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推しとなり  作者: 亜瑠真白


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20/32

モブなんかじゃない(後編)

「ところで、今はどこに向かってるの?」

「トレジャーエリアです。そこでもうすぐパレードが始まるんですよ。」

「へぇー」

 確かに、歩いている道の先には人が集まっているみたいだ。

「パレードの時間知ってるなんて、結構詳しいんだね。ドリームランドはよく来るの?」

「いえ、来たのは今日が初めてです。本やネットでたくさん予習してきました。その…楽しみだったので。」

 そう言って少し恥ずかしそうに微笑む斗真君。可愛い…!

 楽しみ、といえば…

「そうだ!斗真君聞いてよ!この前一緒にアイフレのイベントシナリオ見たでしょ。ペリドット結成秘話の。そのシリーズの第2弾が決定したの!次はクローバーパレットだって!」

「へぇ、そうなんですか。」

「ペリドットは大興奮だったし、次のクローバーパレットもすっごく期待できるよね!今から楽しみ過ぎて…」

「危ない!」

 斗真君は突然私の腰をぐっと引き寄せた。顔が近づく。

「あっ、すいません!後ろから走ってきた人とぶつかりそうだったので、つい。痛くなかったですか?」

 斗真君はぱっと手を離した。

「う、うん。大丈夫。ありがとう。」

 触れられたところが熱い。斗真君って、こんなに力があったんだ。なんか、ちょっとびっくり。

「行きましょう。」

 パレードが見られる沿道につくと、ちょうどよくパレードが始まった。

『Let's play in the water!!』

 その掛け声とともに、キャストの人たちが放水を始めた。細かい水しぶきが空に舞う。

 なるほど、そういうパレードね。キャストの人だけじゃなくて、お客さんも水鉄砲でしぶきを飛ばしている。今日はまだ残暑が続いているし丁度いいかも。

 その時、近くにいた女の子の水鉄砲から放たれた水が斗真君の顔を直撃した。

「斗真君!?」

 斗真君は濡れた髪をかき上げた。

 心臓がドクンと跳ねる。

「やったなぁ?お兄さんも仕返ししちゃうぞ。」

 そう言って女の子に手で銃のポーズを作った。

「バン!」

「きゃー!」 

 女の子は楽しそうに走って行った。

「あはは。」

 そして斗真君は私の方を振り向いた。

「楽しいですね、菜々子さん。」

 そう言って笑う君は、もうどうしようもなくカッコよくて魅力的な男の子だった。


 一時間後、私達は再び合流した。

「菜々子さん、また今度!」

「あっ!うん…」

 斗真君は亮介君と一緒に歩いて行った。

 さっきからずっと心臓がうるさい。

「…桐生。」

 うつむき加減の及川先輩が口を開いた。

「はい。」

「今日は、もう帰りましょう。」

 そう言う先輩の顔は心なしか赤くなっているように見えた。

「そう、ですね。」 

 もしかしたら、及川先輩達の方も何かあったのかもしれない。

 帰り道、お互いに何があったのかは聞かなかった。だって今は自分のことだけで精一杯だったから。

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