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アプラフの千熊亭

 ロイスはカイルに何も言わずに村を出た事を心の中で謝っていた。入院中に顔を見せたのは両親とカイルだけだった。他の知り合いは決闘でヒルスに負けた事で明らかに態度が変わっていたが、カイルは何も変わらなかった事が嬉しかった。

「いつか父さん母さんそれにカイルさんに恩返し出来る位に成長しなくちゃな」

東門を抜けてしばらくすると遠くの空が明るく見えてくる。アプラフの街は栄え、街の灯りが夜空に反射しているのである。

「とりあえずアプラフの街に泊まって、明日は冒険者ギルドに登録をしよう」

殆どの職業では16歳からそれに合ったギルド登録を行う事ができる。しかしロイスは一生村で働くつもりでいたので16歳で成人になっても何のギルド登録もしていなかった。

 ブライン村からアプラフまでの街道は比較的広い。一定間隔で地中に魔物避けの魔石(退魔石)が埋められており、よほど強い魔物以外の魔物は近寄る事は少ないが、普通の動物や人間である盗賊などには効果がないので注意が必要である。魔石の力は約一年程効果があり、定期的に領に仕えている専門の魔法師が魔力を充填している。ブライン村では村を囲むように退魔石を設置していたが、効力が弱まった場所をゴブリンが嗅ぎつけて襲撃されたのであった。

 2時間程で何事も無くアプラフに到着した

ロイスは銀貨5枚の通行税を門兵に支払い門を通過する。

「ギルドに登録すればこの出費も無くなるから早く済まさないとな」

父に付き添いの買い出しやカイルと何度か酒場に来た事はあるが、自分1人ではこんな近くの街ですら来た事が無かった事を前世の記憶が戻ったロイスにとって驚きであった。

「まあ前世の俺も恵子と結婚するまではゲームとアニメに夢中で、休日に外出は1人でアキバか映画くらいだったか…って、取り敢えず今日の宿屋を探さないとな」

時刻は21時を過ぎ商店はほぼ閉店しており、賑わっていたであろう酒場も閉まり始めていた。

「早く探さないと、宿屋も閉まってたら大変だぞ」

小走りで探していると何故か路地裏からの明かりが気になった。行ってみると「宿屋千熊亭」の看板が目に入る。

「すみませ〜ん」恐る恐る扉を開けると10歳位の少女がカウンターの向こうで暇そうにしていた。

「あれ?お客さんですか?」キョトンとした表情で話しかけてくる。

「部屋は空いてますか?」

「空いてます空いてます、お母さーん!お客さんだよー!」声を上げて嬉しそうに飛び跳ねている。

「一泊大銀貨3枚、朝食を付けたらプラス銀貨5枚です」

「夕食ってありますか?」

「ご用意できますよ、夕食は大銀貨1枚になりますが宜しいですか?」カウンターの奥から女将が顔を出す。娘によく似た丸顔で、まだ10代と言われても信じてしまう程に小柄で可愛いらしい女将であった。

「じゃあ朝夕付きでお願いします」記帳をして宿代を払うと娘がまじまじと見てきた。

「ロイスさんは冒険者?こんな遅くまで狩りでもしてきたんですか?顔はホコリだらけだし革鎧も結構汚れてますね、先にお風呂が良いと思いますよ」

「マリー、お客さんに失礼なこと言わないの!でもお風呂は温泉ですからおすすめですよ」

ロイスは通された部屋に荷物を置きさっそく風呂に向かった。ゴブリン退治から休まず出発してかなり疲れて汗も気になっていたからである。風呂場の手前には「洗濯」の表札が掛かっている洗濯機が3台ある部屋があった。前世の洗濯機に似ているがかなり大きく作られており、装備品も一緒にあらえると書いてある。洗濯方法は洗濯したい物を中に入れてから銀貨2枚を入れると魔法が発動して十数秒で綺麗にして乾燥までしてくれる。村では基本手洗いで実家でも見たことなかった。

「風呂の後に使ってみよう、まずは風呂だな」

廊下の奥が男子、手前が女子の表札がある。脱衣所へ行き服を脱いで棚に入れ、閉めた扉に手を当てると施錠の魔法が自動で作動する、もういち本人がて触れると解錠されるようである。

