表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛下手のアリスちゃん  作者: 如月まりあ
4/13

恋愛下手のアリスちゃん4

「何言っているのよ。学校で一番の美少女が」


芽依は、亜梨子の背中を叩く


「いくら顔が可愛くても、きっと…性格がいい子がいいのよ。私みたいな素直じゃない可愛くない女の子は、きっと嫌なんじゃないかな」


寂しそうに微笑みを浮かべる。


(いや…亜梨子って十分可愛いと思う)


素の亜梨子を知っている芽依は、思った。


クールで強気、大人っぽい、沈着冷静、男勝りでサバサバしている。これは、周囲から求められて演じている。


しかし、情にもろくて、気も弱い、負けず嫌いで意地っ張り、泣き虫…これが本当の亜梨子なのだ。


いつの頃からだろうか…こんなキャラを演じるようになったのは。


見た目が可愛いから、意地っ張りな性格だから、いろんなキャラを周りに期待されて、そんなキャラを演じてきた。


昔は、たくさんいた友達もそういうキャラになってからは、距離を置かれるようになって、昔と変わらないでいてくれるのは、真之介の芽依の二人だけ。


芽依は、亜梨子の頭を撫でてから


「亜梨子は、十分に可愛いって」


「茶化さないでよ」


亜梨子は、プイっと横を向く。


「ほんと、こんな可愛い子を放っておくなんて、もったいないわよね」


という芽依に対して


「…仕方ないよ。真面目な女の子がいいんだから。…崎山さんみたいに」


亜梨子は、声を低めて言う。


正直、真之介にいつも寄り添うようにしている美雪が羨ましい。


「だったら、どうして生徒会役員選挙に出なかったの?亜梨子だったら、当確間違いなかっただろうに」


「だって…」


亜梨子は、首を振る。


当然、それも考えていた。


周囲からも推されていた。


だが、あくまで【生徒会長】として…だ。


「津山が立候補するから遠慮した?ま、仮に副会長として立候補していたら、会長の津山なんぞ霞んでいただろうけどね」


「芽依…そんなハッキリと」


芽依の発言は、たまに驚かせられる。


「もう、そういう奥手なところが、亜梨子の長所でもあり短所でもあるんだけど」


「うぅ…」


「…それにしても文化祭かぁ、面倒くさいなぁ」


芽依は、鞄を持ったまま後ろで手を組む。


「どうしたの?」


芽依の発言に亜梨子が問う。


「ほら、さっき出た文化祭のイベント…私が今年、司会をする事になってね」


うんざりしたように芽依は言う。


「へえ、そうなんだ」


相槌を打つ亜梨子に


「なんで、また兄貴の去年の司会がウケタからって、妹の私がやらないとならないわけ?」


芽依は、不機嫌度100%でボヤく。


去年、芽依の兄である保が司会を務めた【告白大会】は、大盛況に終わった。


司会である保の絶妙な間の取り方や進行が、かなりウケたらしい。


そういう理由から、今年は妹である芽依に生徒から要望があったのだ。


「まぁまぁ、落ち着いて」


亜梨子が苦笑を浮かべてとりなすように言うと


「津山の奴、『生徒からのリクエストだから』って真顔で言うのよ。司会進行は生徒会長の役目だって言うのに」


芽依は、かなりご立腹だった。


「そういや、そうだったね。毎年、生徒会長の最後の大仕事だっていうのに」


「そうよ!『自分がやるよりか、浅木さんがやった方が盛り上がるだろうし』とか、何弱気になっている訳?」


かなりのご立腹のようだ。


「自分がやるより、芽依がやった方が生徒の為になるって考えたんじゃないかな。真ちゃん、いつも人の事ばかりだから」


寂しげに俯く。


その様子を見た芽依は、思い出したように


「まだ、あの事を気にしているの?終わった事じゃない?」


「…だけど」


亜梨子は、ため息をつく。


