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一族の楔  作者: AGEHA
第二章 一族の意味
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知らない世界

占いにより先を見通せたリリアは、市場にいるであろうセシルを探しにいく。


リリアはセシルが傍を離れたことにも気づいていないと思っている。


内心そう思いながら、セシルと別行動を取った場所まで歩いた。


特に問題なく同じ場所で、セシルは市場のものを見て回っていた。


辺りを見回す素振りもなく、リリアが近くにいないことに気づいていない。


「セシルさん」


「あら? 欲しいものが見つかったの?」


「いえ、そうではありません。占い師を見つけ、今後の道筋になる事柄を聞けました」


「そっか、恋愛相談ね」


「違います」


あの占い師アルテアリスと同じ思考回路をしているのではないかと少し疑ってしまった。


「にしても、偶然ねえ。占いをしてくれる人がいたなんて」


「貴方がこの市場にいると話したのではないですか」


「んー、そうだったかしら?」


自ら場所を語ったのにもかかわらず、教えた記憶がないらしい。


全く、この人は。


そう思いつつも、占いの内容をセシルに教える。


「セシルさん、これから私は魔導剣士修練場と呼ばれる場所に行こうと思います」


「どうして、そんなところに? まさか……姫騎士にでもなるの?」


「はあ? まあ、そうなのでしょうか?」


聞き覚えのない兵種に、リリアは軽く流す。


「私は今以上に強くなるため、魔導剣士修練場へ向かいます。セシルさんはどうしますか?」


「私も行くに決まっているじゃない。それに私は魔導剣士修練場がどこにあるのか知っているからね」


「そうなのですか? では、セシルさん。案内をお願いしたいのですが……」


「ええ、いいわよ。どうせ、2・3秒で着くし」


「2・3秒?」


「空間転移の発動よ」


その言葉の瞬間。


周囲一帯の風景が切り替わっていく。


いつの間にか、リリアとセシルはどこかの施設の門前にいた。


「えっ」


リリアは周囲を見渡す。


今までいた市場とは全く異なる風景。


そもそもリリアの暮らす世界とは全く別の近代的な場所。


門も木製でなく、鉄製で作られた引き戸のタイプ。


その格子の間から遠目に見えるビルや、宿舎の棟のような建物がリリアの目に映る。


文化レベルも生活レベルもなにもかにもが異なっていた。


「……えっ?」


周囲の全てが一瞬で変わったため、リリアには一切理解できず、セシルの顔を見ていた。


「さあ、魔導剣士修練場へ着いたわ」


セシルはリリアの手を取り、鉄製の門の隣にある魔導剣士修練場へ続く通用口側の扉を開き、施設内へ入ろうとする。


リリアの反応を見ているのにもかかわらず、現状の変化をセシルは一切教えない。


それは自らを頼らないと全てが駄目になってしまうように仕向けたかったから。


実際に現状ではリリアの力だけで元の世界に戻ることもできず、セシルに全てを頼るほかない。


たったこれだけで、自らへの信頼度も爆上げ間違いなしと、セシルは見ている。


そうすれば、リリアとより親密な関係になれると浅はかにも思い描いた結果、あえて説明などを省いた。


「………」


セシルに手を引かれ、リリアは言葉もなく周囲を心配そうな表情で見渡しながら、魔導剣士修練場施設内へと入っていく。


普段から強気なリリアでも全てが一切分からない状況になったのだから、弱気な反応になるのも当然だった。


二人がまず向かったのは、入口近くの守衛室。


空間転移で移動は簡単にできても、セシルもリリア同様に魔導剣士修練場内部へ入ったのは初めて。


「こんにちは」


守衛室の窓口にセシルが声をかけると、少し小太りの守衛の男性が椅子に座っていた。


「はい、こんにちは」


読んでいた新聞を畳み、話しやすいように立ち上がってから答える。


「新しく魔導剣士修練場に加盟したい人ですよね?」


「ええ、そうよ」


「ちょっと待っていてくださいね」


守衛は近くの棚から分厚いファイルを取り出し、少し眺める。


「あのー、ちょっと言い辛いのですけど、今日から加盟するとですね、この魔導剣士修練場で修練を積むまでにかかる期間は約五年ですね」


「えっ?」


「最近とんでもない人が現れちゃったからねえ。と、言ってもそれは十年くらい前だけど。その人が現れて以来、こういうウチみたいな効果的に修練を積める場所はどこも満員状態なんですよ」