「魔法ってホント便利だよな、それより今は温泉温泉」浴場の扉を開けると石造りで大きめの湯船に驚いた。

「値段の割にお風呂も良いし、感じの良い女将なのに客が俺しかいないのかな?でもゆったり浸かれて最高だなぁ」風呂を満喫したロイスが食堂に行くと食事が用意されていた。

「角猪のソテーと野菜スープ、ご飯は大盛りにしておきましたよ」女将が満面の笑みで献立を紹介しているが、娘の方は何故か不安げな表情を浮かべてこちらを見つめている。

「いただきます」食べ始めてすぐにロイスの動きが止まるとマリーが顔をグイッと寄せてきた。

「どう?ロイスさん優しそうだけどビシッと感想言ってみて!」

「美味しいよ…たぶん…まぁ普通かな?…たぶん。ちょっと味が独特だね」ロイスは女将をチラッと見てから搾り出すよう感想を言う。

女将はあからさまに顔を曇らせている。

「私は食べ続けてるからよく分からないんだけど、やっぱりそうだよね!お父さんが死んじゃって、お母さんがこの宿屋を再開したんだけど…」

「再開?誰かがやってたの?」

「元々は夫の両親がやっていたんですが二人とも亡くなってしまい店は閉めていたんです。でも夫が亡くなり娘との生活の為にこの宿を再開する事にしたんです」

「辛い事思い出させて申し訳ありません、でも温泉良いのにお客が来ないのは勿体ないですね」

「素泊まりのお客さんはたま〜に来るんだけど数が少ないし、やっぱり食事の美味しい宿に行っちゃうんだよね、誰かお母さんに料理教えてくれないかなぁ」

食事を完食させたロイスは疲れもあり眠気に襲われて部屋に行く事にした。

「明日やる事があるのでもう寝ます、お休みなさい」ロイスは挨拶をして部屋に戻るとベッドであっという間に眠りに落ちてしまった。


 次の日は朝7時過ぎにマリーが部屋の扉を叩いて起こしてくれた。食堂には宿屋の親子以外ロイスしかおらず、女将は少し落ち込んでいるようであった。マリーは変わらず元気そうである。

「力になれるか分からないし余計なお世話かもしれませんが、料理を少しお教えしましょうか。こう見えても料理は好きだしちょっと得意なんで少しなら協力出来ると思うんです」ロイスは料理など作った事なかったが、田村良平の頃は妻の喜ぶ顔が見たくてよく料理を作っていた事を懐かしく思い出していた。

「えー!本当に本当に!凄いー!」マリーが笑いながらロイスの両手を握り上下に振り回して喜びを表している。女将は少し笑顔が戻ってくれた。

「ロイスさん、私まだ自己紹介してませんでしたね、エリーって言います宜しくお願いします」

上目遣いのエリーは幼く見えるも子供を産んだ女性の色気もあり、ロイスはドキッとしてしまった。決してロリコン感情でない事を祈りたい。

「取り敢えずギルドに用事があるんで、料理は用事を済ませて帰ってからでお願いします……」

女将が作ったであろう独特な味付けの朝食を胃袋に押し込んでからロイスは宿屋を出発した。朝食にも感想を言いたかったが長くなりそうなので後回しにした。

 冒険者ギルドは千熊亭のある路地裏から出て、少し離れた中央通りにあるとマリーに教えてもらっていた。言われた通りに行くと迷う事なく木造2階建の大きな冒険者ギルドが見つかる。中に入ると多くの冒険者が掲示板を眺めたり、談笑している姿が目に入った。ロイスはカウンターへ行き職員らしき女性に声を掛ける。苦学生が掛けるような眼鏡をしている三つ編みの若い女性で、胸の名札には「モニカ」と書かれている。

「すみません、冒険者登録はここで良いですか?」

「はい、こちらで受付てますよ、手続きに金貨3枚必要ですが宜しいですか?…あっ他にギルド登録をされていれば大銀貨5枚になります」

「ギルド登録は初めてです」

「初めての方ですね。担当は冒険者ギルドアプラフ支部のモニカと申します。先に登録料の金貨3枚のお支払いをお願いします」

お金を払うとノートサイズのタブレットの様な金属プレートが用意されて登録作業が始まった。金属プレートに名前や出身地などいくつかの質問の文字が浮かび上がり、専用のペンで記入する。次に名刺サイズのプレートを用意され、最初のプレートの上に重ねる。

