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一族の楔  作者: AGEHA
第二章 一族の意味
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三人の若者

仕事に取りかかるため、拠点となる住居を探していた三人。


しかし、夕暮れが過ぎ、辺りが暗くなり始めても拠点となる住居の提供者を見つけられない。


国の中心部である城の周辺から探し出したのにもう街外れの辺りまで来ている。


「この国は酷いな。なかなかのものだよ、こんなの久しぶりだもん」


ぶつぶつと、スクイードは文句を語っている。


領民に露骨に避けられているのが腹立たしい様子。


「どうしますか? もう夕闇ですが……」


数時間歩き通しで、それなのになんの情報も得られず、ただただ無為に過ごすこの時間が嫌で嫌で堪らない。


今までエアルドフ王国のお姫様として豊かに暮らしていたリリア。


初めて庶民の働き方を体感し、厳しさを実感していた。


「うーん、今日はもう帰ろっか」


「ギルドへですか?」


「そう、これは避けたかったんだけどね。さんざ聞き込みをして回ったんだ。相手さんにもオレたちのことはもう伝わっているはず。となれば、今日中に仕かけてくると考えるのが妥当。なのに、オレたちはギルドに帰っちゃうんだから一体ここはこれからどうなるのやら」


スクイードは随分と他人事のように語る。


「以前もこのようなことがあったのですか?」


「そりゃあるよ、こういう風に一定の悪条件が重なるとたまにね。前のところは夜襲があったみたいで、依頼者が死んだからそこで依頼は終了」


「なーんだ、そういうことは前もあったのね。だったら、それならそれでもういいから帰りましょうか」


帰れると分かり、セシルは嬉しそうにしている。


依頼人が死んだとしても、セシルにとってはどうでもいい。


「そうだねえ、本当は二人に実戦を経験してもらいたかったのに。こういうこともあるんだってのを、まさか先に教えることになるとは……」


話している途中で、スクイードは話すのを止め、どこかを見つめる。


「?」


リリア・セシルはスクイードの見ている方向に視線を送る。


街外れの一角で、街の方を眺めているフード付きローブをまとった魔導士風の少女がいた。


「あの子はどうかな?」


「聞いてみますか?」


「なにも聞かないで、もう帰りましょうよ」


スクイードの問いかけにリリア・セシルは真逆の返答をする。


「あの」


先程、街の方を見ていた魔導士風の少女がすぐ傍に来ていた。


一定の距離があったのにいつの間にか傍にいたため、リリアとセシルは驚く。


「どうしたの?」


スクイードが優しく話しかけた。


「貴方たちがギルドから来てくれた人、だよね?」


「もしかして、君がこの国からもう一つの依頼を出してくれた人?」


「そうよ、貴方たちを待っていたの」


「ああ、それは良かった。実はね、この国に滞在するための拠点を探しているんだ。君のところで滞在させてくれない?」


「んふふっ、それって本当に言っているの?」


なにも笑いどころがない普通の話なのに、魔導士風の少女はとても笑っている。


「いいよ、来られるのならね」


「ありがとう。それじゃあ、リリア、セシル。今日の拠点は決まった。ギルドへ帰る必要はなくなったよ」


「そっかあ、やっぱりなあ」


セシルは結局帰れなかったので文句を言っている。


「さあ、こっちよ。ついてきて」


魔導士風の少女に案内され、街を出て石畳がどこまでも続く街道を進む。


「見て、あれ。あれがエレメント」


魔導士風の少女が街道から少し離れた草地を指差す。


街からそう離れた場所でもないのに、魔物の姿が見受けられた。


四足歩行の狼を一回り大きな姿にしたような獰猛な獣。


なぜか魔力を有しており、一般的なモンスターよりも性質の悪い生物。


「あれがね、いると、国の皆が大変なの。貴方たちで倒せないかしら?」


「オレたちが倒すのはエレメンタルマスターだけだよ、エレメントは契約外」


「あの王様、本当にケチだね」


「多分あいつはオレたちに提示した金額を全額払うつもりがないみたい」


「次の依頼を引き受けるのはいつ頃?」


「もうオレは受けたくないな。こういうのは普通同じ担当のギルドが引き受けていくものだけど、オレが拒絶するとなれば他のギルドも受けようとはしないだろうね」


「そう……なの……」


少女はとても寂しそうな顔をする。


「どうする? 順番、変えようか?」


「いえ、いいの。もうそれで」


「それなら良かった」


「……さあ、私の家に行きましょう。いっぱい美味しいご飯を作ってあげる」