それは3年前、亜梨子達が中学3年生の時に話が飛ぶ。


放課後、真之介に呼ばれて、学校の校舎裏に行くと…


真之介とクラスメイトが待っていた。


亜梨子は、状況が読めずにいると


『亜梨子、こいつが亜梨子の事好きなんだって』


真之介の口から出た言葉だった。


どうやら、クラスメイトの一人が亜梨子の幼馴染である真之介に告白の手助けを頼んだのだ。


それは、亜梨子にとってショックであった。


真之介からの呼び出しに、心が躍っていた。


胸が高鳴り、呼吸が出来ないくらいに。


しかし…待っていたのは、亜梨子の望んでいない状況だった。


だが、亜梨子は毅然と


『ごめんなさい。お付き合いできません』


冷めたように言い、頭を下げる。


実際、どんな風に言ったのかは覚えてない。


亜梨子自身、頭が真っ白だったから。


ただ、淋しそうなクラスメイトと、バツの悪そうな真之介が見えただけだ。


亜梨子は、クルリと背を向けて二人の前から消えた。


帰り道、亜梨子は黙ったまま歩いていた。


涙が出るのを堪えて、ポーカーフェイスを守って。


しかし、家に帰り部屋に入ると涙が止まらなかった。


『ばかばかばかばか!真之介のバカ!』


布団の中でたくさん泣いた。


それ以来、真之介との距離は広がった…気がする。




「あれは、亜梨子の気持ちを考えると無神経だったかもね。でも、津山は亜梨子の気持ち知らないんだよね?」


芽依の問いかけに、コクンと頷く亜梨子。


「頼まれたら断れないって言うのが津山だからね…仕方ないよ。亜梨子は気にしすぎ」


励ますように芽依が言うのだが


「だって…、そういう事をするって事は、私の事好きじゃないからでしょ?フラレたんだよね、私」


亜梨子は、自虐的に言う。


「何、言っているのよ。何人もの男共を失恋の底に叩き落としたのに」


芽依は、冷ややかだ。


「それは…」


「全く、余計な男は寄ってきて肝心な男は寄ってこないって…」


ため息混じり芽依は言う。


亜梨子は、


「あーあ、真ちゃんに釣り合う女になりたいな」


呟くように言う。


「何贅沢を言っているの?そんだけの容姿を持ちながら」


「だって…」


芽依は、亜梨子の前に回りこみ両肩に手を置いてから


「亜梨子は十分、津山に釣り合う女だよ」


にっこり笑う。


「芽依」


「もう、可愛い奴だ!」


芽依は、亜梨子の頭を撫でる。


「バカにしてる?」


亜梨子が聞くと


「さぁってね?」


芽依は惚けた。


「芽依ったら」


亜梨子は、頬を膨らませた。


それを遠目から見ていたのは、数人の女生徒。


「何よ。私達の亜梨子様に」


嫉妬メラメラで芽依を見ているのは、【亜梨子ファンクラブ】会員№0001である間永和泉である。


「だいたい、小学校からの親友だからって私達の亜梨子様に馴れ馴れしいわ」


「去年、フラレた前の生徒会長の妹のくせして!」


他の女生徒も、ヒステリックになっている。


そう…芽依の兄・保は、去年の告白大会で大トリで亜梨子に告白して撃沈したのだ。


「そういえば、前の生徒会長、この前女子大生と仲良く歩いていましたよ」


「なんですってぇ、亜梨子様にフラレたからって、すぐに他の女に乗り換えるなんて!亜梨子様をバカにしているわ!」


彼女達の怒りは、ピークになろうとしていた。


和泉は、彼女達を制するように


「今年も、告白大会で、亜梨子様とお付き合いしたいなんて不届き者が多いだろうけど、私達の手で亜梨子様をお守りしなくてはね」


その言葉に、女生徒達は頷く。


彼女達は、【亜梨子ファンクラブ】の会員…その中でも亜梨子に心酔している集団であった





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