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一族の楔  作者: AGEHA
第二章 一族の意味
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生活レベル

再び、新居のリビングへ戻ってきたリリアとセシル。


どちらも疲れ切っていた。


普段全く接する機会のない金融商品の契約をし、長々とその対応をしていたせいで。


「なぜか色々な契約をしましたね。あれは一体なんだったのでしょうか?」


「多分、分からなかったと思うから資産の管理は私に任せて。これからも能力向上だけに集中していて」


「ええ」


セシルがそう話してくれて、リリアは内心ホッとしていた。


「任せて」


セシルは再び同じことを語る。


実は、セシルも内容がよく分かっていない。


「なんかあったらまた私があの銀行へ行くから」


「そういえば、あの銀行は……」


「悪名高き桜沢グループの悪徳金融、極楽銀行よ」


「あの……本当にそのようなところで契約をしても良かったのでしょうか?」


「言いたいことは分かるけど、あの銀行は利用者に最高レベルの対応をしてくれるわ」


「なら、いいでしょうかね」


あまり金額については考えたくないリリアは面倒臭くなり、思考停止していた。


部屋の隅には、まだ二つのアタッシュケースが残っている。


それは、リリアのファイトマネー分。


ランキング100位以内の者との戦いは勝利さえすれば無条件で二億のファイトマネーを得られる。


リリアの分だけで今後生活をしていこうと銀行へ行った際に二人で決めていた。


「次は、この室内がどんな感じなのか見ていきましょう」


「そうですわね」


二人が見て回った結果、マンションの室内は部屋数が合計七室。


エアルドフ王国のリリアの自室並みに広いLDKを中心に、バルコニー側が全面ガラス張り、残りの周囲を六部屋が囲んでいる。


六部屋は寝室、納戸、ウォークインクローゼット、浴室やトイレなどの水回り、そして残りの二部屋は自由に扱えるようになにも置かれておらず、片方は完全防音の造りとなっていた。


換金所職員が部屋へのアクセスは空間転移でのみと語っていた通り、このマンションの部屋には玄関が存在しない。


「すっごく広いね、この家。ランキング100位になるだけでここまで優遇されるだなんて」


「そうですね、私もこの部屋ならありがたく頂戴します」


意外とリリアも上機嫌。


このマンションは、いわば自らの力で勝ち取った証明である。


リリアの性格上、それを誇らないはずがなかった。


「それじゃあ、リリア。ご飯を食べに行きましょうか。もう四時過ぎになっちゃったし」


魔力体のリリアと異なり、セシルは空腹。


朝からリリアが心配で心配で食事も喉を通らず、リリアが戦いに勝ってからもあまりの忙しさに食事を取れていなかった。


「でしたら、セシルさん。こちらをどうぞ」


「なに?」


リリアは先程受け取った鍵が入った小さな箱を腕から取り出す。


体内に魔力の空間を作り出せる魔力体らしい物の収納法だった。


「そういえば、玄関もないのに鍵が必要なのかしら?」


「この鍵は空間転移を行った者が、この部屋に辿り着くための媒体のようです。こちらをご覧ください」


リリアはセシルに鍵を見せる。


鍵にはリリアの名前が刻印されていた。


「小箱に入っていた説明書に、この鍵に魔力を込めれば魔力を込めた者の名前が刻印されるとありました。セシルさんもこの鍵へ魔力を込めれば、私がいなくともこの部屋に戻ってこれます」


「へえ、そうなんだ。どういう技術を使っているのかな? ちょっと貸して」


「どうぞ」


セシルはリリアから鍵を受け取った。


「あっ、ホントだ」


魔力を込めてからわずかな時間で名前が鍵に刻印された。


「これで食事へ行けますね」


「説明されてなんかおかしいと思ったのだけど、私だけで食事へ行くと思っていない?」


「私もですか?」


「元々そのつもりだけど」


「なんだ、そうでしたの。では、今から食事へ行きましょうか」


二人は一緒に食事へ行く。


その最中、セシルは非常に嬉しそうに銀行での契約で手に入れた黒いカードをひらひらさせていた。


とてもお金を使う雰囲気のあったセシルだが、中流階級程度の人が訪れそうな料理店で食事をし、黒いカードを支払いの際、これ見よがしに見せつけてから店員に渡している。


「このお店はとても私の感性に合った良いお店なので、また来店させて頂きますわ~」


とても上機嫌でセシルは対応している。


店員も他の客よりも非常に愛想良く対応していた。


結局のところ、お金持ちとなった自らを見てほしい欲求がセシルのうちに渦巻いているだけで、実際にお金を多量に消費したいのではない。


非常に長い間、セシルは赤貧洗うが如しの極貧生活を送っていたせいか、お金の気前の良い使い方が分からない。


よくセシルがお金を使いたいようなことを語っているが、欲求に対して無意識のうちに急ブレーキをかけてしまうせいか、行動が伴っていないのである。


「余程、このお店が気に入ったようですね」


料理店を出てから、リリアが尋ねる。


「そうね、とってもお金を使っちゃったからね」


そう、セシルは話しているが使った額は二人でニ万程度。


一般的なメニューに、ちょっと高級なお酒と、デザートとお土産を足してようやく辿り着いた感じ。


「でしたら、またこのお店へ来ましょうか」


「ぜひ、そうしましょう。私ね、こうやって馴染みのお店を持つのが夢だったの」


嬉しそうに語るセシルに、リリアは軽く頷いた。


リリアには全くピンと来なかったが、今セシルは貧乏エピソードを話していた。


境遇が真逆の二人はいくら仲が良くなっても理解できない点が多い。


そして、二人は空間転移を発動して新居の自宅へ帰宅した。

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