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 勇者たちがマカの着替えを取りに行く間、わらわは部屋に残ったマカとおしゃべりでもすることにした。


 わらわは敵であろうと交流は大事だと考えてるからな。


「マカよ、二人きりになったな」

「そうねぇ。私食べられちゃうのかしら」

「クックック……」

「魔王ちゃん、あなたほどの人がまさか何も気づいてないワケないよねぇ」

「クックック……」

「なにその曖昧な反応」


 クックック。


 この魔王たるわらわがお茶を濁した返事をしているとでも思っているのか。


 よもや!


 このわらわが!


 何もわかってないので!


 愛想笑いで誤魔化していると!


 そう言いたいのか!!


 そんなわけなかろう。当然わらわは勘がいいからいくつか疑問を見つけてしまったのじゃ。


 ……え、なんか何も分からずに笑ってるように見えてた?


 そんなわけないよな。うむ


「まあ冗談はこれくらいにして。マカよ、そなたらの正体なんじゃが」

「あらあら早速核心に触れるのねぇ」

「ゆっくりと話したいところだが、あいにくと茶も菓子も出せないからな。そなたらが皆殺しにしたせいで」

「魔物は全て滅ぶべきって決まったのよ。善きも悪しきも、ね」

「それが天の意志か?」


 かつて魔物は人間よりも強大な存在であった。


 それに対して人間はめちゃくちゃ弱かった。


 マジで弱かった。


 それはもう、チンパンジーレベルだ。


 いやチンパンジーは意外と強いな。うむ。


 ともかくだ。どんくらい弱かったかというと、思わず手を差し伸べたくなるほど弱かった。


 そう、他の種族が手を差し伸べたくなるほどに。


 それこそが人間の弱さであると同時に強さだった。


「あまりに弱い人間はかつて天界から手を差し出された。が、あろうことか魔物からも同時に手を差し出されたな」

「そう。そして人間は二つの手で両方の手を握ったわ」

「……裏切り」

「いいえ、裏切りじゃないわ。人間は全ての種族と良い関係でいたかった」

「最初は魔物たちもそう捉えていた。しかしその後の人間が取った行動は紛れもなく”裏切り”ぞよ」


 天界と魔物の両方から差し出された救いの手。


 恥知らずな人間はそれを両方握るという形で応えた。


 だが人間はすぐにボロを出した。


 あろうことか天界の甘い誘惑に乗ってすぐに魔物を裏切ったのだ!


 そんなのあまりにも魔物に対して不誠実ではないか。


 魔物たちは人間を哀れみ、自分たちの築いた栄華を弱き者たちへ分け与えようとしていたのに!


 天界の者どものように人間たちを”弱っちい手下”などと見下さず、美点を見出して一緒に共存しようと意気込んでいたのに!


 なのに……裏切ったのだ!


「あなたたちが人間を嫌うのは十分わかるわ。そしてそれ以上に天界を嫌っていることも」

「分かるわ、だと? そうだろうよ。分かっててやったんだろう。分からずに裏切るバカはおるまい」

「嫌われてるのねぇ、私たちぃ」

「ああ、そなたたちが大嫌いだ」


 結局、人間と天界が手を組んだことにより魔物は肩身の狭い思いを強いられることになった。


 何も出来なかった人間は天から知恵を授かった。


 知恵で魔物と同じだけの存在へとなった。


 知恵を得た人間は次に天から魔法を授かった。


 魔法を得た人間は魔物よりも強くなった。


 魔法と知恵で己のわがままを貫くようになった。

 

 だが天は人を嘲笑うかのように、いつしか人と接触しなくなった。


 そこから人間たちの転落は始まる。


 人間同士で裏切り、争いが起こるようになったのだ。


「くふふふ、人間どもが落ちぶれた時は愉快だったわ」

「あらぁ、ホントかしら。なんだか”わらわはむしろ人間と共存している”って言ったのとは大違いね」

「……たかが独り言をよく覚えているものだ」

「あれモノローグだったから聞き取るのに苦労したわぁ」

「おいマカよ、そういう事はあまり言うな」

「あらごめんなさい」


 そういうノリはめちゃくちゃサムいからな。


 わらわたちは適当に合わせとけばいいんだよ。


 まあでもさ、みんな「」の付いてるとこしかロクに読んでないだろうし?


 このページみたいにモノローグでどうでもいい世界観について長々と語られてると読み飛ばされるだろうから……


 ちょっとここら辺でメタいこと言っても許されるじゃろう!


 どうせこの部分もモノローグだから読んでないだろうしな!


 ぬふ、ぬふふふ。


 何言おうかな、とりあえずわらわのパンツの色でも暴露しとくか。


「ミントブルー!!!」

「え、急にどうしたの」

「……」

「ハックション! ああ、寒いわぁ。マクセルたち遅いわねぇ」

「あの〜、今わらわはなんと言ったかのぅ?」

「元気な声でミントブルーって叫んでたけど」

「そうかミントブルーか。ところでマカは裸だけどパンツは何色になるのかのぅ」

「わぁ、何言ってるのこの子。ちょっと意味わかんないわぁ」


 やってしまったのじゃ。


 気合入れすぎてうっかり声に出しちゃったのだ。


 とりあえずわらわのパンツはミントブルーだけど、ミントブルーじゃないって事にしておいてくれ。


 頼む、後生じゃ〜。


 聞かなかったことにしとくれ〜。


 ………………。


 というかさ、目の前に素っ裸の女がいるから色々と調子が狂うんだよ。


 よくもまあそんな格好であんな真剣な話をしていたものじゃ。


「まったく、全裸が板につきすぎとりゃせんか?」

「あらあら、そ、そんなことないわよ……」

「まるでキューピッドあがりじゃのう。あ、人間に言ってもわからんか。ハッハッハ!」

「ギクぅッ」

「天界も酷よなぁ。ヒラ天使には服すら支給せず、ある程度の実力を得るまでは全裸を強要するなんて」

「そ、そうねぇ、恋の弓矢も自分で作らないとだしねぇ」

「お、よく知っておるな……そういえば昔、天界にマガミトロンという優秀なキューピッドがいたが」


 ふとマカに似た名前のキューピッドの名を思い出したので、何気なく口にした。


 しかしマガミトロンという名を聞いた瞬間、マカは驚愕の表情を浮かべる。


 それはまるで正体を見破られたかのような、しまったという顔であった。


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