲だ。その力を正しく使えることさえ出来れば...。
ゴメスが願った想い、それだけは皆の心に残していてほしい。
ローザはリオンの膝上で疲れて眠ったようである。
―――
ティム達が捕えた慈愛神教徒を馬車に乗せて、王都への道を急いでいる頃、王城内にある、王の私室では、ベロトワ・ローレンスⅦ世が訪問客を迎えていた。
「失礼します。」
「これはこれは、サカン・ダールズ最高司祭殿、このような部屋に何用かの。」
ダールズ最高司祭は不快そうな面持ちで、国王の私室兼、書斎に入ってくる。その後ろには、まだ若い顔立ちの青年が付いてきており、その服装から高司祭の地位であることがわかる。
青年は、線が細い体付きで、のっぺりとした精白な顔立ちをしており表情を読み取ることが難しい。
青年はダールズの影に隠れるように立ちながら、手には、蛇が巻き付いた真っ黒な杖を携えていた。
「ふんっ、この部屋は窓すらないのですな。陰気な物で、気が滅入っておられるのではありませんか。」
「何も一日中この部屋の中に閉じこもっているわけではないからの、慣れれば大したことはない。
それよりも、最近は物騒での。窓から景色を眺めていようものなら、どこからか飛んで来た矢が頭にぐさりっ、なんてことにはなりたくないからの。」
「はははっ、全く、お互いに大事な物を抱える身としては、そんな目には遭いたくはありませんな。
しかし、そんな危険と隣り合わせの生活は老体には堪えましょう。そろそろ、次の世代に変わられてはいかがですか。」
「最近は騎士団や、近衛兵団の中でも碌なやつがおらんからの。なかなか、この席は譲れんわい。」
「人材不足に頭を悩ませられるのは、どこの組織も変わりませんな。何も戦うことしか脳のない人間だけでなくとも、国王に向いている者はいるでしょうに。」
「この国が魔物との前線を担う限りは、戦術に長けた人間が長になるのが望ましいと、ワシは思うがの。
ところで、後ろの青年はどなたかの、見たところ高司祭のようじゃが、その年齢でそこまで昇り詰めるとは、なかなかに優秀な者のようじゃの。
最高司祭殿がおっしゃる次期国王候補殿かの。」
「流石の国王ですな。お目が高い。
この者は、私の甥でして、非凡な才能を有しております。その才知を持ってすれば、野蛮なだけの魔物との戦闘など簡単にこなして見せるでしょう。」
最高司祭は国王に紹介する為に、一歩身を引いて、青年に挨拶を促す。
背中を押された青年は、バランスを崩して倒れ込みそうになるのを堪えて、王の前に出る。
「お初にお目にかかります。
名を、ラキード・モード・ダールズと申します。
今年で二十歳と成りました。
元伯爵、故モード・ダールズの息子で、亡き父に代わって最高司祭様に育てていただきました。
以後お見知りおき頂きますよう、お願いします。」
「そうか、モード伯の忘れ形見じゃったか。言われてみれば、面影があるの。
その歳で家督を継ぐのも何かと大変じゃろうが、最高司祭の協力の元、頑張っていくがええ。」
「有難きお言葉です。最高司祭の義父を目標に日々精進していきたいと思います。」
モード伯はダールズ一族の人間で、十五年前に、旅の道中で魔物に襲われ三十歳の若さで亡くなった。伯爵としては、なかなかに人望のある人間で、頭も良く、そのまま出世街道を昇っていくだろうと言われていただけに、その突然の訃報は民の心を痛めた。
「して、用件はそれだけかの。」
国王は、ラキード高司祭の紹介だけが最高司祭の目的ではないことは理解している。むしろ、それはオマケであり、本題はここから始まるのであろう。
「もちろん、それだけではありません。
私が王都を離れいる間に起きた問題の件でお話しを覗いたく参りました。」
「はて、何の事かの。
最近起こっておる問題というと、未知の怪物騒ぎのことかの。」
「そんな事ではないっ!」
あくまでも惚けようとする国王に、最高司祭は怒り、語気を荒げて、怒鳴り返す。
「失礼しました。
その事ではなく、国王が無断で釈放した魔術師の女のことをいっているのです。
異端審問は教会の責務に置いて行われること。いかに国王であろうとも、そこに異論を挟む余地など全くない!!
教会を蔑にする行為を聞いた時には、我を忘れて怒り狂いましたぞ!!
しかも、解放した異端者をそのまま家に帰して王都を自由に出歩かせているという話ではありませんか。
返答の如何によっては、教会は国政から抜ける覚悟で来させていただきました!!」
最高司祭も、国王の御前ということで、敬語には直したものの、その語彙は怒りに任せて叩きつけられている。
「ふむ。
ところで、彼女が異端者というのはどういった見解からきたことなのかの。」
最高司祭の乱れっぷりも気に留めた様子を見せずに、平常運転のままの国王。
最高司祭は、その態度が気に食わずさらに激昂する。
「それを国王に話す必要などないといっているのだ!!