守衛は話しながら分厚いファイルを閉じ、棚へと戻す。


「でも一応、加盟自体なら事前にすることができるからその後は誰かのキャンセル待ちになりますね。キャンセル待ちについてはその都度の抽選になるから、もしかしたら今日に辞退者が出て、明日にはここで修練が積めるとかね。どうです、加盟はしますか?」


「えええ……どうする、リリア?」


もう面倒だから止めようかと、セシルは言いかける。


だが、割と落ち込んでいるリリアの姿を見て、そうとは言えなくなった。


「あら、こんにちはー。新しい加盟者の方?」


二人の背後から男性の声がする。


リリア・セシルが振り返ると、やけにイケメンな顔つきの男性がいた。


修練が基本の場で、ビジネスカジュアルの服装を着こなす男性は魔導剣士修練場の内部にかかわりがある様子。


「確か今は満員のはず。そうでしたよね、守衛さん?」


「ええ、会長。その通りです」


「それでなのですが、お二人さん。良い話があるのです、もしよろしければ聞いていきませんか?」


「是非お願いいたします」


結構食い気味にリリアが話す。


進退窮まっているリリアは藁にもすがる勢い。


「君たち、この世界の出身者ではないね? その服装を見れば、すぐ分かる。じゃあ、僕について来てもらっていいかな?」


男性は魔導剣士修練場内のとある建物へと向かって歩き始めた。


建物は複数の棟がある修練場内で最も大きなビル。


そこへ三人は入っていく。


建物一階はフロア全体が憩いの場になっており、十数人程の加盟者が各々自由な時間を過ごしている。


そこを素通りして奥にあるエレベーターフロアへ行き、三人はエレベーターに乗る。


「降りる場所は最上階です」


男性はエレベーターのボタンを押し、最上階へ。


最上階へ着くと、フロア内はホテルのような造りで入口の扉が多数見受けられた。


「ここ、僕らの在籍しているギルド専用のフロアなんです。もし君たちが良ければ、僕らの組織で活動してみませんか? 参加してくれるなら自由に使える部屋を用意するし、魔導剣士修練場で鍛錬を積めるようにもします」


「ギルド?」


「傭兵稼業のことです。この魔導剣士修練場で鍛えぬいた大抵の者たちはそういった類の仕事を請け負い日々活動します。まあ、僕らの組織に魔導剣士修練場で鍛錬を積んだ後に所属してくれた人はいませんが」


「ギルドに所属すれば、この魔導剣士修練場に加盟できなくても鍛錬が積めるのですか?」


「そりゃあもう、フリーパスだね。というよりも所属したのならできるだけ毎日欠かさず鍛錬を積んでもらいたいかな? 休みを考えるのはとりあえず二の次ぐらいにしてさ」


「セシルさん」


わくわくした感情を隠せないリリアがセシルに目を向ける。


「貴方の好きなようにするといいんじゃないの?」


「分かりましたわ」


別にセシルに拒否されても最初から答えは決まっていた。


「貴方のギルドに入りたいの。構いませんね?」


「よし、決まりだ。これからオレたちは同じギルドの仲間同士だ。ギルド内を案内するから、おいで」


男性の話し方が若干変わる。


「そういえば、自己紹介がまだだったね。オレは歩合制傭兵部隊リバースの下位組織の一つ、スイーパーの統領スクイードです、よろしくね」


「スクイードさんですか、よろしくお願いいたします。私はリリアと申しますの」


「私はセシルよ」


「リリアさんと、セシルさんですね。では、このフロア内に誰かしらはいると思うので、そこに行きましょう」


スクイードの指示のもと、二人はスクイードについていく。


「ここなら誰か居そうかな?」


スクイードがとある部屋の扉を開く。


扉を開いて室内に入ると、室内は普通の会議室だった。

登場人物紹介など


スクイード(年令75才、身長177cm、魔族の男性、出身はエリアス王国。まとめ役として立ち回るのが得意で優しい性格。魔導剣士修練場の会長職についており、スイーパーというギルドの統領。兵種は魔導剣士でもあり、ダークナイトでもある。戦い方は相当ダーティなもので正々堂々など鼻で笑うタイプ。とても酒に強い)


スイーパー(傭兵ギルドの一つで、所属数は5名。リリア・セシルが加入すれば合計7名となる。悪質な仕事でも対応するため、加入者が非常に少なく、どちらかといえば嫌われている)

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