002_廃村の様子、一夜にして消失。
おとがまったくきこえてこない、みみがいたい、かんじ、へん?
ペタペタ、これは、しろい、こなのやま、ざわざわ?ざらざら?
つちがまざるのはなにかいや?べつにそうでもない?まぜるほどでもない?
ふく、ちょっとごわごわ、いろいろかたい?うにょんとのびない。
うごく、あるく、すすむ、おなじようなものがいない、おとがこちらにむかってこない、
おおきいおなじもない、ちいさいおなじもない、おなじくらいのおなじもない、
おいしいをくれるおなじもない、あかるいもない、
おおきくおとをだすけのものもいない、なんだかながいにょろにょろしたものが、
だらんとおちている。
すすむあるくうごく、みずのところにもない、よこにおおきなおなじがない、
みずはある、のむ、いつもの、みず、つめたい、ごくごく。
あるくすすむうごく、つかれるやすむ、すわる、みる、あかるいがたかくなる、
あたたかい、ぽかぽか、うとうと、ぐー、たべたい。
においもない、ぐるぐる、まわる、まわる、ぴたり、とまる、
おおきなおうちへ、そこへいく、あるくすすむうごく、つちのうえ、かたい、
これは、みち?うごくすすむあるく、たすかる。
かたい、つるつる、ざらざら、おもい、うごく、ひらく?
おおきい、おもい、おとがない、ぎー、ぎしぎし、おとそれだけ。
くるりん?きらきら?ひかっている石?
あれ?なに?
一夜にして住民が全て、溶け去るようにして消え去った寒村です。
夜に眠りについたのちに、朝までにその彼ら彼女らの肉体が煙のように消えている、本人たちはその理由も知らず、また自身の消失も気づきませんでした。それはある意味幸せな最後だったのかもしれません。少なくとも苦しみはありませんでした。
家畜、番犬を含めて、村の構成要素であった生き物は、ただ一つ、村人に”残念ね”と呼ばれていた少女以外が消え去っています。
その原因は、村をおとづれた旅人、客人と言ってよいものでした。
神の言葉を伝えるために各地を旅する巡回宗教士、少なくとも村人にはそう説明ておりました。
彼は、その責任者が去り、神職が不在となっていた、村の集会所と化している宗教施設、教会か社と呼ばれるそれに、宿を求めて、のちに、積極的な活動、ありがたい説法を村人に説き、また、世俗の話をし、簡便ではあるものの、病や怪我の治療も行っておりました。
村人はたいそう喜びました。
何しろ近隣の村に行くのですら旅の途中で野営が一つ必要になるお仕事、税を納める領主の官吏が居を構える、小さめの町へ行くにあたっては十数日の旅程を見込まれる田舎の村であったわけでございまして、小さくとも奇跡を行うことのできる宗教士はそれはそれは貴重な存在であったからでございます。
そうして、彼に信頼を寄せ、ある程度気を許したさなか、
十分な準備が整ったと、その”客人”は、
一晩にして村人を”喰べて”しまっとさ、
”残念ね”の少女以外を……。