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一族の楔  作者: AGEHA
第一章 二つの一族
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再会

アクローマの異世界空間転移により、魔界からノールたちは天使界へ移動する。


現れた場所は、いつものアクローマの宮殿前。


「戻って早速だけど、ノールちゃんは眼鏡くんを連れて私と一緒に来なさい」


アクローマがノールに語った。


「どうして?」


「眼鏡くんをそのままにしておくべきではないわ。それよりも、ノールちゃんは声を聞いたのよね? 貴方の今現在の能力がどれ程なのかをぜひとも確かめたいの」


「確かめるって? その、今は……」


手を繋いでいる杏里へノールは視線を移す。


「確認さえ終われば、眼鏡くんの記憶が戻るかどうか調べるから先に訓練場へ行きましょう。その間、眼鏡くんは別室にて待機してもらうから」


「うん……」


仕方なさそうにノールは頷いた。


「リサ、貴方は眼鏡くんを別室へ連れていきなさい。ああ、あとそれと……」


アクローマはリサになにかを耳打ちする。


それが、ノールには聞き取れなかった。


「分かりました、アクローマ様。さっ、杏里。私とともに来なさい」


「はい」


リサに手を引かれ、杏里はどこかに連れられていく。


記憶のない杏里は、天使に宮殿、雲がずっと地平線の向こうまで続く光景などに興味津々であまり話を聞いていなかった。


「それじゃあ、ノールちゃん。行きましょうか」


数分後、ノールとアクローマは訓練場へ着く。


以前、ノールが神聖魔法プラネットを発動し崩壊してしまった訓練場だが、新たに建造され新築に近い。


「ここで、なにをするの?」


「ノールちゃんが今現在どれ程の強さかを測りたいの。今から光体化をしてくれる?」


「光体化はしたくない。別に誰かを憎んだり、殺したいと思っているわけじゃない」


「そんなことどうでもいいの。それさえ終われば眼鏡くんのもとへ戻れるのよ? すぐに終わるのだから光体化しなさい」


「………」


無言で、ノールはアクローマを睨みつける。


その後、ノールは全身へ魔力を急激に高めた。


ノールの背には二翼の天使の羽が現れ、次に八翼へと変化する。


プラズマのような光の覇気が発せられ、ノールに強く魔力が集中した。


「調子はどう?」


「悪いよ、凄くイライラする」


「もっと、魔力を高められないの? 貴方ならもっと今以上の強さを有しているはず」


「これ以上は無理、制御できなくなる」


「そう、私も焦り過ぎたみたいね。光体化を解いて、ノールちゃん」


「うん」


光体化の状態から、人間化した状態へとノールは戻った。


「さて、これから忙しくなるわ。私たちの今後にも注力しないといけないし、新たに統一された魔界にも手を貸してあげないといけなくなるだろうから。私も天使界を統一しようかしら?」


「天使界はアクローマさんが女帝として統一しているんじゃないの?」


「この天使界だけはね。でも、もう一つ天使界は存在するの。魔界や悪魔界は一つしかないのに不思議に思ったでしょう?」


「特に不思議には思わないかな。色々と世界があるのは知っているから」


「反応がうっすいわね。少しはリアクション取ってみなさいよ」


「聞きたくないから話さなくていいよ」


微妙な笑みをノールは表情に浮かべる。


「もう一つある天使界の名を聖域というわ。簡単に言うと、私たちと違って神を信じている天使たちが住む世界ね」


「あれ、流した? そういえば、初めてアクローマさんに会った時に天使界では神を信じていないと言っていたよね?」


「ええ、そうよ。存在しない偶像でしかないものに願い、へつらい、祈るだなんて全く愚かだとしか例えようがないわ。というよりも、それらをしたらその時点で人生の完封負け。でも、なにかしら支えがないと生きていけない人だっている。それが聖域に生きる負け(かれら)よ。最近ずっと交流がなかったから私の方から会いに行かないと。貴方たち、祈っていてなにか得したのってね」


「そうなの」


こういう反吐が出る言い方が、ノールは大嫌い。


なにもそこまで言わなくともいいと思っている。


ただ、この発想が天使界のスタンダードだと理解もしているから文句は言わない。


「そういえば、眼鏡くんに早く会いに行った方が良いわよ」


「どうして?」


「もうすぐ、眼鏡くんの兄弟である桜沢有紗と桜沢綾香があの子を取り返しに来るわ。ふふっ、楽しみじゃないの」


「誰その桜沢有紗と桜沢綾香って? 杏里くんを取り返しに来るの?」


「貴方忘れているでしょ、眼鏡くんは記憶自体がなくなっている。初対面の貴方のことなんて向こうはどうでもいいと思っているよ? ここで手を打たないと、もう二度と会えなくなるかもね」


