とある観測者の懐古
「僕達が観ている星の光」
「きらきらと美しく瞬き、蒼く燃えている幾千のあの光は」
「今も輝いているとは限らない」
「光はとても疾いよ。僕達に手の届く疾さじゃない」
「けれど、あの晧々とした星の光でさえ僕らのいる地上にとどくまでに何年、何百年、何千年、何億年とかかるんだ」
―――僕らの観る星は、ずっと昔の星の姿かもしれないんだ。
「そして地上の僕らは、今を、未来に向かって歩き続けている」
「立ち止まる事も許されず、未来にしか進むことのできない僕達が、過去の光を観ている」
「僕はね、そこにとてもとても魅せられてしまうんだよ」
満天の星々、星降る夜
遠く、高く、手を伸ばすことさえ躊躇われる、空の至宝。
過去の輝きとはわかっていても、願わずにはいられない。
幾多の人々が、焦がれてやまない。
「…で、なんでアナタは星の話をしながら昔の私の写真を見てるのかしら?」
「いや、いやいやいや!最近なんかキミがちょっとこう…」
「…ちょっと、こう?」
「いや誤解だよ!キミは今も昔も美しいよ!!…だけどちょっとこうふくよかに」
「…」
「いや今のままでも十分なんだけどね!昔はあと20kgほどスリムだったような気がしてね!!他意はないんだよ…ってちょっとちょっとちょっと!!!」
「アナタも、だいぶ、ナニか、寂しく、なったわよね?」
「すいませんすいませんすいませんすいません髪むしらないで!!って…え!?それはさすがに…ぎゃーーーーーー!!」
べりぃっ!
ガムテープが引き剥がされる音と悲鳴は、またしても夜の静寂に溶けて消えた。
・・・実はこの夫婦、前にも出てきたかもしれません。
ひそかにお気に入り。