恋愛下手のアリスちゃん13
文化祭は、キャンプファイヤーで終わる。
たくさんのゴミが校庭の真ん中で焼かれていく。
準備…当日…たくさんの思い出を残して…
そのキャンプファイヤーを、亜梨子と真之介は屋上から見ていた。
「え?告白?」
亜梨子は、驚いて真之介を見る。
「うん、あの時副会長…崎山さんに告白されていきなり抱きつかれてさ…最悪だったよ…亜梨子に見られて…他の生徒からも見られて…」
「そう…なんだ」
亜梨子は、真之介をチラリとみて
「それで…崎山さんは?」
小さな声で聞く。
「崎山がね、『お幸せに、彼女を離したらダメよ』だって。笑って言われたよ」
真之介は苦笑する。
「そう…おしかった?」
亜梨子は、ちょっとイジワルしてみる。
「ば、ばか!違うよ!」
「ふぅん…」
そう言って亜梨子は、そっぽを向く。
真之介は、ため息をついて
「実は、崎山のお父さん…大学病院と取引している大手薬剤会社の役員だったんだ。だから、崎山のお父さんからうちの両親に提案があったんだよ。娘との交際しなければ取引を打ち切るって」
「え?」
亜梨子は驚いて振り向く。
真之介は、空を仰いで
「でもさ、うちの両親『お前はお前の好きな人と好きになりなさい』って言ったんだ」
その言葉に、
「うちも同じような事を言われた」
そう言ってから、笑う。
そして、真之介の腕に自分の腕を絡める。
いきなりの行動に真之介は驚いたが
「ねぇ亜梨子…約束覚えてる?」
「…うん、忘れてないよ」
亜梨子は嬉しそうに笑いながら答えた。
「あの約束の為に、俺、頑張った。でも、亜梨子はどんどんキレイになっていくしさ、段々と俺じゃあ不釣り合いだって思うようになってきた。俺、全然地味だし」
亜梨子は、首を振って
「真ちゃん、ちゃんと約束守ってくれたよ。私を守ってくれた。あの時の真ちゃん、すごくかっこよかったよ」
亜梨子は、ぎゅっと真之介の手を握る。
「亜梨子…」
「はい」
「もう一度言うよ。好きだ。将来、結婚してください」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
そして、二人は寄り添い…
月に浮かびあがった影は重なった。