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恋愛下手のアリスちゃん  作者: 如月まりあ
7/13

恋愛下手のアリスちゃん7

翌日の学校-


ホームルームで、亜梨子のクラスは、和風喫茶をやる事が決定した。


亜梨子は、裏方を希望していたが…


亜梨子以外のクラスメイトの要望により、呼び子及びフロア係になってしまった。


「やだなぁ」


亜梨子がボヤくと


「何が?」


芽依が笑いを堪えながら聞く。


「分かっているくせに」


芽依をジロッと見てから、


「私、そういうキャラじゃないんだけど」


「仕方ないよ。亜梨子は、そういうキャラだって思われているんだからさ」


と言っている芽依は、一応裏方担当だ。しかし、生徒会役員としての役割があるので、戦力としては見られていない。


「ま、がんばりなさいな」


と、言って肩をポンポンと叩く。


そして、席を離れていく。


「芽依?」


亜梨子が呼び止めると


「今日は、生徒会の会議の日なの」


亜梨子に背を向けたまま、手をヒラヒラさせている。


「あ、そうなんだ」


「そ!じゃあ、行ってきます」


芽依は、ポケットに手を入れたまま、教室から出ていく。


亜梨子は、頬づえをついて窓の外に広がる景色を眺める。


穏やかだ…


「ねぇ、どうする?」


クラスメイトの女子の話声が聞こえてきた。


「何をよ?」


「『告白大会』よ。出てみる?」


「私、パス!」


「ええ?」


「どうせ玉砕するだろうし」


「でも、でも、『告白大会』で結ばれた二人は永遠を約束されるんだよぉ。ロマンチックじゃない?」


「そうだけど…、公然の面前で告白なんて…」


「ええ?だったら、私止めようかな」


「あんた出るつもりだったの?」


「うん…」


「はぁ、勇気あるねぇ。いいんじゃない?」


「でも、一人で出るのは…」


「何を弱気になっているのよ!出なさいよ」


「あーあ、私も亜梨子様みたいな美人だったらな」


「…今年も、亜梨子様への告白が多いのだろうね」


「羨ましいな」


そんな会話を聞きながら


(全然、羨ましくないよ。私だって…アナタタチガウラヤマシイヨ)


無表情に外を見つめながら、思っていた。


(ん?そういや…)


例の3人は来てない。諦めてくれたのか?なんて亜梨子が内心ホッとしていた。


だが…


今日は、3人同時にやってきたのだ。


何事かと、クラス中がざわざわしている。


3人は亜梨子の前に立ち


「文化祭が楽しみだよ」


髪をかきあげて甘ったるい声で成男が言う。


「は?」


亜梨子が、顔をしかめると


「聞いてないのか?文化祭の告白大会で、俺達3人の中から一人を選ぶ事を?」


どこまでも威圧的に誠吾が言う。


「は?」


亜梨子は、ますます分からなくなってきた。


「亜梨子さぁん、何も聞いていないんですねぇ」


背筋がゾッとするようなねちっこい口調と笑いで政一が言った。


「亜梨子さんのお父様が、学部長選挙に出られるでしょう?その資金の援助を我々3人の父がそれぞれ申し込んだ訳ですよ。ですから、誰から資金援助を受けるか亜梨子さんに決めていただくというわけです」


そう言って成男は、バラを1輪差し出す。


「それはどういう?」


亜梨子は嫌な予感がしていた。


「告白大会で、わしらの中から付き合う男を選べっちゅう事だ。将来を見据えてな。それで、その家からお前の親父さんに資金を援助するっという訳だ」


誠吾の言葉に亜梨子は、固まる。


「楽しみにしていますよぉ。亜梨子さぁん」


ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべている政一。


3人は、それぞれ嫌な笑いを浮かべてから、教室から出ていく。


ざわざわ、と教室中が噂話を始める。


凍りついたまま残されている亜梨子を見ながら…




その噂が広がるまでには、大して時間が掛からなかった。


放課後には、休んでいる生徒にすら広まる始末だった。


「災難ね」


芽依は、気を使いながら言うと


「そうね」


下駄箱で亜梨子の表情は冴えない。


生徒全員に広まっているという事は、当然、真之介の耳にも入っているはずだ。


それを考えると胸が苦しい。


「今日は…何かおごるよ」


芽依の誘いに、亜梨子は首を横に振り


「ありがとう。でもいいよ。今日は帰ってから親にちゃんと聞かないと」


険しい表情で言う。


だが、そこにタイミングよく…真之介が現れた。


「亜梨子…ちょっと」


真之介に誘われるまま、外に出る。


「…聞いているんでしょ?」


「まぁね」


「とうとう結婚相手まで決めなくてはならない羽目になったわ」


その会話だけで、しばらく沈黙が続く。


「どう…するの?」


真之介の問いかけに、亜梨子は唇を噛んだ。


「真ちゃんには…関係ないでしょ?」


「亜梨子?」


「関係ないんだから!」


亜梨子は、瞳にイッパイの涙を浮かべ、真之介の前から立ち去る。


「亜梨子!」


呼び止めようとしたが


「うわっ!」


何かに引っかかったのか転んでしまう。


その間にも亜梨子との距離は広がっていく。


真之介は、追いかけようとしたが


「会長!」


美雪に呼び止められる。


「浅木さん…」


「会議の時間です」


美雪の言葉に


「わかりました」


真之介は、頷くしかなかった。


一方で、走り去った亜梨子は、誰もいない校舎裏で涙を拭いていた。


(追いかけてもこない)


胸が苦しい。


しばらく俯いていたが


「さ、帰ろう」


鞄を持って帰り道を急ぐ。母に問いただす為にも。



家へ帰ると、真っ直ぐ母のいる居間へと急いだ。


居間のドアが開き、亜梨子が息を切らしていたので、紗緒里は悟ったようだ。


「昨日、お父さんから話は聞いているわ」


紗緒里は、そういった。


「私に、3人の中から誰かを選べって事?」


亜梨子の問いに、母は、フッと笑い


「なんで?」


逆に亜梨子に問い返した。


「え?でも、お父さんの…」


「あぁ、資金援助ね。そんなの亜梨子には関係ない事よ」


「でも…」


「確かに、当日に亜梨子に返事をさせる、と答えたわよ。でも、それは亜梨子が3人の中から誰かを選べって事じゃないわ」


紗緒里は、ハッキリとした口調で言う。


「でも、そしたら、お父さんが…」


「お父さんの出世と娘の恋愛、私だったら娘の恋愛を取るわよ。あなたは自由な恋愛をしていいのよ」


「お母さん」


「さて、この話は終わり。亜梨子、ケーキを焼いてちょうだい。今日は弥生が研究所にカンヅメだから、差し入れに持っていきましょう」


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