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第四話「歴史という名の道標と標なき旅の始まり」 その5

 歴史というものは、想像の産物である。歴史書や記された文書には、細かい情報が残されていないことが多い。何年何月何日に何があり、何時何分に終わりを告げる、そんな事は書かれることがない。聖獣の復活、勇者による封印、帝国との戦争、それらは同時期に起きた記録は残されても、細かく記される場合は少ない。つまりは、どれが初めでどれが終わりなのか、それは後の時代の研究者達が、色々な記録を元に後付けした物語である。





 少年は、自分が置かれている状況に混乱しながら、王城の中を歩いていた。

 本来であれば、こんな場所には入れない、そしてこの時代の神国の幹部にも、ましてや二代目勇者と会うことなどあり得ない。そのはずなのに、今、自分はそこへの道のりを歩いている。これは何かの間違いなのかと、何度も何度も考えるが、その答えが出ることは無かった。


「そんなに緊張することは無いぞ」


 ドレインが優しくそう言ってくれるが、少年の感じている緊張や戸惑いは、また別の意味のものだ。確かに、後の残された書物には、この時代の英雄達が描かれ、非常に徳の高い者達だったことは想像できる。しかし、それらに会えと言われると、そこは話が変わってしまう。そもそも、この時代の人間ではない自分が会って大丈夫なのかが1番心配だ。


 しかし、そんな心配を余所に、少年は手を引っ張られながら、王城の廊下を延々と進んでいく。逃げることはできない、そう察したとき、少年は唇を噛むと、1つの決意をした。本来であれば、自分はいない存在、それが大きく歴史に関わろうとしている。それが、正しい道筋なのか、それともより狂っていくきっかけなのかはわからない。それでも、今は前に進むしかない、自分が知る歴史の道筋を辿る為に、自分が知りうる知識で歩んでいこうと。


「さぁ、着いたぞ。粗相がないようにしてくれ」


 ようやく立ち止まったドレインにそう言われて、前を見上げると、大きな扉があった。重苦しい扉、その先には、おそらくこの時代の英雄達が待っているのだろう。そして、少年はそんな彼らと、自分が知る歴史のために歩み続けなければならない。


「失礼いたします!」


 ドレインが大きな声で、中に居る者達に宣言した。


 ゆっくりと扉は開かれていった。



 そして、少年は勇者と出会う。それは、彼にとってその後の人生を大きく変える出会いだった。運命とも呼べるその出会いによって、物語は大きく動き出すこととなる。

 大地歴1524年、後に伝説となる物語である……





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