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推しとなり  作者: 亜瑠真白


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23/32

ノーマルモードがデスモード 2

 目の前のテレビでは関東の小旅行特集が垂れ流されている。ふとこの前の会話を思い出した。斗真君と遠出…お泊り…

「旅行…」

「旅行がどうかしましたか?」

 隣に座っていた斗真君が私の方を向いた。ハッと我に返る。

「もしかして口に出てた!?」

「はい。旅行、行きたいんですか?」

 ここで行きたいって言ったら、誘いを催促してるみたいにならない!?そうならないためにも自然な感じで話を流そう。

「あー、この前ね!会社の先輩と話してて、これから仕事は落ち着いてくるし旅行でも行ってきたらって言われたんだよねー。それだけ!」

「そうだったんですね。」

 そりゃね、斗真君と長く一緒に過ごせるなんて楽しいに決まってますよ。でも今までは「斗真君にアイフレを知ってもらう(あわよくば好きになってもらう)」っていう目的があったから突っ走ってこれた訳で、恋人同士で普通の旅行なんて私にはハードルが高い…!私にもっと女子力《戦闘力》があれば…っ!

「もし菜々子さんが良ければ僕と一緒に旅行、行きませんか?」

「喜んで!」

 …ああ、どうして私は斗真君からの誘いにこんなにも弱いんだろう。


 ボストンバッグの中身は3回確認した。ハンドバッグの中には財布、ハンカチ、ティッシュ…ってスマホ忘れてた!

 急いでスマホをバッグに突っ込むと、部屋のチャイムが鳴った。荷物を持って玄関のドアを開ける。

「おはようございます。準備は大丈夫ですか?」

「もちろん!」

 いざ行こう。一泊二日、オタクという牙をもがれた私の未開の地《恋人同士で普通の旅行》へ。


 アパートを出ると斗真君が手を差し出した。

「荷物持ちますよ。」

「いやいやいや!腕折れちゃうよ!」

 可憐な斗真君に傷をつけるわけにはいかない。

「僕はそんなに非力じゃないです。」

 そう言って斗真君は私からボストンバッグを取り上げた。

「ああっ!」

「このくらいなら余裕です。それにしても、荷物多いんですね。僕はこれだけです。」

 斗真君は自分のリュックに視線を向けた。

「それは、まあ…いろいろな事態を想定してというか…」

 着替え、化粧ポーチなんかはもちろん、折りたたみ傘、着替え(2着目)、予備のスニーカーまで入っている。

「じゃあ、もしもの時は頼りにしてますね。」

 そう言って斗真君が微笑むから、

「ぐぅっ!」

「どうしたんですか、菜々子さん!」

「か、可愛すぎて…!」

「…菜々子さんらしいです。」

 斗真君は少し笑って言った。

 あーダメダメ!私達は恋人同士になったんだから、オタク的思考は禁止して、恋人らしい普通のデートを…普通ってどうすればいいの?

 え?え!?デートってどんな感じだったっけ!?前の彼氏は高校3年の時だけど、お互い受験勉強忙しくてろくにデートもしないまま自然消滅して、大学は女友達と遊ぶのとオタ活が楽しすぎて、付き合うとかそんなんなかったもんなぁ。ちゃんとデートした記憶あるのは中学3年生の…ってヤバくない!?

「菜々子さん?」

「は、はい!」

「このバスに乗りますよ。」

 気づけばバス停の前についていた。まもなくバスが来て、私達は乗り込んだ。

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