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一族の楔  作者: AGEHA
第二章 一族の意味
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新しい仲間たち 2

「こんにちは~」


綾香が楽しげに挨拶をし、リリアと手を繋ぎながらノールの部屋へと入っていく。


室内には、数名の者がいた。


リビングの高級ソファーにボーイッシュな格好の杏里が座っている。


その隣には同じく、ノールが座っていた。


にこにこしながら、綾香とリリアが入ってくるのを見ている。


高級ソファーに対面する形で置かれた同じ種類のソファーに、青い髪の綺麗な女性剣士が腕組みしながら深く座っている。


聖帝会の聖帝テリーその人だった。


テリーの背後には、着古した黒の上下スウェットを着用した緋色の瞳をした男性が立っている。


聖帝会№2であり、実質的な聖帝会の支配者アーティがいた。


斜め上の方を眺めながら、口元へ人差し指と中指を近づける格好をしていた。


煙草を吸うポーズだが、煙草を持っていない。


キッチンには見覚えのない、黒い綺麗な髪が特徴の若い女性が立っていた。


わずかにノールと似た面影があり、にやっとした感じの口元が特徴的なエールだった。


エールは手にケーキの乗った皿を持ち、スプーンでケーキを食べている。


「今日来れる人は皆集まったようだね」


ノールはソファーから立ち上がる。


「今日、皆に集まってもらったのはとても良い知らせを伝えたいからだよ」


そして、ノールはリリアの方を見る。


「リリア、こっちに来て」


「ええ」


ノールの呼びかけに答え、リリアが歩み出そうとした。


「えっ?」


綾香は不思議に思いながらも握っていた手を離す。


リリアがノールの隣まで来ると、ノールはリリアの肩に手を置いた。


「もうこの人については皆分かっているよね? R・ノールコロシアムにも出場しているエアルドフ王国のリリア姫だよ。今回、リリアを歩合制傭兵部隊リバースに正式加入したの」


