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一族の楔  作者: AGEHA
第一章 二つの一族
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新しい味方

黒塗りの屋敷にノール・杏里は戻ってきた。


いつものように、自室リビングへ戻ってきた二人はとりあえず各々の定位置へ。


ノールはアウトレットソファー、杏里は高級ソファーに腰かける。


「昨日今日で色々あったね」


一言、ノールはつぶやく。


杏里の介護から始まり、かと思えばR一族たちを打ち倒して、総世界の大戦争は無事に終結した。


久しぶりにテリーと会えたら杏里の体調が良くなったのに、急に弟とは不仲になり、仕方なくあんまり会いたくない人と手を組んだ。


そこへ、自室の扉がノックされた。


「誰かな?」


アウトレットソファーから、ノールは立ち上がろうとする。


だが、その前に扉は開いた。


「姉貴」


エールが部屋に入ってくる。


部屋の扉を閉めていなかった。


「あっ、エール。大丈夫だった? なにもされていない?」


「アタシは別に大丈夫。特になにもされなかったから」


ノールが座るアウトレットソファーに、エールも腰かける。


「でも、数人だけ禁止令を解かされて生き返させられた奴らがいる。それをアタシ自らにさせたんだよ、ほんと最悪。アタシが生き返させたのに長の連中は文句言ってきたんだ。だから姉貴を連れてくるって言ったら、あいつら小型犬みたいに静かになっていたわ」


