006_硝煙香らせガンマン登場。
うひゃぁ
ぱんぱんどかん、ぐしゃー、ぐしゃ!
それは、小さめの大人くらいの背丈でした、二本の足で直立し、同じく二本の腕を備えています。
結構器用そうな指は五本、親指が他の四本指と向かい合うように付いており、道具を、この場合は、簡便な打撃武器、いわゆる棍棒を握りしめています。
全身は、布などをまとわず、獣のような様相です、しかし肌は見えず、黒茶色な毛皮に覆われています、人間の顔に当たる部分は、犬の顔になっています。
可愛らしさはなく、意外と白い歯をむき出しにして、怖そうに脅すように吠えているような対する獲物を威嚇するような表情をしています。もしかすると笑っているのかもしれません。
少女との距離は、やや短めの犬頭獣の足で、八歩ほど。
その獣の目は、少女をお肉であると、獲物であると、考えていることが透けて見えるくらいに、じっと見つめています。
犬頭獣の数は、見える範囲では、一匹です。その暴力的な雰囲気から見ても対峙する人がか弱い少女であることを見ても、その一匹で、陰惨な光景が演出されることを、思い浮かべることは容易ではあります。
恐怖を感じる、かどうかすら判断できず、じっと犬頭獣を見つめて、立ちすくむ少女です。
犬頭獣は、一つ唸ると、これは獲物を脅すのではなく、ただ行動するために、呼吸を整えたわけでありますが、素早く少女に駆け寄り、同時に太くて頑丈そうで重そうな、棍棒を、振り上げます。
人型生物に対して狩りの経験があることを示唆するような身のこなしです、”あの生き物”は、頭を殴ると狩れる、ということを知っている動きです。
ただ不意打ちにはならず、その必要はないと思ったのか、それだけの技術がなかったのか、偶然の遭遇であったのでそれだけの環境が整っていなかったのでしょう、であるならば、獲物が逃げないうちに素早く動いて、殴りつけるべきである、と、そこまで整然とした道筋ではなかったかもしれないでしょうが、そのような思考と同時に、獣の体が動いた、ようでございます。
ただ単に、狩猟本能が仕事をした、とも言えるでしょうが。
少女は、近寄ってくるそれを見ています。
逃げません、逃げれません、それほどの運動性能はないわけです。
と言うよりも、反応もできていないようです、基本的に”早さ”が足りていないのです。
客観的に見て、呆然と立ちすくむようにしている少女に向けて、迫り来る、犬頭獣の脅威です。
呼吸を止めて、あと数歩、踏み込んで殴り付けようと、動作をつなげている獣、
その瞬間、大きな破裂音が寒村のはずれに響き、
獣の犬頭が、爆ぜて吹き飛んだのでありました。
「ひゃっは、騎兵隊の到着だぜー!」
能天気な声が周囲に響き、栗毛の馬にまたがった、ガンマンが、
満を持して登場、したわけでございます。