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神々のイデア  作者: 花都
クーデター編
34/70

第二十八章 毒を食むⅠ (前編)

 ルイの血を拭いて部屋を出たヴァキアは、唐突な人の気配に振り返った。

「・・・聞きましたか?」

 視線の先で、柔らかな金髪の女が寂しげに笑う。

「いいえ?何のことかしら」

「・・・・・・」

「移動の準備が出来たから、そう言いにに来ただけよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「ええ」

 ラベンダー色のパンプスが踵を返す。

「───秘密会議の盗み聞きなんて、しないわ。するわけないじゃない」

 普段通りに笑うビオラの頬に、細い筋が這う。

 

 

 澄んだ水晶玉に亀裂が走った。

 


    ***

 

 所変わってクーデター現場、トラスの屋敷。

 その裏門。

 

 泣き叫び、或いは狼狽え、また血を流しながら、我先にと押し合って吐き出される人々。巻き込まれ逃げ惑う者たちはほとんどが侍女で、中には側仕えの子どもまでいる。

 

 それを見つめる皆の表情は険しい。

 

「・・・モンドとライダンは正面突破。俺は左。リアンは首領に付いて右から回り込め。怪我人はそっちに送る。全員、目的はコイツらを無事逃す事。元気が有り余ってる馬鹿共を間引いとけ」

 建物を睨むイムルが指示を出す。

「了解」

「分かった」

 首領に視線を移すと、上司は微かに頷いた。

「絶対に無茶をするな。人死を出し、戦力を減らす事は許さん。以上だ。作戦開始!」

 

 ぱっと構成員が散る。側で見ている者があれば消えたように見えたろう。

 

 

 直後。

 イムルは駆け、駆けながら状況を予測する。

 全くいない見張り、散らかされた武具。絶え間ない女の悲鳴とくぐもった泣き声。

 室内の状態は考えるまでもない、この分では骨のある奴もいないだろう。

 余計憂鬱だ。

 

 ───完全に裏路地じゃねえか。お高く止まって気取ってるくせに、貴族ってな連中もつくづく雑魚だ。

 

 縁側に飛び乗りつつ、空中で片鎌槍を繰り出す。

 鈍色の切先が、侍女を押さえ付ける雑兵のこめかみを貫いた。

 

 悲鳴も聞かずに顔を上げるも、今のが一番マシだったのだと気付くのみ。

 

「ったく、お留守番の女共が見たら泣くな」

 呆れて呟く。

 と、脚元で泣き噦る侍女に目を止めた。

「おい」

 恐怖のあまり放心状態の娘に掴み掛かる。

「てめえら誰付きだ」

「ぁ・・・や・・・うあぁぁあぁ・・・・・・!」

 手首を掴まれ暴れる侍女。腰が抜けたか、力が入らず何の抵抗にもなっていない。

「答えろっつってんだろ。・・・チッ、俺こう言うの向いてねえ。侍女共の衣装まで覚えとけってか?」

 女の右手首には赤紫色の痣が浮き上がって来たが、イムルは恐らく見てもいない。

「首領か阿呆共探さねえと。聞き込み一つ出来やしねえ」

 

 改めて見渡すも、目に映るはトラウマ級の恐怖と下らない快楽。

 

 低い士気を上げる為、兵を仕向けた者───転がる腕章から、ダリアンの息子セシル───はこれを許したのだろう。イムルに言わせれば、皆変わらぬ『堕ち切ったクソ共』。

 

 深々と溜息を吐く。

 

 僅かの楽しみも気力もない。

 武器も鎧も放った馬鹿共が、己の相手になるとは思えない。

 

「クソつまんねえ、今日の仕事は蹂躙ってか」

 

 ───ま、久しぶりっちゃあ久しぶりだな。

 

 槍が妖しく揺れる。

 

 慌てて武具を手探る雑魚など、その眼中にはない。

 

 

 そして、三分後。

 

 満ちる怒号と啜り泣きは、一面の猩々緋と金切り声に変わっていた。

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