寂しそうな笑顔を見せる。


「美味しいご飯だって。やったじゃん」


そんなことはどうでもいいかのようなスクイードのとても嬉しそうな反応。


リリアの目には不快に映った。


「本当? この国で一番優しい人なのかも。早く行きましょう」


リリアと異なり、セシルは素直に喜ぶ。


今日の食事代がロハになり、嬉しいらしい。


全く、この人たちは……


言葉に出さなかったが、リリアは流石に呆れている。


それから四人は街道を歩き、途中街道から獣道のような脇道に逸れる。


「ねえ、ちょっと。本当にこんなところを行くの?」


なんとなく獣臭い道にセシルは拒否反応を示した。


勿論、それはリリアも。


「ええ、こっちよ」


「ええ……」


「それじゃあ、行きましょう」


「うん」


嫌々ながらも再び少女へついていく。


その後、ちょっとした山の麓の小屋に着いた。


小屋へ辿り着く途中でも、ちらほらとエレメントがいた。


だが、エレメントは接近してきても威嚇や攻撃を行う様子がない。


ここまで来るとなんとなくリリアもセシルもこの魔導士風の少女がどういう存在なのか分かってきた気がした。


「さあ、着いたよ。入って」


少女は小屋の扉を開き、小屋へ入りやすくしてくれた。


「ありがとう」


なんの警戒もなしに、スクイードは小屋に入っていく。


それにリリア・セシルも続いた。


「おおっ、貴方が依頼したダークナイトか!」


小屋の中にいた二人の若い男性が同じ反応をする。


今までテーブルの椅子に座り談笑をしていたようだが、小屋へ現れたダークナイトの存在に驚き、椅子から立ち上がっていた。


「こんにちは、依頼を受け賜りましたスイーパーのダークナイト、スクイードです。もう一つの依頼者はそちらのお嬢さんと、貴方たち二人でよろしいですか?」


「はい、そうです」


二人の男性の片割れが話す。


「外にいるトゥーリと、こっちのステン、あとオレはクルスと言います。このオレたち三人で依頼を出しました」


「君たち、三人ね」


「はい」


幼い感じがまだ残る若者たちだったが、返答した後に目の色が変わり、すっと自らが一番動きやすい位置に移動する。


戦闘を行う者特有の目つき、明らかに玄人の動き。


臨戦態勢に移行していた。


「ご飯、食べましょう?」


魔導士風の少女、トゥーリが小屋に入り、一言だけ話す。


「ああ、ご飯だね。オレも手伝うよ」


スクイードは先程のステンとクルスの動きを見ていたはずだが、普通に小屋の隅でダークナイトの甲冑を脱ぎ出す。


普段のビジネスカジュアルの服装をしたスクイードに戻った。


甲冑を着込んだ上で相当歩いていたのに、スクイードは汗一つ掻いていない。


「ねえ、見てあの人。面白いよね」


トゥーリはステン、クルスに楽しげにそれを見ながら話している。


それで警戒が取れたのか、ステンとクルスは先程と同じような普通の若者の雰囲気に戻った。


「さあ、貴方たちはお客さんよ。こっちに座っていて」


トゥーリがリリア、セシルにテーブルの椅子に座るよう促す。


「ありがとう」


二人はテーブルの椅子に腰かけた。


四人がけ程度のテーブルだったが、そこにステンが椅子を二つ持ってきて六人で座れるようにした。


トゥーリとクルス、スクイードで夕食を作っている間、二人と一緒に椅子に座っていたステンが話しかける。


「君たち、今日は仕事しないの?」


「ええ、今日はもう夜更けですので。それにスクイードさんもやる気がないようです」


「そうみたいだね、甲冑を脱いでいたし。それじゃあ、仕事は明日する予定?」


「できるだけ早く仕事を終わらせたいですね」


「そうだね、頑張って」


ステンは楽しげに頬笑む。


「ステンさん、でした? ステンさんは私よりも若く見えますが、お年はいくつくらいかしら?」


自らよりも若そうだったステンに何気なくリリアは尋ねる。


「18……」


「私よりも2才若いの?」


「18才の時を境に年は数えていない」


「私は15よ~」


料理をしながら、トゥーリも話す。


「オレは16くらいだったような?」


クルスは適当に数値を言っている。


全くこの人たちは……


随分適当な感じで話しているのが、リリアは気にくわない。


時間が経ち、料理が完成した。


六人いるためか、料理は非常に多く、明らかに食べきれない量があった。


「残ったら、明日も食べましょう」


嬉しそうにトゥーリは話す。


そんなことをお構いなしに結構がっついてスクイードは夕食を食べていく。


この人はこういう人だったんだ、とリリアは思った。

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