表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々のイデア  作者: 花都
クーデター編
36/70

毒を食むⅠ (後編)

 ヒムが席を立ったのと同じ頃。シャルロット邸地下に広がる、秘密部隊『五本槍』の領域では、一人残った『白刃』が半ば頭を抱えていた。

 

 ・・・ったく最悪じゃねぇか。何でこんな予測ばっか当たるんだよ。

 

「───アイツら仕事してっかな?」

 鉄籠手の紐を締めながら、胸騒ぎを口に出してみる。

 時間的にまず間に合ってねぇ。逆算したらクーデター起きた時、『五本槍』(俺ら)まだ『闇夜』とモメてたし。

 現場のトラス邸までは、アイツらが急いでも一日半ぐらいは掛かるし、屋敷周辺の街中とかは逃げるヤツと攻め込むヤツがごった返しててそこでも時間を食う。二、三日中に着きゃ上出来ってとこか。

 

 三人は完全に後手に回っちまうが、会議に付いてった護衛達だって強い。隊長(リーダー)が紛れても違和感ねぇぐらい強い。フツーなら別に心配ねぇ・・・けども。

 山積みの一番デカい問題は、反乱軍は殺し屋集団っつーコトだ。

 攻めるより守る方が断然ムズい。守る方は相手がどっから来るか分かんねぇから、広がった防衛線を全部警戒してなきゃなんねぇ。いつ来るか分かんねぇ敵を撃退しきるまで、四六時中油断出来ねぇからストレスやべぇ。

 逆に攻めるヤツは一番弱ぇ一点に集中して、そこだけ警戒してればいい。

 難易度が全然違う。

 

 奥方様を狙って来る敵は殺し屋。言わば、攻めの判断で飯食ってるプロ。レベル的に『闇夜』が数十人いるよーなモンだろう。

 さすがに、護衛官十七人ではかなりキツい。てかアイツらいても全然キツい。あんまキツすぎて、ギャラリーなのに俺がキレそう。

 

 プラスで気になんのは、単に後手後手でやらなきゃなんねぇコト。コレを防ごうと走ってった隊長を、結局二人も追っかけて行くハメになった。そりゃもちろん、人数多い方がいいに決まってるし。

 

 で、何で俺は置いてけぼり喰ってるかっつーと、この前の傷が治り切ってねぇから。二人に見つからねぇように抜け出そーとしたら、エリィとチアラにまで読まれてて捕まり、凶暴なお姐さんに縛り上げられて詰んだ。

 信用ねぇにも程があんだろ。

 

 こーゆー時に備えて、仕込み武器入れててマジ助かった。

 

「はぁー・・・」

 泣きそうなチアラの顔が浮かんで、ガラにもなくため息。

 言いつけ破って泣かせんの、何回めだろ。

 

 や、でも。

 

「安静っつったってな・・・」

 取りこぼしぐれぇ拾わねぇと。めちゃくちゃ気ぃ使われてるおかげで、マジでそれぐらいしか仕事ねぇし。奥方様の弓手、軍を率いる将軍サマは、なんてったって偉大なるエリィ(バケモン)の親父さんだしな。強さと人望の化身だからな。

 もちろん会ったことなんざ一回もねぇが、話によるとやっこさん、相当ガサツらしいからな。そんで嫁さんに愛想尽かされて、ここ数年は後継ぎと二人暮らしらしいからな。あと力加減ヘタクソすぎてありとあらゆるモンを握りつぶすらしいからな。

 

 ・・・前言撤回。仕事多いわ。チアラごめん。

 

 『五柱』最有力幹部腹心の将軍かつ、生きながらに伝説化した正規軍最強の男は、そんなカンジじゃねぇと務まんねぇらしい。

 てかソレどんな仕事だよ。

 

「あー・・・」

 またため息。

 治ってねぇのは、リネラ頭領に刺された腹の傷。すっげぇ運良かったから助かっただけで、内臓掠ってるし腹貫通してるし、すでに血足りてなかったしで死んでてもおかしくなかった。

 実際俺が運び込まれた時、助からねぇと思ったチアラはエリィに縋って泣きじゃくったらしい。

 

 

 リネラの時と違って関係ねぇヤツらも狙われてるし、俺は秘密の私設部隊だから正規軍とコンタクト取れねぇ。どんなヤツが潜んでるか分かんねぇから、面割らねぇに越したコトはない。

 

 けど何が何でも、侍女(チアラ)たちだけは絶対無事で逃がす。

 

 ピュアな笑い方するチアラが可愛い。どんだけ可能性低くても、折れずに助けてくれるチアラが眩しい。

 あんな子が、俺らみたくスレちまうトコなんざ考えたくもねぇ。

 

 だから、知らねぇトコで全部終わらせちまうのが一番いい。

 

 

 異名がついた頃に下賜された槍を引っ掴んで、通路に出る。

 真っ正面から大軍とやり合えるほど、俺も元気じゃねぇしな。

 

 一度目を閉じ、一つ呼吸する。

 

 目を開いた槍使いは、澄んだ水面のごとき穏やかな表情をして、地獄の入り口へと早足に昇っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