『GUM⭐︎SHALA』4
「真由美!? どうしたの大きい声出して、近所迷惑よ!」
母、真佐江が一階から怒っている。真由美はベッドの上、うつ伏せで手足をバタつかせた体勢のままフリーズしてしまう。
パタパタパタと階段を登ってくる音。
(もう、お母さんてば見に来なくてもいいのに……。仕方ない、勉強してるフリしよ)
スマホを傍らに置いた真由美は勉強机に座ってカバンから教科書やらノートを取り出した。
が、階段を登る音が止まって母の声が微かに聞こえてきた。
「あら、そう? じゃあ……頼むわね」
母が階段を降りていく音が聞こえる。
やがて……。
コンコン
真由美の部屋を誰かがノックする。
「はーーい」
真由美が答えてドアを開けると、廊下に黒いヒーロースーツに身を包んだシャドウズが片膝でしゃがんでいた。
母、真佐江をなだめてくれたのはこのシャドウズらしい。
「真由美お嬢様、何かありましたか?」
「いえ大丈夫……あれ? もしかして、トゥエルブお姉さん?」
シャドウズは警備中、ヒーローマスクを着用している為、素顔がわからない。しかし、真由美は声でトゥエルブだと分かった。
「はい、トゥエルブですよ」
「わぁ、トゥエ様だ……」
真由美は動画内で登場するより一足先に現れた当人を憧れの眼差しで見た。
「トゥエ……お嬢様、もしかして今GUM⭐︎SHALAの動画観てます?」
トゥエルブをトゥエと呼ぶのはバンド時代のメンバーとファンくらいだ。
「そうなんです、これからお姉さんが登場するぞーーってところでお母さんに邪魔されて……」
「じゃあケイトのギターソロが終わった辺りですね」
「そうです、そうです! 他のメンバーの方もカッコ良くてびっくりしちゃってます。そうだ、お姉さん一緒に観ませんか?」
「いえ、今は任務中だから怒られちゃいますよ」
「そっかぁ、じゃあ……一回マスク取ってもらって良いですか?」
「えっなんで……もう、仕方のないお嬢様ですねぇ……」
そう言ってトゥエルブはヒーローマスクを取って髪を整えながら素顔を見せた。銀髪碧眼の美しい顔が現れた。
真由美はその顔をジィーっと見つめて目に焼き付ける。(ん、何の時間だろ、これ……)戸惑うトゥエルブ。
「はい、ありがとうございます。これからゆっくり高校生のトゥエ様を観させてもらいますね!」
真由美はスマホを手にベッドに直行し、真由美お手製のセイロンさんぬいぐるみを下に抱いてうつ伏せになり、動画の再生ボタンを押した。
◇
観客のテンションが更に上がる。
トゥエルブーーッ!
トゥエ!トゥエ!トゥエ!トゥエ!……
ドゥンッタットゥドゥンドゥンタットゥク……
ミッチのドラムに合わせ観客の手拍子が始まる。
ステージの照明もリズムに合わせ明滅する。
おもむろに、ステージ下手からスマホで動画を撮りながら、黒い革ジャン、革パンに身を包んだ銀髪ウルフロングの女性が軽快にステップを踏みながら現れた。
「キターーーーッ」
真由美はセイロンさんぬいぐるみで口を塞いで大声にならないように叫んだ。
《NEXT》




