終章
フィニ侯爵家には、双子の娘がいる。
かつて、【赤い目の娘】であるが故に手放してしまったコーデリア。
ソレイユ王国とセレス王国の和平の証として、セレス王国の王家の流れを引く伯爵令息と政略結婚をするマーガレット。
「リーノスを奴隷として強制労働させている」
誤解は解け、すれ違っていた家族は和解した。
コーデリアが今日に至るまで、誰にも不幸を齎していない事、養父である竜族のロイ・マックと共に世界を巡りながら困っている人々を助けていた【謎の聖女】の正体がコーデリアであり多くの民衆は彼女が侯爵家に戻る事を喜んだ。
コーデリアが侯爵家に戻って間もなくソレイユ王国の国民から慕われていたマーガレットは、愛する伯爵令息の元に嫁いだ。
コーデリアは侯爵家の次期当主としての勉学に励み、美しく毅然とした彼女の元には多くの縁談が舞い込んで来たが、【赤い目の娘】に対する忌避感が消えた訳ではない。
どこかで、「コーデリアに関われば、不幸になるのではないか?」と考えている相手との婚姻は気が引けた。
そんなコーデリアの様子を見て、侯爵夫妻は考えた。
「コーデリアは、リーノスと想いあっているのだろう?」
貴族令嬢と、平民が...、となると色々と手を回す必要が出て来る。
セレス王国では獣人族の1部は貴族と同等の権限を持っている、と聞いた事がある。
亡きリーノスの父親は、その貴族と同等の権限を持つ獣人族の隠れ里の里長だった、とリーノスの母は言った。
「獣人族の、貴族と同等の権限を持つ里長の息子と、コーデリアの婚姻もまた、和平の象徴となるだろう」
と侯爵夫妻は国王に箴言し、コーデリアはリーノスと結ばれる事となった。
時を置かずして、マーガレットは男児と女児の子供を出産し、コーデリアは男児を出産した。
ふたりの娘の産んだ子供達は、和平の証であり人々から末永く愛される事となる。
「ふたつの国が争っている黒幕は北の国ロゼの暴君の差し金、と言うところもあるから。そこは私がどうにかしましょう」
腰が非常に重い事で有名な竜族の長老が動いた事もあり、マーガレットとコーデリアの子供達が生まれる頃には国同士の蟠りも解消されている。
それでも、長く続いた戦争によって傷付いた人の心はそう簡単に癒えるものではない。
「時間が解決してくれるんじゃないかしら」
楽観的な母親に代わり、竜族の名代としてカロがあちらこちらを回っている、と風の噂で聞いた。
また迷子にならなければ良いが、とカロを知るマーガレットは思うのだった。
マーガレット・フィニ
侯爵令嬢。外見は大人しそうに見えるがかなりの行動派。
アランベール・シアン=フェルグス
伯爵令息。本家の当主が子を成せない身体である為に分家から跡取りとして迎え入れられた。
リーノス
三毛猫の獣人族。マーガレットが奴隷紋を解呪した事がきっかけでマーガレット付きの従僕になる。
ダリア/コーデリア
侯爵家で働くメイド。その正体は【赤い目の娘】であるマーガレットの双子の姉。友人であるリーノスが奴隷として強制労働させられていると言う勘違いで養父の元から姿を消して侯爵家にメイドとして乗り込んだ。
カロ
本名アスカロン・ジークフリート。神話の時代より旧い、【失われた時代】から生き続けている竜族の長老の娘。父親が人間である為、竜族特有の人間に対する嫌悪感はあまり無い。
シレナ
竜族の長老。かつてリビアの大地で【毒を吐く竜】と恐れられていた。押しかけ女房をした聖ゲオルギウス曰く、「ある意味毒を吐いている(=毒舌)」
自分が動けば世界の面倒事の大半は解決すると理解していながらかなり腰が重い。
安倍美桜
シアンの護衛騎士。東の国ブロッサムから出稼ぎに来ている。遙かむかしの御先祖様が有名人だった事はなんとなく知っている。




