【雑談その1・マリトッツォ買ってきたぞ】
私の友人が小説を書いている事を思い出して、こんな物を作ってみました。もし私の作品を見てくれる、とても心の優しい物好きが居るのならば、いつもの日常を少し軽く出来たらと思ってこの小説を書いたので、そんな思いが伝わってくれる事を願います。
1年は365日。2年で730日。私はこの度、最低730日以上は午前4:00と一緒に居る。202×年2月2日現在時刻午前4:00 高校3年生が起きる時間としては、だいぶおかしな時間
(もう寝れねぇ…はぁ…)
ここ数年間、こんな生活を繰り返している。高校入りたて…の、春?梅雨?くらいからこんな感じになった。起きてしまうのだ。3〜4時間寝ると、絶対に。
(7:00まであと3時間…今日は何するかなぁ…)
そんな事を思いながら、今日の朝との過ごし方を考える時間が、また始まってしまう。
現在高校3年生の旭は、一足先に大学受験を終えていた。12月辺りに、私立の大学に進学する事が確定、よって暇な毎日を過ごしている。登校していた高校も、3学期になると受験期間だかなんだかで3年の生徒全員が登校しなくなった。
旭が高校に入ってから、睡眠障害のような物を持つ様になった。よくネットやテレビで耳にする「ショートスリーパー」とは違い、必ず3〜4時間後に目が覚める事と、普通に体は睡眠を求めている事がタチが悪い。ぶっちゃけ最初は、「これで将来はパン屋か新聞配達のバイトが出来るな!」なんて考えていたけど、高校1年の夏あたりから、そんなバカな考えは消え去った。
そんなこんなで布団の中で考え事をし始めて15分経過、7:00まであと2時間45分!頑張って時間を潰そう!
…って事を毎朝毎朝繰り返してる。飽きた。流石に。
と、言う訳で、今日も散歩に行く事になった。もはや日課だ。1階に自室、2階に親の寝室があってくれて本当に助かった。おかげで今までバレずに夜に何度も抜け出している。私の散歩は無目的で行われる。行きたい場所も決めず、ただただ歩く。良いくらいの時間になったら家に帰る。そんな事を繰り返している。
自分の気持ちに身を任せた結果、近くの川に来ていた。なんとなく立ち止まったり歩いたりしているうちに、気がついたらかなり川上の方に居たらしく、自分の知らない場所と化していた。
(…まぁスマホあるから普通に帰れるけど、こんな場所あったんだ。そろそろ18年過ごす地元なのに知らん場所が出るんだな)
そうして川の堤防を登り、地図アプリを起動しようとした瞬間、目が止まった。
(なにあれ…?店…じゃない…本棚?)
川の堤防の上に、木造で出来た小さな建物が見つかった。オシャレなカフェみたいな見た目だけど、看板のような物はない。そもそも早朝過ぎるから、やってないだけかとも思ったが、ガラス張りの中からは本棚が見えた。本棚しか見えなかった。
(近所にあんなんあったんだ。ちょっと行ってみよ)
そう思い、近づいてみると立てかけられた黒板が見え、やはりカフェみたいな物かと感じたが、どうやらそこに書かれていた文字的に違うらしい。
【無人図書館です。自由に読んでいってください(貸し借りはしていません。監視カメラ作動中!)】
「無人図書館?え、なにそれ、そんなんあるんだ」
今は時間がないが、次来た時にいい暇つぶしになる場所を見つける事が出来て喜んでいると、そろそろ帰らないと親にバレる時間になったので、流石に家に帰る事にした。明日の朝が少し楽しみになるのと同時に、いつ飽きるかな〜なんて考えている自分に、どことなく嫌気が刺してきていた。
2月3日午前4:30
今日は真っ直ぐ例の図書館に行ったので、じっくり本を読む事が出来る様になった。早速中に入ると狭いスペースの中にカウンター席が3席、本棚にはざっと200はあるかないかくらいの本が入っていた。ただ本の中身を見てみようとしたとき、少しガッカリした。
(なんか…対象年齢が…若いな?)