「こちらの小さい方にロイス様の血液を一滴お願い致します」と言って針が差し出される。左手の人差し指に針を刺し小さなプレートに血液を垂らすとそれは染み込むように吸い込まれた。

「ありがとうございます針はこちらで破棄しますね、では最後に手をプレートに乗せてください」プレートに乗せたロイスの手に受付嬢のモニカが更に手を重ねて「コネクト」と呪文を唱える。

「これで登録が完了いたしました、最初は初級のランクDからとなります、プレートの確認をお願いします」モニカから小さな方のプレートが渡され、見るとランクと名前が記入されていた。

「そちらのプレートがギルドカードになります。只今の作業でロイス様とカードの間にパスが繋がりました。詳細につきましては個人情報になりますので、こちらの説明書をご覧になり、第三者から見えないように注意して確認をお願いします」

青く輝くプレートの表面にはランクと名前と登録ギルド支部名が記入されていた。

「大丈夫…ですね」

「では終了となります、もし分からない点や不具合などありましたらいつでもお申し付けください、お疲れ様でした」

ロイスはもう少し時間が掛かると思っていたが、案外簡単に登録出来てホッとしていた。

「ちょっと依頼の掲示板でも見てくかな」

掲示板はランクごとに分かれており、Dランクの掲示板には多くの依頼書が貼られている。

「薬草採取に農園の手伝い……下水道のスライム駆除…荷物運び……色々あって悩むけど、取り敢えずなんでもやって経験が大切だな」

一通り掲示板を見たロイスは約束を思い出し宿屋へ帰る事にした。宿屋に帰るとカウンターでエリーと若い女性が話をしていた。

「エリーさん帰りました」

「あっロイスさんお帰りなさい」エリーが笑顔で返事を返してくる。

「おっアンタがロイスかい?エリーさんから話は聞いてるよ、千熊亭の立て直しに協力してくれるんだって?私はナミ、宜しく頼むよ」

ナミは紅い宝石の埋め込まれた金色のサークレットを被り、朱色の鎧の上下に長剣と短剣の2本を差し、若いながら凛とした佇まいの美しい女性であった。

「立て直しって程ではありませんが、料理が好きなんで少し役に立つかと思っただけで、それだけなんで役に立つかわかりませんよ」

「エリーさんの旦那には命を救われた恩があるんだ、私は料理が出来ないから力になってくれるだけで嬉しのさ、宜しく頼むよ」

「ナミ様、夫は職務を全うしただけですし、こちらこそ御恩をたくさん頂いてますから…」

「まあまあ…湿っぽくしててもしょうがないよ!ロイス何か良い案はあるのかい?」

過去に何があったか深く聞く必要はないと思い、ロイスはすぐナミの話に返答をする。

「まだ思いついてないですが、あの独特な味付けで集客は難しいですから、取り敢えず一般的な味付けを勉強しましょう」

ガク!!

「ロイスさん容赦のない指摘ありがとうございす…

わ〜〜〜ん!」

エリーは両膝から崩れ落ちナミに抱きついた。

ナミはエリーを高々と持ち上げて自分から引き剥がしてロイスに差し出す。

「はいエリーさん、しっかり勉強して私の推し宿を料理もオススメって胸を張って言えるようにして下さい」

「はいどうぞ」

「ゔ〜不束者ですが宜しくお願いします」

ロイスは苦笑いしつつ話を進める。

「じゃあエリーさん厨房に行きましょうか…」

「私は見学でもしようかな、もうすぐお昼だしな」

厨房には前世にあった調味料などが色々と揃っていた。塩、砂糖、酢、醤油、味噌、胡椒、小麦粉、油、等々。

「これだけあれば色々と作れますね、あとは食材は……取り敢えずあるので一品作ってみますね」

「お肉は鶏肉と豚肉、ベーコンもありますよ♪あとお野菜はレタス、トマト、ジャガイモ、長ネギ、玉ねぎ、ニンジン、もやし、ニラ、卵、ニンニク、生姜…何でも使って下さい」 野菜棚や冷蔵庫、冷凍庫には多くの食材が整理されていた。この冷蔵庫はエリーが千熊亭を再開する際に、ナミの父親が宿の修繕と一緒に新しくしてくれたそうである。中に入れた食材は時間経過が遅くなり持ちが段違いに良い高級品だそうである。