「エール、扉が」


「お客さん来ていたよ」


「誰?」


「やっ、来たよ」


扉の外に、ルミナスの姿があった。


「良い妹さんだね、ノールよりもとても良い子。私もこういう妹が欲しかったなあ」


「姉貴、あのお姉さんが屋敷に住みたいんだってさ。アタシ知っているよ、あのお姉さんは魔界の邪神なんだ。人脈は大切にした方がいいと思う」


丁度、エールが帰ってくる際にルミナスも屋敷の前にいた。


家で待つとは言ったが、ミネウスに予定ができたため、暇になったルミナスがノールの屋敷へ先に来ていたらしい。


やけにエールが肩を持っているのは、ルミナスが魔界の邪神であるのを事前に知っており、この女は使えると実を取りにいった結果。


「そうなの、私は魔界の邪神さんなんです。本当は凄い人なんだあ」


気を良くさせられているとは露知らず、ルミナスは普通にエールを良い子だと思っている。


「……とりあえず、住みたい部屋へ行こうか」


「ええ、行きましょうか」


アウトレットソファーからノールは立ち上がる。


ノール、ルミナスで屋敷三階の隅にあるワインセラーへ向かう。


一応、その隣の部屋は空室となっており、そこへルミナスは住もうとしている。


住むと言っても、自らの屋敷と空間転移のゲートを繋げるだけの簡易的なものだが。


「ここでいいんだね?」


ワインセラー隣の部屋のリビングで、二人は話している。


「住むのなら、ここがいいかな? ああ、ワインセラーへワインの補充とかはしなくていいわ、私が見て知って買わなくては意味がない」


「飲む分だけ買いなよ、沢山あるのに勿体ないなあ」


「お子ちゃまはこれだから。保管年数が長ければ長い程に美味しくなるのよ。第一、私の趣味は蒐集なの。沢山あるから買わないだなんてありえない」


「おばさん」


「えっ……私まだ100歳くらいなんだけど」


ムッとしたノールの一言に、少しルミナスはたじろぐ。


魔族にとっての100歳は人間年令的に20歳くらいで若い。


「それはそうとさ、ボクはルミナスと同盟を組みたいの」


「私と? 私は別にいいよ」


最初会った時と、ルミナスの反応は全く別になっている。


なんか知らんがノールが下手に出ているため、できるだけルミナスは最大限の利を得ようとしている。


「私は勿論、貴方がバックについていることを存分に使わせてもらう。魔界の運営がとってもしやすくなりそう」


「でも、暴力的な行動は慎んでほしいかな。やり過ぎれば、ボクは敵として目の前に立つよ」


「………」


ルミナスは遠い目をしている。


そういえば、こいつはヤバい奴だったと思い出していた。


「ルミナスが協力してくれるのなら、ボクも協力を惜しまない。それは約束する」


「そっ、ならいいの」


以前のようにルミナスは怖がらない。


今ではミネウスがいて、総世界政府クロノスも存在しているから安心している。


どちらがあっても、ノールに敵わないとは気づいていない。


「じゃあ、ボクは部屋に戻るから」


「ノールも私の屋敷に来てもいいよ。私もこっちに来るつもりだし」


「それなら、たまに行くよ」


ノールは部屋を出て、自室へ戻っていく。


派閥ができたことで、ノールもできるだけ協力者を増やそうとしていた。


戦いなら一人で楽勝だが、今回のように話し合いの場を設けるとなればどのように行っていけばいいのか分からない。


自らの力で全て一から調べていくよりも、多くの者の力を借りて物事を進めていく方が良いと気づいていた。


問題なのは、手を借りる相手。


魔族は一癖も二癖もある信用の置けない連中だらけなので、ほとんど味方にする意味がない。


一応、ノール派となった元魔界の覇王ドレッドノートも魔族。


綾香の暮らしていた世界ルーメイアも含め、様々な世界で幻人を率い荒らしまわっていた普通にヤバい奴。


「どうだった?」


部屋に戻ってきたノールにエールが声をかける。


「良い感じなんじゃないかな? 話は通じていると思うから」


エールの座るアウトレットソファーにノールは腰かける。


エールはコーヒーの入ったカップを手に持っていた。


杏里が淹れてあげたらしい。


「魔界の邪神なんだから良い人じゃないの?」


「どうなんだろ? ルミナスは浅ましい人って感じでもあるから。そもそもルミナスが魔界の邪神になれたのは、ボクのおかげだし」


「えっ、嘘? それって本当なの?」


「うん、嘘じゃないよ」


それからノールは、魔界での戦いについてを語り出す。


ルミナスとの因縁についても。


「あの女、そんな小物みたいな奴なんだ……」


どこか、エールはガッカリしている。


元々ルミナスはミネウスと内縁関係だったからこそ、魔王階級者となっていた。


今現在の力量でも当時と同じく魔王階級者がいいところ。


「それじゃあ、あいつの人脈くらいしか役に立たなそうかな」


「ルミナスの話はこの辺にして」


「ああ、兄貴の話でしょ」


「うん。今どこにいるの?」


「兄貴はルシールとかいう派閥の長がいる世界にいるんだ。ごたごたが終われば、スロートに帰ってくるらしいけどどうなんだろ。あの考えのまま帰ってこられても困るっていうか」


「それでも帰ってくるだけいいよ。あまり変なことさせないように、ミールにもこの家に住まわせた方が良さそう。なにかあってもその都度話し合いができればすれ違いもなくなるはず」


「そういうものかな……」


ミールが帰ってくると分かり、一応ノールは安心した。


たとえ身体を傷つけられても、ミールは大事な弟なのは変わらない。


この日はもうノールはなにもしたくなかったため、色々と調べたりするのは止めた。


杏里、エールとのんびりとした時間を過ごしていた。


そして、夜も更けていった。


三人で夕食を食べ、それからエールは自室へ戻っていった。


ノールもアウトレットソファーでゆっくりしていた。


「ん?」


ケータイが鳴り、メールが受信されたと気づく。


手のひらを広げ、手のひらから湧き出るようにケータイが出現する。


水人能力を駆使して、体内の魔力による空間から取り出していた。


メール内容を確認すると、橘綾香から。


明日、会いたいとの旨が書かれてあった。


「会いに行くのが面倒だから屋敷で会おう」


ノールはそれだけ送った。

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