とある心理学者の憂欝
「ニンゲンの心って不思議だよ」
「まったくもって予想がつかない」
「キレるって言葉があるだろ?あれってさ、その時にいきなり限界がくるんじゃなくて、少しずつ積もった何かに、何かがきっかけで火を点けて爆発するんだと思う」
「その時は、そのきっかけによって『キレた』けれど、もし、何かがそこまで積もっていなければ爆発しなかったかもしれない」
「つまりは『きっかけ』がわかったとしても、いつ、爆発するかなんてわからないんだ。本人にさえね」
「それまでの経験や体験、状態がわからなければ、どんなに優秀な心理学者だって、相手の心を理解することなんてできない」
「人間の心ほど、複雑で単純で深淵で浅薄で暗くて明るくて優しくて残酷で美しくも醜悪で愉快で不愉快なものはないね」
「ぼくはいつも言いたいと思っているんだ」
「不思議なモノや謎を探している人たちに」
「隣人を見ろ」
「そこには神秘が眠っている!とね」
「人間にはありとあらゆる可能性が眠っている!手に届くところに最大にして最高の不思議があるんだ!天国も地獄も歓喜も悲哀もすべてヒトが作った!これ以上に興味深いモノはない…人間はひとりひとりが広大にして深遠な宇宙なんだよ!実際の宇宙なんか観ている場合じゃない!!」
「…で、なんで覗きなんてしたのかな?」
「いやだから、女性の神秘がだね」
「困るんだよねぇ、春先は特に多くて」
とある町の交番で、とある心理学者が、望遠鏡を抱えたまま職務質問されていた。