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それでも俺は…

海ーーそれは人類に残された、最後のフロンティア。

空を飛ぶことも、宇宙に出ることすら叶った時代にもあって

この世界の七割以上を支配する"海”は、依然として深い謎を秘めていた。

そして今やーーその海こそが、人類の"世界”のほとんどを占めている。

大陸のほとんどは沈み、都市は水没し、文明は再構築された。

そんな世界で、「潜水士ダイバー」は、最も過酷で、最も尊敬される職業の一つだった。


「おーい、カイ!兄ちゃんの部屋、こっちは終わったぞー」


古ぼけたアパートの一室。

ベッドの下から出てきた鉄製のケースを見つめていた。

この少年はカイ、14歳、深海のような紺色の髪にお下がりと思える少しダボついた服を着た、彼の瞳はどこか虚に見えた


「.....これ、兄貴の.....」


無骨で、錆びついたそのケースには、ロゴがついていた

『O2 SYSTEM - TYPE…』と、英字がかすれていて最後まで読むことができない

何やら六角形の穴が空いている


「それ、兄ちゃんが最後に使ってた装備か?」


部屋の入口に立つのは、叔父・ジョウ

元潜水士で、今は港町で寿司屋を営んでいる。


「コードが......入ってる。だけど、開かない。ロックされてる」


「へえ、見たことないタイプのO2システムだな」


「O2システムって何?」

とカイはジョウに尋ねる


「O2システムってのは、潜水士ダイバーが海の中で活動するために使う物だ、そいつさえあればどんな危険な状況だろうとくぐり抜けられる」


カイはケースを抱きしめたまま、言った。

「俺.......潜水士になりたい!」


「知ってる」


「え?」


「お前、ずっと兄ちゃんのこと気にしてたもんな。.....あいつが深海で消えた理由、知りたいんだろ?」


カイは言葉を失い、小さくうなずいた。


兄ーージン

シルバーランクの潜水士であり、最後に潜った”海域”から戻ってこなかった。

遺体は見つからず、通信も途中で断絶。

公式には「行方不明」とされているが、実質的な"死亡認定”が下された。


「だから、俺が行く。兄貴が何を見つけて、なんで帰ってこなかったのか。全部、この目で確かめたい…」


「......言うと思った」


ジョウはくしゃりと笑い、手に持っていたほうきを放り投げた

「試験、明日だったよな?もうエントリーは済ませたのか?」


「うん。ブロンズ試験、試験場で水中移動と、制限時間内に物を見つける試験だって」


「懐かしいなあ......俺も昔やったよ、あれ。酸素ギリギリで。死ぬかと思った」


カイはうっすら笑ったが、すぐに真顔になった。

「でも、本当に大丈夫かな、俺なんてまだ14歳だし......O2システムだってまだ扱えないし」


「だから行くんだろ?そうやって足震えながらも、一歩踏み出す奴が“潜水士”になるんだ」

ジョウの言葉に、カイは小さくうなずいた。


その夜、彼は眠れなかった。


そして翌朝、朝食を済ませ家を出た所で、ジョウがカイに叫ぶ。

「おーい!カイ!試験が終わったら店に寄れよー!落ちても笑ってやるからなー!」


カイはその言葉で緊張がほぐれる

「うるせーよ!合格してくる!」

と言い試験会場までの船に乗り込んだ、

彼の瞳には固い決意が宿っていた。

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