009_馬上にて鏡と銃撃。
まわりがながれるー
びゅー、びゅー!
大量の犬頭獣に出くわしたガンマンは、慌てて、馬を操作して、少女に寄せます。
「あらよっと」
「ひゃあ⁉︎」
左手で手綱を操作しつつ、右手で器用に少女の小柄な身体をすくい上げ、
手品のように馬上へと載せていきます。
ぐるぐると、少女の目が回っています。
「しっかりつかまっておきなよおじょーちゃん!」
はいよー、と栗毛の馬をひとなきさせて、綺麗に華麗にターンを決めて、尻に帆をかけ一目散に退散開始、という塩梅でございます。
犬頭獣、前傾姿勢になりまして、武器を片手に走り出します。
長めの手を器用に地面へとつけ、3足歩行で加速して、息をリズミカルに繰り返し、
馬に乗ったガンマンと少女を、追いかけていきます。
背中を曲げて、地面と平行に近くし、頭はグルンと首を伸ばして疾走方向へと突き出します、
まるで、四つ足の獣のようなスプリントで、加速していきます。
一方、元祖四つ足であり、人類の長きパートナーであり、これがなければ運送文化的的に、行動半径的に、いろいろ致命傷であったのではなかろうかなという、便利な動物であるところの、馬でございますが、これはこれとして、かなりの速度を出すことができるものでございます。
がしかし、道が少々悪く、下生えが多い山道でありましたので、今ひとつ距離を稼ぐことができません、むしろすぐにも追いつかれそうな距離感でございます。
「お嬢ちゃんちょっとこれ持っててくれないか?」
胸元に、しがみついている少女に手鏡を渡すガンマンです。
意外に冷静と言いますか、何が起こっているのか理解していないような、泰然自若な、太い神経の少女は、素直にそれを受け取って、あれやこれやと角度の注文をつけるガンマンの、言う通りに動かして固定します。
「ほらよっと!」
右手で手綱を握り、馬の行き先をコントロールしつつ、左手を腰に落とし、素早く”サンダラー”を抜き放ち撃ちを決めるガンマンです。
鏡越しに、揺れる馬上で、早抜き撃ちの、後ろ向きショット、難易度ましましな状況にもかかわらず、追っ手の犬頭獣に命中いたします。
しかも、百発百中ともいわんばかりに、連射したもの全てが、犬頭獣たちに命中していくわけでございます。
軽くコルトM1877を振ってシリンダーを出し、空薬莢を捨てて、手品のように手早く次弾を装填していきます。
「さーて!まくるぞー!ヒャッハー!」
「ひゃっはー♪」
意外に能天気な少女とガンマンであります。