表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪食の旅  作者: カニ猫
0章 邪神目醒める
3/3

星を描く夢(俺はまだ出ないのか)

メインディッシュ(主人公)の邪神は次回登場です!

 生い茂る草木をかき分けた先に、水の流れる音が響き渡る。兵士三人組はなんとか川を見つけられたらしい。が、本隊から大分離れてしまっている。


「じゃ、僕はもう少し向こうでしてきます」


「ん、僕らはどうしようか」


「俺ぁ星数えてるわ、今43億2000まで数え終わってよぉ」


「え?肉眼だよな?」


 などとやりとりしつつ、各々行動を始めた。ツッコミ担当のエレンスは、短い黒髪を川の水で洗いながらダンと星を見る。


「…大だなこりゃ」


「昔から思ってたけど、鼻とか目とか良すぎない?」


「ん、体質だな」


 どうやらダンの五感は人一倍鋭いようで、エレンスの鼻にはちっとも臭いなど流れては来ない。


「なぁ、エレンスよぉ」


「何?」


「あの星って、何で出来てんだろーな」


 乱暴な口ぶりのダンも、手の届かない星に思いを馳せ、憧れを灯すその目はまさに年相応、15才の子供であった。


「さぁ、でも確か空ってさ、この真世界を覆う蓋なんだよね?で、星は蓋にくっついてるものだって」


「あぁ、そうだぜぃ、でもなぁ?星はあの蓋にくっつかずに浮いてんだってよぉ、おかしい話だぜ」


「そんなの一部の変人が言ってるだけだろ?それに、空を見れる魔法具なんてないし、なんなら空の秘密はあの魔法の世界(マヴォルデ)ですら解き明かされてないってのに」


「でもロマンあるじゃねぇか、あの光ってるやつに俺らみてぇなのが居てよぉ…こっちのことも見てるって考えたらよぉ!!俺ぁ今度の契約更改で軍辞めて、空の研究して、いつかあの向こうの奴らと話してみるんだ!!」


「空は蓋なんだから出れないじゃんか」


「まぁ分ぁってるよ。どーせ蓋しか無いんだろうから、せめてそこまで辿り着いたら、俺ぁお前らも呼んで、俺達だけの星をでっかく描くつもりだぜ!」


「何だそれ…まぁ、叶ったら面白そうだな!だけど、本当に軍辞める気なのか?」


 星空を見ながら、今後の将来を話す。そして話が白熱してきた頃、ルビオがスッキリした様子で戻ってきた。


「お待たせしました。中々腹から出てこず、苦戦してしい…後立派な洞窟を見つけてしまってつい探索を」


 エレンス達が満足するまで話せたのは、どうやらそれが原因のようだ。


「ほへぇ、お宝あったか?」


「いや、特に価値があるようには見えなかったので、まぁ、無駄足でしたね。てな訳でお腹空きましたまたご飯作って下さい、エレンス」


「なんでじゃ!絶対嫌だぞ!ったく…とりあえず、そろそろ戻ろうよ、隊長達がテントの見回りに来る」


「だな」


 松明を手に取り、また森へと戻ってゆく。本隊の場所はしっかり記録していたようだ。彼らは淀みなく夜の闇を進んでいる。


「あんま長い時間離れてっと問題になっちまうしなぁ」


「まさかこの脳筋がそういうのしっかり考えてるとは思いませんでしたよ」


「んだとこのスケルトンがぁ!!」


 スケルトンとは、死者の悪意や執念が骸骨に宿った魔物であり、その悪意の強さによって持つ武器や骨の種族が変わる魔物だ。人間の間では痩せている者への揶揄として使うようだ。


「なんだとこの野郎殺りますよ?」


「上等だぜゴラァ!」


「喧嘩すんな雑魚ども」


「「ブーメランだぞ雑魚!」」


「お前ら…」


 暗闇の恐怖を紛らわすように喚きながら、着々と本隊へと戻る。


「…!んあ?」


 ふと、ダンが鼻をひくつかせる。何度か嗅いだ後は、言葉を止めて耳に意識を集める。そして、足を止めた。


「? ダンどうした?ま、まさか本当にやりあうつもりかよ!?」


「先程はあんな生意気叩きましたが僕が貴方に勝てるわけないので見逃してくれません?」


「おい、口だけか魔術師」


 …しかし、ダンからは返答が無い。


「…ダン?」


「…やべぇ」


「え?」


 ダンのその顔は、先ほどまでと違って強張っている。酷く戦慄し、冷や汗が額から垂れた。


「本隊が襲撃されてやがる!!!」


「「!?」」


 瞬間、三人は走り出した。呼吸を整え、エレンスは腰の剣を抜いた。ダンは何やら、腕輪に謎の力を流し、刃渡り170cm程の、彼の背丈ほどもある大剣へと変化させた。

 ルビオはローブの内側を弄り、一度舌打ちしてから袖に隠していた小さな杖を取り出した。


望遠兼(ブレンド・)索敵の呪文(サーチテレフォート)!』


 ルビオの目が白く光ると同時、彼は眉間に皺を寄せた。


「おい!ルビオ!今向こうはどぉなってんだ!!」


 ダンの鼻や耳は本隊の危機をいち早く察知した。故に、その危機がどんなレベルなのかをルビオに訴える。


「…コボルトとリトルオークの群れ、それとブルーオーガが3匹、数は合わせて30未満です」


「隊員は!?他の兵士はどうなってるの!?」


「…残り65」


 この隊は総数200人の中隊であり、隊は50%以上死人が出た。即ちそれは、定義上の全滅及び壊滅状態に陥ったという事に他ならない。


「!! 隊長達の近くに嗅いだことねぇ臭いが一つあんぜ!!」


「な!?もうそこまで攻められて…!?」


「急ぐぞ!」


 到着まで残り、200m。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