「そんなの嫌だよ!」


「やっぱり、眼鏡くんが大切なんだ。眼鏡くんはリサと一緒に宮殿の外にいるわ。別にあの二人は別室にいるわけじゃなかったのよ」


急いでノールは宮殿の外に向かって駆け出していた。





「ねえ、有紗さん。本当に杏里くんがいるの?」


「そうだよ、綾香。離れ離れだったオレたち兄弟が今日ようやく一緒になれるんだ」


「私、すっごく嬉しいな」


地平線の向こうまで雲で続く地面を歩きながら桜沢有紗、橘綾香、ルインの三人は宮殿へ歩んでいた。


桜沢有紗へ先程リサが電話をし、桜沢杏里を天使界で匿っていると知らせていた。


その流れで三人は天使界へと来ている。


「あからさまに怪しいと思わないの?」


疑っているのか、ルインは気が進まない。


事前にルインはアクローマがR一族派だと有紗に伝えられていたから。


「アクローマ様なら大丈夫。策を弄するような人ではないから。それに実際に杏里がいるかもしれないんだしさ」


「有紗さん」


「綾香、どうしたの?」


「雲が地平線の向こうまで続いていて、とても幻想的で綺麗よ」


うっとりとした様子で綾香は雲でできた大地に見惚れている。


「そうだね、綾香。この綺麗な天使界を君に見せたかったんだ」


「私、思ったの」


「なんだい?」


「空間転移で杏里くんのいるアクローマさんの宮殿まで行かない?」


綾香は歩くのが面倒になっていた。


「言われてみればそうだね」


早速、有紗は空間転移を詠唱し、アクローマの宮殿まで移動した。


空間転移をし、有紗たちがアクローマの宮殿前まで来ると二人の人物が目に入る。


それは、リサと少し落ち着かない杏里の姿。


「あっ、有紗様。お待ちしていました」


リサは有紗たちに気づき、声を出す。


「やあ元気だったかい、リサ。それと、君が杏里なんだね?」


「はい、ボクは杏里と言います」


「やっぱり、君が杏里なんだね!」


嬉しかったのか有紗は杏里に駆け寄り抱き締めた。


「オレは君の兄の有紗だ」


「えっ、あの」


「久しぶりね、杏里くん。実は私たち……」


綾香も駆け寄ろうとしたが、ルインに腕を掴まれ立ち止まる。


「ルイン?」


「あの子は、リターンを受けている。貴方と出会うのは今日が初めての状態になっているの」


「それってどういうこと?」


「そういう魔法が総世界にはあるの。でも、大丈夫。私もリターンを詠唱できるから。リターンをもう一度かけ直せば杏里は以前と同じ時を歩み出すわ」


「それなら、杏里くんは大丈夫なの?」


「ええ、でもどうしてあの子がリターンなんかを? 発動者と対象者の同意が事前に必要なのよ?」


有紗たちが杏里に出会えたことで会話していると宮殿の入り口から、なにやら急いで出てくる人物がいた。


それは、ノールだった。


「あら、ノールちゃん?」


綾香が気づき、ノールの名を呼ぶ。


「……ノール?」


突然、ルインの雰囲気が変わる。


強い邪悪なオーラが集束し、一瞬でルインは臨戦態勢へ移行する。


「ネーミングからして100%R一族じゃないの、確実に仕留めてみせる」


ノールの名に過剰な反応を示したルインは速攻でノールに襲いかかり、攻撃を仕掛ける。


しかし、ノールの顔を狙ったストレートのパンチは水人化により軽く躱され、水に変化したノールの身体を激しく水音を立たせながら素通りする形でルインは態勢を崩す。


「わあっ! なんなの!」


水人化によって躱したノールも、第六感的な反射に近い形で偶然に攻撃を躱せたのでとても驚いている。


「なに躱してんのよ。手間取らせるくらいなら早めに死んで」


態勢を崩していたルインは即座に態勢を立て直し、自らの全身へ魔力による電流を流す。


強力な魔力の電流で覆われたルインは、水人化した状態のノールを先程と異なり、片手で掴み上げる。


ルインも対水人の戦い方を熟知していた。


そのままルインは掴み上げた状態からノールを雲の地面へ叩きつけた。


叩きつけられはしたが雲の地面自体が柔らかいので、ベッドに寝かされるような感覚をノールは受けた。


ただ、ダメージはなくとも非常に不利な状態。


仰向けに倒れたノールにルインは馬乗りの形で乗ると殴りかかろうとする。

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