「冒険者も旅人はお腹空かせたのがスタミナでガッツリ系を作ってみますね」

「エリーさん、後でレシピを書きますんで、作り方を簡単に頭に入れておいて下さい」

「残りご飯も使っていいですかね」ロイスは手際良く焼き飯と豚の生姜焼きを作ってみる。

「あっという間に作ってしまってロイスさん凄いですね!でも私の料理に対してクレーム入れたんですから食べてみないとですからね!」と言いながらエリーは目を輝かせている。テーブルではナミがもう椅子に座って食器をガチャガチャ言わせている。

「そうだな!まあ早く食べようじゃないか!」

「ナミ様女の子が行儀悪いですよ」エリーからの声が耳に入っていないのかナミは興奮して体を揺らし、料理が配られるのを待ち構えている。

すると出来上りを待っていたように厨房の扉がバタンと勢いよく開きマリーが入ってきた。

「あー!私の分もちゃんとあるのー!私もちゃんとロイスさんの料理試食する!我が家の将来が掛かってるんだからね!」料理を指さしてマリーが強く訴えている。

「マリーの分もあるから先に手を洗いなさい。あとメアリー様の言うこと聞いてちゃんと勉強出来たの?」

「もう〜お母さんうるさい〜ちゃんとしてるに決まってるでしょ!覚えが良いっていつも褒められてるくらいですなんだからね!」

「それなら良いんだけど、さぁ早く手を洗ってきなさい」

「は〜い」

「メアリーは私の姪で、家庭教師が付いてるから時間がある時マリーに勉強を教えてるんだ」

ロイスはやっと気付いていた、ナミがアプラフ城の城主であるフラース・リアルスの三女ナミ姫な事に。

「夫がお城で御者をしていたんで、有難い事に今でもお気に掛けて頂いてるんですよ」

「メアリー様は8歳で私より2つ年下なのに勉強教えてくれるの凄い上手なんだよ!って、手洗ってきたんだから早く食べよう!」

「よし!私ももう待ってられないからな!いただきます」手を合わせてまずはナミから食べ始める。

「ん〜〜!!美味い!焼き飯最高じゃないか!ん〜〜!!肉の料理も絶品だそ!」

続けてマリーも食べ始める。

「お母さん、ロイスさんの料理美味しいよ!どっちも!お母さんと同じ台所で作ったなんて信じられないよ!」

エリーは娘の発言に眉をヒクつかせながらも食べ始めると目を見開いて驚いた様子を見せている。

「ロイスさん!ウチの料理長で雇わせてください!」

「いいえ、特訓しますからエリーさんは味付けをしっかり覚えてくださいね」ロイスは笑顔で辞退する。

「はい!ロイスさん!お母さんだけじゃ心配だから、私も一緒に教えて下さい!」

マリーが手を挙げて申し込んできた。

「良いねぇ♪エリーさんだけだとレシピ通りに味付けするか心配だからね、それに今まで母親の料理で育ったマリーの味覚に本当の味を教えないとな!」

「母親の味も少しは大切なんじゃ…」

エリーの訴えは右から左に通り過ぎていった。


 次の日ロイスは冒険者ギルドへ来てこの先の事を考えていた。

「西か東か…、冒険者の依頼で護衛や配達があったらそれで決めるか」

数日は千熊亭で料理教室を昼時にする事になり、他の時間で冒険者としての仕事を始めようと思っていたが、特に行き先は決めていなかったのである。そんなロイスに背後からナミが声を掛けてきた。

「ようロイスじゃないかエリーさんの料理の方はどんな感じだい?」

「あっナミさん、そうですねぇ…本格的には難しいですけど調味料の分量を間違わなければ今よりかなり改善すると思いますよ、レシピも書き残しておきますから大丈夫じゃないですか」