そこには絵本や児童向け小説、漫画と言った物が大半を占めていて、自分が求めていた小説の感じはごく一部だった。
まぁこの施設の対象を考えたら、そりゃそうか。と考えながら、なんとなく1冊の小説を手に取ると、急に後ろから扉が開く音がした。
「ウヮ!…っえ?」
「ヒッ…え?」
お互い情けない声を漏らしながら、急な邂逅に驚いていた。そこには片手に本を、もう片手にドアノブを持った、内気そうな女性が立ち尽くしていた。
「…」「…」「…あ、すいません。お邪魔でしたね」
沈黙が辛く自分から話しかけた。コミュ症では無いので、その気になればそこそこ会話は出来るのだが、ここで必要なスキルは話を広める事ではなく、出来るだけ相手が嫌な気持ちにならない様に、この場から立ち去る事だと確信していた。
「えっ、あっいえ!すいません!すぐ退けます!」
「いえいえお気になさらず、ちょうど私は出ようと思っていた所だったので」
「えっ、でも、今本を手にしてますよね?」
あ、やっべ、嘘ついたのバレた、どうしよ
て言うか出してよ。えぇ…どうしよ…
「あ〜…その、どんな本があるのか、気になっただけなんで、はい」
「あ、そうなんですね…」
おい帰るタイミング見失ったじゃん。もう無理矢理帰るか?そうしようか。うん。
「それでは私はこれd…」
「あの、よければ少しお話ししませんか?」
はい!?なぜ!?内気な人っぽいのは外見だけだった!?あ、どうしよ、マジでどうしよ
「…」
「…あ、すいません!もう帰られるのに呼び止めてしまって…」
「あ、いえいえ!わかりました少々お話ししますか」
あ〜…まぁうん。これは俺は悪く無い。断った方がやなヤツになるわ。うん。
そんな言い訳を頭の中で繰り返していた。朝早くから、謎のただお話をするだけの時間が始まっていった。まぁ色々焦ったけど、相手側が留めさせたって事は、俺は怪しく思われなかったって事だし、よかったよかった。ふぅ。
そう思いながら、自分から先に横並びのカウンターに座って、真ん中にある席を1つ空けて、相手もカウンターに座った。窓辺のカウンター席であり、外の川の景色が良く見える、いい場所だった。
【雑談その1・マリトッツォ買ってきたぞ】
さて、どうしよう…割と雑談は得意だけど、相手側の情報があまりにも未知数だ。そもそも貸し借りが出来ない無人図書館に本を持ってくる時点でちょっと普通の利用者ではない事はわかるし…となると
「すいませんね、こんな朝早くにお話しに誘わせて貰って、」
「あっ!いえ、こちらこそ…」
「自分が言えた事じゃないけど、ものすごい時間に起きてるんですね、いつもこの時間にここに来るんですか?」
よし!どうだ!完璧な話題提供だろ!!
「あっ…はい。そうです…」
「どうしてこんな時間に?」
「本を読むためです…」
…え、終わり!?ウソぉ!?と言うか対話になってない!え〜と…自分の事を話すのが苦手な人って事か?まぁ、なら俺が喋るべきか
「へぇ〜そうなんですね。自分はなんか朝早くに目が覚めやすいので、よく散歩をするんですけど、たまたまここを見つけたんですよ」
「そうですよね。ここって空気が澄んでて好きなんですよ」
「普段はこっちの方向に散歩に行かないから、私は気づかなかったですね〜いい散歩コースを見つけました」
「私はあんまり歩かないんですけど…でも、散歩って気持ち良いですよね」
あ、ノってくれてる。なるほど、雑談に対して受け答えをしてるって事は、質問されるのが苦手な子って事か?じゃあ俺が雑談をすればいいのか。
「俺はすごく散歩が好きなんですけど…1番散歩をしてほしい人達が散歩をしてくれないんですよね…」
「あら…それは誰なんですか?」
「両親です。どっちもその…そこそこお腹周りが出ているので、ちゃんと歩かないといけないんですけど、若くないので、まぁちょっと歩くだけで辛そうです」
「私のお父さんも一緒です。お父さんはいっつも寝てばっかで、あんまり動かない人なんです…」
あ、ちょっと親近感、俺も夜寝れないから、昼寝めちゃくちゃするからね。わかるよお父さん。
「そうですよね!うちの親父も似た様なもんですね…そう言えば最近、親父が変な事を言ってきた事があって…」
「え?どんな事ですか?」
「親父、なぜか最近のブーム的なモノを知ろうと頑張ってるらしくて、俺も若者文化的なモノはからっきしなんで、日々インターネットで勉強してるんです。でも最近変な間違いをしてて…」
「へぇ、どんな間違いを?」
「マリトッツォを買うって言い出してお店に行った事があったんですよ。んで、買ってきて俺らにもくれたんですけど…どこからどう見てもシュークリームだったんですよ。親父が買ってきたマリトッツォ」
「フフッ…そうだったんですね」
「ちなみに親父はまだシュークリームとマリトッツォの違いがわかってません。たまに仕事帰りに美味しそうな「マリトッツォ」を買ってきてくれます」
「教えないんですか?」
「なんか…可哀想なんで…」
そんなどうでもいい雑談をいくらか続けているうちに、時間が過ぎていっていた。そろそろ家に帰らないと抜け出してる事がバレるので、家に帰る事にしたのだが、どうやらまた同じ時間にまたここで話をしたいらしく、また無人図書館で会う約束をした。また会う約束をしている最中に相手が言った、
「楽しい時間でした」
が、とても嬉しかった。なかなか良い時間潰しを手に入れた事に嬉しくなりつつも、今後何を話そうか考えながら、俺は家に帰って行った。
現在時刻6:00ほど、90分間喋っていたらしい。布団の中で過ごす90分の何倍も有意義だった。
「日常の会話」をテーマにした小説です。次から旭の雑談がずっと続く様になるのですが、この雑談は7割が実体験、3割が空想のおはなしです。先に名言しておきますが、波瀾万丈な展開や、甘々なカップルの話は経験した事がないので、書く事が出来ません。また何気ない日常を見たくなった時、思い出していただけたら、幸いです。以上gingerでした。