「ええっ!」


綾香が驚愕している。


声には出さないが、ルインも似たような反応を示す。


「ど、どうして、リリアちゃんを?」


少し間を置いてから、綾香は言葉を発した。


「リリアは元々スイーパー所属の傭兵で、R・ノールコロシアムでの活躍から杏里くんがスカウトしたの」


「杏里くんが? そんな……どうしてこのタイミングで……」


普通に綾香は落ち込んでいる。


「なにかあったの?」


「ううん、別に……なんでもないの」


綾香は残念そうな表情でリリアを見ている。


この歩合制傭兵部隊リバース内に、各々の勢力の厄介事を持ち込むのは禁止されていた。


当然、リバース構成員の一人となったリリアを桜沢一族派に引き込むのは不可能。


綾香がセフィーラにしているよう下手に出て、たまに力を貸してほしいとお願いするぐらいしかできなかった。


以前、セフィーラがリリアに話していた綾香をなんとかする方法はこれだった。


「とりあえず、紹介は終わったからあとは適当に仕事を受けてほしいな」


ノールの手には、いつの間にか依頼書の束があった。


空間転移を発動したらしい。


依頼書を取りやすいよう四人がけのテーブルの上に置く。


「じゃあ、まずはオレが」


テリーが高級ソファーから立ち上がると、最初に依頼書を手に取り眺めていく。


ぼーっとしながら、黒の上下スウェット姿のアーティもあとに続く。


「あっ、こいつ」


とある依頼書をテリーが、煙草を吸うポーズのままのアーティに見せる。


「ああっ?」


ニコチンが切れかけているのか、アーティの反応が悪い。


「なにをイライラしてんだよ、あとで煙草の箱ごとくわえさせてやるから覚悟しとけよ」


「あほか、箱のまま吸ったら酸欠になるわ」


「なあ、こいつを見てみろよ。オレの神殿に礼拝しに来ていただろ。いやあ、悪党だったとは露とも知らなかったなあ」


とにかく白々しくテリーは語っている。


アーティに見せた依頼書に載っている男性の顔は明らかに悪人面で、行った犯罪も残虐非道。


「こいつは駄目だな、今すぐにでも殺さないとなあ。でも、案外信心深いなあ」


「信心深いのか、この面で? はっはっは、世も末だな」


依頼書の男性の顔を指差しつつ、アーティは笑っている。


「まあ信心深くなるのも当然のことだわ、なんせここの神様はとても良い奴だからな」


「そうそう、そうだろう? オレの神殿にお気持ちを持って来させて、少しの間泳がせてみようぜ。もしかしたら、太い客になってくれるかもしれないしなあ」


にやにやしながら、なにかを二人で決めている。


どうやら、どちらも悪党だった。


「ノール、杏里。この依頼はオレに任せろ」


「いいよ」


今のを見ても、ノールは普通に笑顔で話している。


「もしも悪行を止められなかったら、ボクが代わりに殺すからね」


杏里に闘気が漲っている。


全傭兵中、杏里だけは自らを正義の味方と信じて疑わないからこそできる行動。


相手が桜沢一族一派の者でも、聖帝会の者でも悪事を働けば、一人で普通に攻撃を仕かけていた。


「分かった分かった」


非常に軽く流し、テリーはリリアの前まで歩む。


「やあ、初めましてリリアちゃん。オレは聖帝のテリーだ。金の用立てがあれば、うちの組からリバース用の利率で全面バックアップしちゃうよ」


「私は誉れ高きエアルドフ王国の姫です。金貸しに頼るなどありえません」


「そうかな、頼る時がいずれ来ると思うよ? 隣の国を買いたいとか、その隣の国も買いたいとか。その場合はうちの組を国教にさえしてくれれば、無料で世界征服まで全面バックアップしてあげるから楽しみにしてくれてもいい」


「テリー、ちょっといい?」


リリアに絡んでいるテリーにノールが呼びかける。


「ん、どうした?」


「リリアのエアルドフ王国がある世界はR・クァール・コミューン内だよ」


ノールの言葉に、テリーは肩透かしを受けたような反応をした。


「駄目じゃん、それじゃあ。リリアちゃん自身が担保になってくれるなら、でしか方法がないな。今の話は忘れてくれ」


「ええ」


「ところで、ノール。歓迎会はどうする?」


「あー、そうだね。ボクはすっかり忘れていたよ」


「だったら適当なタイミングでスケジュールを合わせる感じでいっか。じゃ、お疲れ」


軽く手を上げたテリーは空間転移を発動し、アーティと一緒に姿を消す。


「私たちは……今回、仕事をパスするわ。気分が乗らないの」


綾香とルインは、リリアを桜沢一族派に加入できなかったのが正直面白くない。


「じゃあ、コロシアムの見回りやって」


「それは頼まれなくとも毎日やっているわ」


「そうだったね」


桜沢一族派を増やすため、綾香が毎日コロシアムで人材確保を行っているのをノールも知っていた。


知っているのにわざわざ提案していたのは、ノールなりの優しさから。


「私たちは帰るね、シス……ノールちゃん。また、来るから」


空間転移を発動し、綾香とルインは消えた。


「やっぱり、あの二人も正体を知っていたんだ。名前を呼ぶ時、普通にミスっていたし。よっぽど、ショックだったのかねえ」


キッチンにいたエールが持っていた食器をキッチンのシンクに置く。


使っていたのに洗おうとはしない。


「シスイ、リバースの面子の前ではもう姉貴の姿にならなくていいよ」


「でも……」


少し困った顔をし、リリアやセフィーラの方を見る。


「なんなの、叔母さんの言うことが聞けないの? 姉貴がそんなこと教えた?」


「そうではありません」


エールが文句を言うと、ノールの姿からシスイへと変化する。


シスイに対して自らを叔母と語ったので、この女性がコロシアムでゴスロリ風の姿をしていたR・エールだとリリアはようやく認識した。


「やっぱり、本物のノールさんじゃなかったんだ……半信半疑だったけど」


ノールからシスイへの変化を見たセフィーラは、なんとも言い難い表情をしていた。


残念さに寂しさ、心配と理解ができない気持ちなど色々()い交ぜになった感情が出ている。


「僕は母さんの姿に変化できます。母さんが今でも変わらず生活していると他の者に知らしめるために変化を行っていました」


「その、ノールさんなら……」


微妙な感じでセフィーラがリリアを指差す。


「多分、違うと思うの。ボクが魔力を解析したから分かるんだ」


杏里が話す。


「でも、重要な事実を知っているのは間違いない。リリアだけがノールに会えて、ノール流を会得している。誰もどこにいるのかさえ今まで分からなかったのに」


「実は良い話があるんだよね」


そこで、エールが話す。


「アタシも代表取締役をやっている株式会社バロックを知っているよね? 一度ウチの会社でさ、リリアを隅々まで調べてみようと思うの」


「リリアの魔力を解析したから……」


「たく、これだから魔力脳は困る。兄貴は現代科学を馬鹿にしているでしょ?」


「馬鹿にはしていないけど……」


なにやら杏里の歯切れが悪い。


いくら能力値が高くとも、こういった専門的なものにはからっきしで上手く対応ができていない。


「いいことを教えてあげるけど、そんなんじゃあ兄貴たちではいつまで経っても姉貴を見つけるだなんて無理。典型的なチャンスを逃しちゃう人」


「うーん」


少し杏里は微妙そうな表情をする。


よく分からない技術でリリアを隅々まで調べるのは、流石に自分の一任では決められない。


「チャンスを逃がしちゃう系の人なの?」


「どうしよっかな。リリアはどう思う?」


先程同様に微妙そうな表情で杏里は、リリアに話を振る。


杏里の対応が、とても甘い。


自らを慕い支えてくれているからではあるが、兄弟のうち末っ子だった杏里は妹ができたような気がしていて、こういうエールの優しさに弱い。

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