ノーマルモードがデスモード7
今晩泊まる部屋は4階の和室。靴を脱いで上がり、襖を開ける。畳の和室の奥には窓から山々の紅葉が見える。
「ね、いい部屋でしょ。」
「はい。」
部屋の奥まで入って行くと、木のドアがついている。斗真君がドアを開けた。
「な、菜々子さん!」
そこは例のアレかな。私も斗真君の後ろからドアの内側を覗いた。
「驚いた?実は露天風呂付の部屋にしたんだ!」
いろんな旅館を調べている中で、露天風呂付きのプランを見つけてここに決めた。大浴場ももちろんいいけど、せっかくだから一人で気兼ねなく入れるのもいいかなって。
斗真君の顔を見ると、戸惑ったような表情をしていた。
「あれ、あんまり嬉しくなかった?」
「い、いえ!その…僕達にはまだ早いかなって…」
早い…?もしかして値段のことかな。確かに今回2人で決めていた予算をオーバーしていたけど、その分くらいは社会人である私が出したい。
「大丈夫だよ。ギリギリ予算に収まったんだ。」
「予算のことではなくて…その…」
お金のことじゃないって、じゃあ何なんだろう。よくわかんないけど、
「どっちが先に入る?」
夕食の時間が一時間後。それを考えると今は入れるのはどっちか一人かな。
「ええ!?え、えっと…菜々子さんの好きな方で…」
「そっか。じゃあ私はご飯の後にしようかな。お土産屋さんとか見てるから、ごゆっくりー。」
「…え?」
私は部屋を後にした。
夕食の少し前に部屋へ戻ると、紺の浴衣に着替えた斗真君がいた。お風呂後の少し濡れた髪とか、浴衣から覗く鎖骨とか…
「眼福…!」
「お帰りなさい。」
そう言う斗真君の声はなんだか少し怒っているみたいだった。
「斗真君、なんか怒ってる…?」
私なんかやらかしたかな…?いや待てよ。朝の挙動不審といい、靴擦れといい、可愛い浴衣を着せようとした件といい、思い当たる節しかないな。
「すいません。怒っているというか…自分の煩悩を反省しているといいますか…」
うーん、でもまあ、怒ってないならいっか。
「じゃあ夕飯食べに行こう。」
「そうですね。」
夕食は地元和牛の陶板焼きをメインとした会席料理だった。斗真君が「菜々子さん、これ美味しいです!」って笑顔で報告してくれるのがたまらなく可愛くて、正直食事どころの騒ぎではなかった。
「美味しかったですね!」
部屋に戻ってきて腰を下ろした斗真君が言った。
「そうだね。」
それよりも斗真君の反応が『ごちそうさまです』って感じだけど。私は自分のボストンバッグを開けた。
「あ、菜々子さん、お風呂入ります!?」
「うん、入ろうかな。」
「す、すぐに出て行きますね!」
そう言って斗真君は部屋を飛び出していった。そんなに急いで出て行くことないのにな。