「助かる♪それと、必要かと思って手帳と筆を用意しておいたよ、ホイ!」

ナミから渡された手帳は200ページ程で、なかなかしっかりした装丁をしていた。

「せっかくだから頑張って半分位は埋めてくれよな」

「半分て100ページ位あるじゃないですか!」

「宿代払ってるんだから安いものだろう?」

これでは空いてる時間に冒険者の依頼なんて受けられないとロイスは理解した。

「はぁ…、分かりましたよ」

「まあまあ、女からのお願いはこの程度なら聞いておくもんだぜ」

ロイスは先の事は取り敢えず後回しにして料理手帳を作り上げる事に専念しようと決意し、早々に千熊亭に帰る事に決めたのである。

千熊亭に帰ってロイスはすぐに料理手帳の構成を考えた。

「肉料理、魚料理、野菜料理を焼き物、煮物、炒め物別にリストアップ。あとはサラダ、デザート。汁物もあるな」料理のレシピには挿絵を入れて分かりやすくする。そして1日5品を目標に千熊亭に泊まり始めてから23日目の夜、ようやく料理手帳が完成したのであった。料理の方は母親のエリーより娘のマリーの方が覚えが良く、料理教室の時はマリーからの指摘にエリーがあたふたしている様子がよく見られた位であった。次の日の朝に100品目書き終えた事を伝えて料理手帳をマリーに手渡すと寂しそうに手を掴んできた。

「ロイスさんせめて全ページ終わるまで続けられないの?」

「俺も旅目的で隣のホウリアから出てきて、いきなりアプラフに20日以上も滞在するとは思ってなかったからさ」

「良いでしょ〜、まだ〜、何ならお父さんになってくれても良いからさぁ」

「なにバカ言ってないの!ロイスさん困ってるでしょ」エリーが話し声を聞いて朝食の作業を止めて顔を出してきた。ロイスはマリーの台詞にエリーをまじまじ見てしまったが頭を振る。

「それに料理のレパートリーも思いつかなくて」

「ぶぅぅ〜」

「ロイスさんの料理手帳を利用し始めてからお客さんの反応も良くて、ナミ様も知り合いに声を掛けて下さってるようで本当に助かってます」

「じゃあさ!今日のお昼の料理教室はナミさんも呼んで頑張っちゃおうよ!」

「そうね、ロイスさん冒険者ギルドにナミ様がいるかもしれないので声を掛けてきて頂けますか?」

「いいですね、朝食食べたらギルドに行ってきますよ」朝食はロイスが教えたパンケーキとベーコンエッグのセットであった。マリーのお気に入りである。

「お母さん私が見てなくてもこのセットだけは上手になったんだよ♪」

「恥ずかしい事言わないの!一所懸命に教えて下さってるロイスさんに申し訳ないでしょ!」

「大丈夫、大丈夫、私も頑張ってロイスさんの料理を絶対に活かして千熊亭を支えていくからね!」

「おう頼むよ」言って頭を撫でるとマリーの満面の笑みが返ってきた。

 ロイスは朝食後すぐに冒険者ギルドに行き、本格的にこの先の事を考える予定でいた。まだ初級のDクラスだと冒険者らしい依頼も難しいかもしれず、丁度良い依頼でもあれば良いと探したかったのである。冒険者ギルドに着くとナミが受付にいるのが見えたので挨拶をする。

「おっ!丁度良かったロイス、お前指名の依頼を出しておいたんだよ」

「ロイス様、ナミ様からの指名依頼がありますがお受けになられますか?まあナミ様からの依頼を蹴ったとなると……」

受付嬢のモニカが口篭ってロイスの恐怖心を駆り立てようとしている。そんな依頼書を確認すると千熊亭の料理教室などの内容と成功報酬大金貨5枚と書かれてあった。

「これって…こんなに良いんですか?」

「安いくらいさ、もう少し払えたら良いんだが田舎領主の三女じゃ金回りもそんなに良く無くてすまないな」

「ありがとうございますホント助かります」

「よく市場まで出掛けてエリーが使ったことも無いような香辛料や調味料を集めて考えてくれてたからな、それがまたメチャクチャ美味くて感動したのさ」

「はぁ、せっかく怖がらせようとしていたのに」ため息を吐いたモニカの顔を見て2人は一緒に覗き込んで笑ってしまった。

「そうだナミさん、料理手帳が出来上がったんで今日の昼は千熊亭に来てもらえますか?最後の料理教室でついでにパーティーしましょうってエリーさんからの伝言です」

「そうかい♪朝まだ食べてなかったから丁度良かったよ、昼まで腹空かせておかなくちゃな!」

「期待してください、じゃあ俺はちょっと用事があるのでまた後で、依頼本当にありがとうございました」

「良いって良いって、また後でな!昼楽しみにしてるよ」 

ロイスはナミと別れてから冒険に必要なものを探しに街へ出掛けていった。


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