プロローグ
「はぁーはぁーはぁー、、、」
暗い森の中で逃げるように走る。
奥の方で聞いたことない唸り声が響き、何かが迫ってきている。
「っく、、何で、、はぁー、、いきなりこんな事になったんだ」
逃げることだけを考え、ただ真っ直ぐに走り抜けていくが、すぐそこまで迫ってきているのが分かる。そして、背中への強い衝撃で肺の空気がなくなる。
「かはっ」
息を吸うことができず、もがき苦しみ涙が溢れる。
下に目を向けると、胸から鋭い爪のようなものが突き出している。
元の世界では考えられないほど鋭く大きく、そして禍々しい爪。
ー痛い熱い痛い熱い痛い痛い痛い痛い痛いー
声にすることができず、かわりに血が吹き出してくる。
心臓をひと突きだったのか血が止まらず、森の一面が真っ赤な血に染まる。
ー嫌だ嫌だ、死にたくない、、、嫌だ、、、ー
もう痛みなど感じないが、目の前の『死』には恐らく逆らえない。
それでも、誰か助けて欲しい。
この暗い森の中ではありえないかもしれない、それでも、誰か、、、誰か、、、、
「小僧、こんな所で何をしている」
「ちょっと、そんなことを言う前に早くアレを処理して!! キミ!すぐに治してあげるからね。」
ーだ、誰だ?ー
「こんなのに殺られているようでは、回復させてもすぐに同じ運命だぞ」
彼の手には、息絶えた獣があった。
さっきまで自分の胸を貫いていたであろう爪は、へし折られ無惨な姿になっている。
「あ、あり、ありがとうござ、、、、」
そこで気絶してしまい、記憶が途絶える。
「血を流し過ぎたんだね。」
「おい、それをどうするつもりだ?」
「まだ分からないから、ボスに報告しなきゃ」
「召喚の儀で弾かれた者だから使えるかと思ったら、がっかりだな」
「どうだろうね〜これから調べてみないと」
これが異世界召喚をされた、 結城蒼空にとっての1日目だった。