この国の国教を担う慈愛神教の最高司祭は大陸全土に私しかいないのだぞ。
宗教裁判において最終判断を下すのは私以外にはおらず、その審判内容において、教会関係者以外の者が口を挟むことは出来んのだ!」
最高司祭は怒りのままに、国王の机に拳を叩きつける。
その振動でインク瓶が倒れ、書きかけの羊皮紙を黒く染めたインクは、そのまま絨毯へと滴り落ちる。
国王はそんなことにも全く動じず、憤怒する最高司祭の目をじっと覗きこんでいる。
「この件はの、高度に政治的な理由として、ワシの独断で判断させてもらったのじゃ。」
国王は、一度ため息をついてから、いつものゆっくりとした調子のまま、子どもに言い聞かせるような話し方をしている。
「何が高度に政治的な理由だ!
そんなもの、国王が教会に介入する理由にはならんわっ!」
「ワシも教会の教義にまで口を出そうとは思っておらん。
しかしじゃ、今回問題に上がっておる少女は十歳程度で、しかも誰が見ても一目でわかるような砂漠の民ではないか。
そのような少女に、辛い判決を言い渡しては、国内の同郷の者が黙っておらんじゃろう。
平時であればまだしも、今は未知の怪物騒ぎで騎士団の大半が国外におるのじゃ。そんな状態で、国内の砂漠の民に反乱でも起こされようものなら国家転覆の危機に陥ってしまうじゃろう。
今はギブリスとしか戦争を行っていない砂漠の国も、幼い同郷の為ならば、動き始めるかもしれん。
そういったことを起こさぬようにワシが独断で判断し、釈放したのじゃ。」
「しかし、あいつは王都の教会内部で、慈愛神を邪神だとのたまったのだぞ!
そんな人間を野に放しておくことなど到底許されることではない!」
「ほほう。邪神とな。
その根拠は何じゃったのかの。」
「そんな事はどうでもよいわっ!!」
思い通りに話が進まないことがうとましく、最高司祭の怒りはどんどん上がっていく。今では、顔に浮き出た血管まで見え始めている。
「少女は根拠の拠り所として、古ぼけた一冊の本を持って来ておりました。」
すでに、もう国王とは話たくもないといった様子の最高司祭に代わって、ラキード高司祭が国王に伝える。
「ほほう。
して、その本は今どこにあるのかの。」
「その時に謁見した司祭が、怒りのあまり燃やしてしまいました。」
「当然のことをしたのだ。
慈愛神教を貶めるような邪教の本など、この世には必要ないわ。」
「ふむ。
となると、証拠の品であった本が失われたのであれば、まともな裁判は行えんのではないかの。」
「そんなものは必要ない!!
奴は神を汚したのだぞ!
その事実だけで重罪に値する。
国外追放ではなく、公開死刑を実施し、つまらん妄想を吐く奴が二度と出てこんようにせねばならんのだ!」
「しかしのう、いらん闘争は避けねばならんしのう。
どうするべきかのう。
ラキード高司祭殿、何かいい手はないかの。」
国王に代案を求められたラキードはチラリと最高司祭の顔を仰ぎ見る。
サカン最高司祭は目線で鉄でも溶かせそうな形相で、国王を睨みつけている。
「それでは、一か月の間、兵士団に組み込み、王都周辺の魔物掃討の無料奉仕をさせてはいかがでしょうか。」
甥の言葉を聞いた最高司祭が、その内容を頭の中で吟味しているのか、ゆっくりとラキードに向き直る。ラキードを正面に捕えた時には、その顔に奇妙な微笑を浮かべていた。
「おもしろい。それならば教会としても良しとしようではないか。」
「しかしのう、まだ十の子どもに、そのような奉仕は向いておらんのではないかの。
せめて、王城内の清掃ではいかんかの!」
「その程度で許されるはずがないであろうがっ!
私は、ラキードの意見を支持する。この意見を通すのであれば、今回の一件はなかったこととしてやろう。
さぁ、国王よ、どうするのだ。」
「ふむ...。
仕方ないの、慈愛神教会に国政から抜けられては、負傷者の治療もままならん。
このあたりが手打ちかの。」
「はははははっ。
それで良いのだ。
国王は、正しい判断を下した。」
最高司祭は、ラキードを連れて、挨拶もせずに部屋から出て行く。
部屋から遠ざかっていくのを廊下に響く笑い声が告げていた。
「魔物掃討か...。
一か月間生き延びてくれればいいがの。」
国王は努力したとはいっても、得られた結果に皆が納得するはずがない。タドリから疲れて帰ってくるティム達の表情を想像して、深いため息をついていた。
――――
国王の部屋を後にした二人は、教会の最高司祭の部屋の中で、静かな夕食をたしなんでいた。
「ラキード、良くやったぞ。
やはりお前は頭が良い。本当の息子にしてやりたいぐらいだ。
それで、計画の方は順調に進んでおるか。」
「はい、最高司祭様。
四日後には国中の驚く顔が見れることでしょう。」
「そうか。
ふんっ、本当は民衆の面前で死刑にしたかったのだがな。
まぁ、結果は変わらぬのだから良しとするか。」
「そうですね...。
全ては慈愛の神の御心のままに。」
赤いワインを片手に肉を頬張るサカン・ダールズ最高司祭。様々な野望を胸に、今宵も夜は更けていく。




